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ポン太郎物語  作者: 玉城まりも
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18 ポン太郎と常闇の青空市場 その① 茶筒缶

今日は『キララの泉公園』で常闇(とこやみ)の青空市場が開催されている。


常闇の青空市場というのは素人(アマチュア)から玄人(プロ)まで幅広くお店を出すことができるお買い物祭りのことである。


お店の出し方は人それぞれで、レジャーシートを広げて商品を並べたり、テントを張ったり、小屋を出したりと、様々である。


そして売っている物も様々でティッシュペーパー一枚から大砲まで、室町時代の古文書から昔のチラシ、魔導書まで、ヒマワリの種から唐揚げまで沢山のものがある。


当然、ここに来ている人も様々で・・・・・・・色んな人が来ていて説明するのが面倒臭いからもういいや。


そんな訳で、ぼくはお母さんからお小遣いをもらって太とミミと一緒に常闇の青空市場に来ている。


「今年も色んなものがあるわね~どうしよう、ママからあまり使い過ぎないでねって言われてるのに、買いたいものがあり過ぎて困っちゃう!」


ミミがウキウキしながらキョロキョロしながら市場を見ている。


「おれはあのから揚げが食べたいな、ポン太郎は何を買いたいんだ?」


太が聞いてきた。


「ぼくはまだ何も決めてないよ。でも、ペン立てが欲しいからいいのがあったら買いたいな。あ!」


ぼくはただレジャーシートの上で物を広げて売っている店に目を付けた。


目を付けたのはお茶の葉が入っていそうな丸い筒缶だ。


ペンを入れるには丁度いい大きさだった。


「おじさん、この缶は何円ですか?」


「ん~あれ?こんな缶うちにあったかなぁ・・・・・まぁいいや。ただの缶だから三十円でいいよ」


ぼくは丸い筒の缶を三十円で買った。


「何だよポン太郎、ただの缶なんか買ってよ。どうせならもっといいもん買おうぜ、例えばイカ焼きとか」

太はイカ焼き屋台を見ていた。


「ぼくはイカ焼きより焼きおむすびを買って食べるよ」


「も~男子は分かってないわね!常闇の青空市場に来たからにはここにしかないものを買わないと!そう、例えば魔法(まほう)(つえ)とか!!」


ミミはいかにも女の子が好きそうな魔法の杖を掲げた。


(その魔法の杖、この前おもちゃ屋さんで見た杖だ・・・・)


とぼくは思ったが、あえて言わなかった。



そんなこんなで色んなことが常闇の青空市場で起きたけれど、説明するのが面倒臭いので省略する。



常闇の青空市場から家に帰ったぼくは、三十円で買った丸い筒缶をペン立てにしようと思った。

「・・・・・・・・」

ぼくは本当に何となく、部屋に立て掛けられてあった傘を広げて曲芸師のように丸い茶筒缶を傘で回し始めた。丸い筒缶を傘で回している理由はただ一つ。


やりたかったから。本当にそれだけ。


くるくるくるくる。くるくるくるくる。くるくるくるくるくるくる。くるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくる。


「ふぅ」


ぼくの気が済んだので、取りあえず丸い茶筒缶を机の上に置いた。


「ポンちゃーん、ごはんよ~」


お母さんがぼくを呼んだ。


「はーい!あれ?小梅ちゃんは?」


「小梅ちゃんは常闇の青空市場の打ち上げやるから夕ご飯いらないって言ってたわよ~」


「そうなんだ~」


ぼくは夕ご飯を食べて、お風呂に入って、テレビを見て、寝た。






ボワン。



夢を見ている最中にそんな音を聞いた気がする。


(われ)の封印を解いたのはお前か?」


男の人の声が聞こえた。ぼくは目を開けようとしたけど・・・・


「・・・・・・・・くぅくぅ」


眠いので寝ることにした。


「お、おい寝るな寝るな!起きろ!」


「う~ん・・・・」


眠い。


「寝るな!頼む、一度起きてくれ!?少しでいいから!!!」


「ん~~~~~~~」


ぼくは目を開けた。半開きの目だ。ベッド前に悪魔の仮装をした男の人がいた。


それで分かった。これは夢なのだと。


男の人は言った。


「我が名は蠅の王『ベブゼ―――』・・・・ぎゃー!!!」


悪魔の仮装をした男の人が悲鳴を上げた。


ぼくが水鉄砲で水をかけたからだ。この水鉄砲は常闇の青空市場で買ったもの。お店の人曰く、普通の水でも聖なる水となって発射されるよ、と言っていた。太も同じ水鉄砲を買った。


「止めてくれ!お願いだ、止めてくれ。どうかお願いします、止めて下さい」


ぼくは取りあえず水を掛けるのを止めた。ここが夢の中であっても、段々と男の人が可哀想になってしまったので、水を掛けるのを止めた。


「ハァハァハァ、何なのだこれは。これはただの聖水ではない。聖水デラックスではないか!?こんなものがここにあるとは、お前は何者だ!」


ぼくは言った。


「ぼくはただのタヌキだよ」


「タヌキ?―――そうか、お前は化け者だな。化け者なら聖水を持ってるパートナー人間がいてもおかしくはないか。まぁよい、我の封印を解いた礼をしよう。我は昔、茶筒缶に封印され傘で筒缶を回されないと封印が解けない呪いが掛けられて――――お願いします、話している途中で聖水をかけようとしないで下さい」


話しが長くなりそうだったので、ぼくは水鉄砲で悪魔の仮装をした男の人に水をかけようとした。


水をかけるくらいやっていいよね、どうせこれは夢の中だし。


「眠いので早くしてください」


「あ、はい。封印を解いた礼をして、お前の願いを三つ叶えてやろう」


悪魔の仮装をした男の人は薄気味悪い笑みを浮かべた。


三つの願い・・・・・何にしよう・・・・これは夢だから・・・・・眠い・・・・・・


「ぼくは眠いので眠かせてください。茶筒缶に帰ってください。また封印されてください」


男の人は目をパチクリとさせた。


「え、今のが願い?う、嘘でしょ?身の丈に合わない願いを叶えさせて、代償としてお前の肉体を奪って完全復活するつもりだったのに。こんなノー天気でアホで欲望が無い奴がいるとは思わなかった!?折角茶筒缶の外に出られたのに、また封印されるのかよ!」


悪魔の仮装をした男の人はギャーと言いながら茶筒缶に吸い込まれ、茶筒缶ごと空に飛んで行った。


それを見て。


「眠い」


ぼくは寝た。




朝になって、昨日常闇の青空市場で買った茶筒缶をペン立てにしようとすると。


「あれ、ない?」


たしかに机の上に置いたはず。別の場所に置いたのかな~と部屋中探したけど、見つからない。


「あれ~?」


結局、どこを探しても見つからなかったのである。




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