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ポン太郎物語  作者: 玉城まりも
20/27

17 ポン太郎とサンフラワー赤松

ここは月光町にあるサンフラワー赤松というホームセンター。


東京ではないT県最大級のホームセンターである。


売られている物は本当に色々でトイレットペーパーからキャンプ用品まで売られている。


ぼくはお母さんと一緒にホームセンターに来ている。


お母さんはチラシで安売りしているものがたくさんあるといってウキウキで買い物しているが、ぼくはお母さんの買い物の付き添いで色々と連れまわされて、早くから疲れてしまった。


本当は家でゴロゴロしたかったのだけど、ぼくの服も買うのだといってぼくを連れまわしている。


服は適当でいいよといったのだけど、お母さんは、

「きちんと試着しないとポンちゃんに似合うかどうか分からないでしょ」

といわれてしまい、結局一緒にホームセンターに行くことになってしまった。


そんな時、ぼくは店員さんからチラシをもらった。絶句した。



『サンフラワー赤松本館!改修工事終了!ダンジョン第251階目開設キャンペーンに付き、ボーナスポイント三倍のお知らせ、宝箱多め、レアモンスター多め、他々・・・・・・・・』


ダンジョン?新しいゲームでも発売されるのかな?


お母さんがぼくが持っているチラシを見ていった。

「あら、しばらく見ないうちにダンジョンの階層増えたのね」

ぼくはいった。

「ダンジョンって何?」

「あら?ポンちゃんは知らなかったの?ここサンフラワー赤松は本館と別館があって、ホームセンターは別館なの。で、本館はダンジョンになってるの」

「ダンジョンというとモンスターとか出てくるの?」

「そうよ。ゲームにでてくるようなダンジョンで、宝箱や罠とかボスモンスターもいるの」

「へぇ~」

「ポンちゃんダンジョン攻略興味ある?」

ぼくは即答した。

「ない。お腹空いたからおむすび食べたい」

「はいはい」






太古の昔、サンフラワー赤松は地球に降り立った。種子の姿で地球に降り立った。


始め種子の姿のサンフラワー赤松は地球の養分を使い成長し花を咲かせた。その姿は地球のヒマワリという植物に良く似ていたが、サンフラワー赤松の正体は別の世界から来たモンスターであった。


サンフラワー赤松の正式名は、コスモス・ギャラクシー・スーパー・ウルトラ・スピリッツ・エクストリームジェット・レッドグリーン・カオスリーフ・ポイズン・爆裂ボンバー・サイクロン・レインボー・ホーリーヒール・フィアンマ・アクア・稲妻・フォーリアボタニカルサンフラワーという。とても長いので略してサンフラワー赤松。


サンフラワー赤松は自身の根や蔓を使い自力で移動でき、モンスターの(さが)で人間を襲う。自身の種子を増やし、又は自身を分裂させ、個体数を増やし、やがてキングサンフラワーと赤松いう特殊個体が現れ、人間を襲う。


サンフラワー赤松は人間によって幾度なく討伐されてきた。


しかし、サンフラワー赤松は幾度なく蘇る。


種子や一つでも個体が残っていれば、サンフラワー赤松は蘇る。


別の世界から来た人間いわく、サンフラワー赤松を完全討伐するには惑星ごと丸焼きにし、水で洗い流し、電撃で感電させるしかないといっていた。


なるほど、とキングサンフラワー赤松は思った。


キングサンフラワー赤松は全てのサンフラワー赤松と繋がっており、意識が共有されている。


一個体だけだと弱い部類だが、集団で襲い掛かると国が亡びるレベルだ、とこれも別の世界から来た人間がいっていた。


サンフラワー赤松は幾度なく人間を亡ぼそうとした。


しかし出来なかった。


キングサンフラワー赤松が魔王となり、手始めに村を襲うかとなったとき、必ず『勇者』が現れ、キングサンフラワー赤松は討伐される。


またすぐに復活するが、やはり討伐される。


復活しては討伐され復活しては討伐され、を数万回繰り返した。


数万回繰り返してる間に、とても永い時間が経った。


別の世界から来た人間いわく、この地球という世界は特殊な世界で『勇者』が多すぎる、といっていた。


なるほど、とキングサンフラワー赤松は思った。


『勇者』というのは広い意味で悪と戦う不思議な力を持った者たちのことをいう。


よってキングサンフラワー赤松は『勇者』である魔女、賢者、聖騎士、その他諸々によって討伐されてきた。


キングサンフラワー赤松は考えた。自身が魔王になって討伐されるのはもう飽きた。


ならば、と思い他の魔王の配下になり出稼ぎに出てみることにした。


けれど、やはり『勇者』によって倒された。


桃太郎に倒され、ヘラクレスに倒され、アーサー王に倒され、ギルガメッシュに倒され、ジャンヌダルクに倒され、クレオパトラに倒されその他諸々、キングサンフラワー赤松は倒されてばっかりだった。


出稼ぎに行きすぎて、神話に出てくるような戦いにキングサンフラワー赤松はいた。ほぼ全てにいた。


だからキングサンフラワー赤松は歴史の生き証人といっても過言ではなかった。


近年ではタヌキにも倒されてしまい、キングサンフラワー赤松はとても落ち込んだ。


自身の魔力で家を建て、引きこもった。


けれどモンスターという性に勝てなくて、またに人間を襲ったりしたけれど、やはり倒され、さらに落ち込んだ。


時代が数百年経過し、キングサンフラワー赤松の家に一人の人間がふらりとやってきた。

男だった。


キングサンフラワー赤松は身構えた。


永い間引きこもっていたこの家は、見た目はただの洞穴だが中はダンジョンになっている。もっともその時代にはダンジョンという言葉はなかったが。


それはともかく、このダンジョンの主であるキングサンフラワー赤松のところまでやってこられる人間は普通ではないのだ。


キングサンフラワー赤松はいった。

「人間よ。よくここまでやってこられたな。歓迎するぞ」

といって、カオスブレスの準備をする。


ただのサンフラワー赤松たちが戦闘音楽を打ち鳴らす。


どうせ今回も倒されるのだろう、と思っていると人間の男は思ってもみないことをいいだしたのであった。

「突然訪問してしまい申し訳ありません、(わたくし)は異世界から地球にお邪魔している赤松と申します。今日はキングサンフラワー様にビジネスのお話しがありまして」

「ビジネス?ビジネスとは何だ?」

「ビジネスとは商売という言葉でございます」

「お前は商人か?あ、者ども音楽止め」

ただのサンフラワー赤松たちは音楽を止めた。

「そうです」

異世界から来た商人・赤松の話しによれば、ダンジョン経営をしないか?というものだった。


キングサンフラワー赤松は自身の力でダンジョンを創り上げることができ内装も思うがままである。


異世界のシステムであるステータスやレベルという概念を組み込んで、商売対象は強くなりたいと思う者たち。ダンジョン内に出現するモンスターはただのサンフラワーを使えば大丈夫。


他にも色々と細かい話しはあったが、キングサンフラワー赤松はとてもいい話しだと思った。


よって、キングサンフラワー赤松は五百年続くダンジョン経営者となった。


キングサンフラワー赤松の『赤松』は異世界から来た商人・赤松から取っている。


商人・赤松とはダンジョン内に設置する宝箱の中身を買うために世界中を巡り渡った。


たくさんケンカもしたけれど、たくさんの楽しい思い出もある。


色々と巡り渡り、ダンジョン経営の片手に今でいうホームセンターをやるようになった。




けれど商人・赤松はある日突然姿を消してしまった。


なぜ姿を消してしまったのか分からない。


姿を消してから二百年近く経っているが、キングサンフラワー赤松はいつまでも商人・赤松を待っている。



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