15 ポン太郎と魔女と医者とラブ
登校している途中に、クラスメイトの岡本 博士(人間)通称ハカセを見つけたので声をかけようとしたら、
「どいてどいてどいて!!!!」
女の子が空から降ってきた!
そして、女の子はそのままハカセに衝突し二人は地面に倒れた。
ぼくは一瞬の出来事に茫然としたあと、慌てて二人の元に駆け寄った。
「二人とも大丈夫!?」
女の子はまさに魔女っ子だった。黒いワンピースに黒い三角帽子。箒に乗って落ちてきたということは、彼女は間違いなく魔女であろう。そして、チョコーレト色の茶色い髪に青い瞳をしている年齢はたぶんぼくと同じくらい。
「いてててててて・・・・」
「あいたたたたた・・・・」
二人はゆっくりと起き上がった。
ぼくは聞いた。
「ケガはない?」
「ぼくは大丈夫です。君は大丈夫ですか?吐き気や眩暈はないですか?あ、えっと、日本語オーケー?」
ハカセも女の子が外国の子だと気づいた。
「日本語大丈夫・・・・どこも痛くないです。あ!学校!遅刻しちゃう!えっと、ぶつかってごめんなさい、じゃあね!」
と魔女っ子は箒で空を飛んで行ってしまったのであった。
それにぼくとハカセは茫然と見送った。
ぼくは言った。
「あれは・・・・・何だったんだろう?」
それにハカセは答えた。
「・・・・・すぐにまた会える気がします」
朝の会が始まる前に、鬼瓦先生先生が言った。
「いきなりだが、留学生を紹介する。入りなさい」
教室の扉が開いた。
そこに現れたのはー
『あ、あの時の!?』
ハカセと魔女っ子は同時に叫んだ。
「ショコラ!もうこっちに来てたの!」
ミミが大きな声で言った。
魔女っ子の名前はショコラ・ブランシュ。イギリスから来た留学生だ。教室なので彼女は黒い三角帽子は被っていない。
休み時間になり、ミミはショコラに駆け寄った。
「ショコラ、こっちに来るんだったら連絡してよ。歓迎会やるのに」
「えへへ、ミミを驚かせようと思ってさぁ~」
ぼくは聞いた。
「二人は知り合いなの?」
ミミとショコラは頷いた。
「私の家は代々ショコラの家に使える使い魔なの。今はおばあちゃんが使い魔契約していてイギリスで暮らしてるの」
「そう。だから小さい頃からの友だち」
「だから、いずれ私もショコラの使い魔になる予定だけど、本格的に使い魔になる前にアイドルになって芸能界デビューしたい!!」
とミミは夢を語った。
そこに太が話しに割り込んできた。
「ショコラといったな、お前何でここに来たんだよ」
「ここに来た理由は、月光町は不可思議な町だから修行してこいってママから言われたから」
「それでお前ハカセと知り合いなのか?朝、『あ、あの時の!』って叫んでたけど」
「ハカセ?」
「あの席に座ってるチビで眼鏡の奴だ。岡本博士っていってあだ名はハカセ」
「あの男の子だったら朝、箒で空を飛んで登校していたらカラスにぶつかって、落ちてぶつかったのがあのハカセ君だったの」
「おう、そうなのか」
一方で、ハカセは留学生のことは何も興味ありません、といった感じでゾウの写真集をウヘヘヘヘと気持ち悪い笑みを浮かべて見ていた。
次の日。
ショコラが泣きながら学校に来た。
ミミが慌てて聞いた。
「どうしたのショコラ?何があったの?」
「う、う、う・・・・ペットが逃げちゃった」
「ペット?」
「朝、窓を開けたら外に出ちゃって、外に出た瞬間に光の速さになってどっか行っちゃった・・・・・見つけようにも光の速さで飛んで行ったからどこにいるのか分からないよ~」
ミミは言った。
「光の速さって・・・それ、どんなペット?」
ぼくも同じことを思った。
そこに飛びついてきたのがハカセだった。
「ショコラさんのペットはどういう生き物ですか!?ぜひとも見てみたいです!」
興奮気味だった。
ショコラ曰く、逃げたペットは地球外生命体だそうだ。クマのような見た目で大きさはダルマ一つ分。
背中に羽があって毛の色は水色。リンゴに棒がついたような杖を持っている。
ぼくとミミは顔を見合わせた。
恐らく同じことを考えているだろう『本当にそんな生き物が存在するのか』と。
けれどハカセは違った。
「地球外生命体・・・・・・水色の小さなクマ・・・・・リンゴに棒がついた杖・・・・・・何となく分かりました。そのペットさんの名前は何で、どこから来たっていうのは?」
「名前はハッピー。魔法の国クリスタル王国から来たって・・・・・・」
「魔法の国クリスタル王国・・・・・・なるほど、もしかしたらそのハッピーさんを見つけることができるかもしれません」
それにショコラは、
「本当!?」
目を輝かせた。
放課後になり、ぼくとハカセとミミとショコラは地球外生命体・ハッピー捕獲・・・・じゃなかった捜索を行うことになった。
ハカセは言った。
「まず、ハッピーさんを探す前に情報収集です。ぼくの家に行きましょう」
何で?と思ったが取りあえずハカセの言葉に従うことにした。
ハカセの家は人間も動物も診察することができる総合病院でハカセは現・院長の孫に当たる。本人も将来は医者になると言っている。
ぼく達はハカセの部屋にお邪魔して、そこで何をするかと思えばハカセは自分のパソコンを操作し始めた。
カタカタとキーボードを打ち鳴らすと、
「出ました!これで、ハッピーさんについて分かります!」
ぼく達はパソコンの画面をのぞき込んだ。
『何でも分かる生き物図鑑』
というタイトルで、
『・名前 ハッピー
・出身 魔法の国クリスタル王国
・種族 クマ型妖精
・身体的特徴 ダルマ一つ分の大きさで毛の色はピンク・青・黄色と様々 背中に羽がある
・好きな食べ物 ハチミツ
・能力 光の速さで飛行可能』
という情報があった。他にも色々情報はあったが今一番大切な情報は。
『・捕獲方法 手順 図を参照 1地面に魔法陣を描き、火を灯したろうそくを三本魔法陣の中に設置 2レモンを絞ってレモンスカッシュ!しゅしゅわ口の中ではじける炭酸飲料――――と歌う。すると魔法陣の中から召喚される』
ミミは言った。
「何でハッピーの情報があんたのパソコンの中にあるの?ていうか、『何でも分かる生き物図鑑』って何?」
ハカセは自慢げに言った。
「ぼくの家は四百年前から病院をやっているからね、普通の動物から妖怪、伝説の生き物のことも古文書としてあるんです。今はこうして誰でも見ることができるようにデータベースにしてますがね」
ミミは言った。
「伝説の生き物って何?」
ハカセは答えた。
「鳳凰とか」
それに、ぼくとミミはあきれてしまった。
一方で魔女っ子ショコラは目をキラキラさせてパソコンの画面を操作していた。
「素敵・・・・こんな生き物図鑑はじめて・・・・・・」
で、早速やってみた。
近くの公園で生き物図鑑の図の通りに魔法陣を描き、ハカセの家から誕生日用ろうそくを三本持ってきた。
最後にミミが叉た火を出してろうそくに火を付けて歌う。
『レモンを絞ってレモンスカッシュ!しゅしゅわ口の中ではじける炭酸飲料!』
すると、魔法陣が輝き出した!そして、魔法陣の中からダルマ一つ分の大きさで、背中に羽がある水色クマが出現した。
「魔法の力でしゅしゅっとキレイ!妖精ハッピー!」
ハッピーはキメポーズをした。
「・・・・・・何でハッピーはここにいるクマー!?選ばれし乙女を探していたのに!?それと君たち!どこで召喚魔法陣を知ったのか分からないけど、こんな急いでいるときにハッピーを呼ばないでくれクマー!」
「あぁハッピーどこいってたの!?勝手に外に出て行っちゃって心配したんだよ!?」
「ショコラちゃん、ハッピーは何度も言ってるクマ。ハッピーにはとても大切な使命があるからショコラちゃんと一緒にいることはできないクマ。ハッピーは選ばれし乙女を探して、大魔王キング・カビを倒さないといけないクマ」
「だってこんな不思議な生き物見たことない!それに、ハッピーが使う魔法は私たち魔女が使う魔法と違うから研究しないと!」
「だからハッピーには使命が!!」
「ちょっとショコラさん」
そこにハカセが加わった。
「あ、少年!ハッピーを助けてくれるクマか?」
「ぼくにもよくハッピーさんを見せてください。なるほど羽は透明ですね。触り心地はまるでぬいぐるみのよう。ハッピーさん、もっと君の身体をよく見せてください!グヘヘヘヘヘヘ」
「変態だ――!!!」
ハッピーは叫んだ。
そんな時だった。
「ふ~討伐完了」
公園にいきなり勇者・アスカ君が光を纏って現れた。
そこにいた全員ビックリした。
アスカ君はぼく達に気づいて、
「何だ何だ?みんな私のお出迎えか?」
アスカ君は自分のことを『オレ』から『私』になった。
ぼくは言った。
「ぼくたちは友だちのペットを探してたんだよ。もう見つかったけど」
「ハッピーはペットじゃないクマ!あれ、もしかして君は・・・・」
ハッピーはリンゴが付いた棒の杖をアスカ君に向けた。
すると、リンゴが輝き出した。
ハッピーは目を輝かせて、アスカ君に行った。
「やって見つけたクマ、選ばれし乙女。確か君の名前はアスカといったね。お願いクマ、ハッピーと一緒に魔女っ子になってキングカビを倒して欲しいクマ!」
「やだ」
アスカ君はあっさりといった。
「な、何でクマ!魔女っ子は女の子にとって憧れの職業のはず!断る女の子は初めて見たクマ!分かった、君のために今回特別にリンゴ型のかわいいコンパクトに空を飛べる羽を付けるクマ!だから一緒に世界を救って欲しいクマ」
「やだ」
ハッピーは衝撃的な顔になった。
「な、何で・・・・・可愛い衣装もあるのに」
それにアスカ君は答えた。
「そもそも・・・・・・・」
アスカ君はポケットからハート型のコンパクトを取り出して、ピカっと身体が光ったと思ったら、一瞬にしてピンク色の魔女っ子衣装になった。
ハッピーは顎がガクーンとなった。
「そ、そんな。もう魔女っ子だったとは・・・・・・」
「それだけじゃないよ」
またアスカ君はピカっと身体が光り、今度は勇者的な衣装になった。
またハッピーの顎がガクーンとなり、今度は身体を震わし始めた。
「ま、まさは君はあの伝説の女神ホワイトローズから選ばれし勇者・・・・・」
アスカ君はニコリと笑った。
「さて、お腹も減ったことだし帰るか。あ、あと、キングカビだっけ?さっき私が倒したから、地球はこれからも平和だぞ。そもそも地球にはたくさんの勇者や魔女っ子がいるから、心配しなくても誰かが魔王的な存在を倒すから大丈夫だぞ」
アスカ君は家に帰ってしまった。
「あの強大な力を持ったキングカビを簡単に倒したって、じゃあハッピーはこれからどうすればいいんだクマ?」
とハッピーは途方に暮れた。トントンとハッピーの肩を誰かが叩いた。
ショコラだ。
「私のペット・・・・じゃなかった友だちとして私の家にこない?」
「ショコラちゃん、今ハッピーのことをペットって。でもいいよ、ハッピーの使命もたった今無くなったとこだし、ショコラちゃんの家に行く」
「じゃあ、ハッピーこれからもよろしくね!」
「うん!」
めでたしめでたし、になろうとしたところハカセが二人の間に割って入った。
「ずるいですショコラさん!ぼくもハッピーさんの生態について興味あるのでハッピーさんと仲良くしたいです!もっと身体を触りたいです!」
「いつでもいいよ、あとハカセ君。一つお願いがあるんだけど、いいかな?」
「何?」
「私をハカセ君のお嫁さんにしてください!」
ショコラはとんでもないことを急に言いだした。
ぼくとミミはえー!となった。けれど、ハカセとショコラの会話は続いていく。
「ぼくのお嫁さんになる人は大変だよ?ぼくは自他共に認める動物の変態だよ?」
「動物が好きなんて素敵!」
「岡本家の血筋はみんな変人で、すぐぷらっとどっか行っちゃうよ?」
「私の家の人間も放浪癖があるから大丈夫!」
「お父さんは薬を作るのに必要だからってオリハリコンを探しに数か月帰って来てないよ」
「私のママは聖剣を作ろうとアダマンタイトを探しに一年くらい帰ってないよ」
「おじいちゃんなんて白虎とか伝説の生き物を治すために十年くらい家にいないよ。だから、いつもテレビ電話でしかおじいちゃん見たことない」
「私のおばあちゃまはヒュドラと一対一で八年くらい戦って最近やっと家に帰ってきた。おばあちゃまとは水晶玉で連絡を取ってた」
「ぼくの夢は恐竜の化石から遺伝子を取り出して恐竜公園を作るのが夢なんだ」
「私の夢は魔法で古代動物や妖怪の骨を操って、博物館に展示するのが夢」
そして、ハカセとショコラは互いに見つめあい、ハカセは言った。
「ショコラさん!君が好きだ!結婚を前提に付き合ってください!」
「私も好き!もし浮気したら許さない!」
「いや、ぼくは浮気しますよ。例えばハッピーさん、君は中々いい身体してますね~っていいますよ」
「そういうところが素敵!」
ハカセの言葉にハッピーはぞくりと身体を震わした。
ミミが呟いた。
「アスカちゃんの魔女っ子衣装も勇者衣装も良かった~」
ぼくはこう言った。
「二人ともお幸せに」