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ポン太郎物語  作者: 玉城まりも
14/27

14 ポン太郎と鬼瓦先生

鬼瓦(おにがわら)武史(たけし)先生。


鬼瓦先生は今年の四月に木の葉の森小学校にやってきた新しい先生で、ぼくの担任の先生である。


身長一八九センチあり身体がゴツイ。好きな食べ物はいちごパフェとクリームソーダ。


奥さんと三歳の娘がいるそうだ。




今ぼくは放課後に学校の校庭でサッカーをして遊んでいる。


サッカーメンバーとしてもちろん太がいる。


そんな時、体育館からわぁ!と歓声が上がった。ついでに人だかりができている。


何だろうと思い、ぼくと太は体育館を覗きに行くことにした。


太は言った。

「何でこんなに人が集まってるんだろう?この時間はいつも体操部が使ってるけど」

ぼくは言った。

「分かんないけど、オリンピック選手が来てるんじゃない?」

とぼくは適当なことを言った。


人だかりは木の葉の森小学校の生徒と先生だった。


みんなわぁわぁと騒いでいる。


ぼくの目に映ったのはー



ダン、ダダン、ダン!シュタ!



何と鬼瓦先生がすごい動きをしていた。


あのゴツクて大きな身体で、オリンピックの体操選手のような動きをしていた。


大きな身体でバク宙や側転や空中で身体をひねったりすうるもんだからすごい迫力だ。


ぼくは思わず、

「すごい」

と言ってしまった。

そこにクラスメイトの猿川がやってきた。

「鬼瓦先生すごいだろ?オレたち猿の化け物顔負けの動きをしているんだよ」

尊敬半分、呆れ半分の顔をしていた。


猿川は猿の化け者で体操競技が得意。なので体操部に所属している。

「鬼瓦先生スゲー!!!」

太は目をキラキラさせていた。

「あの先生、何で小学校の先生なんかやってんだろ?鬼瓦先生の身体能力があればプロのスポーツ選手になりたいほうだいなのに・・・・・」

という猿川の言葉にぼくは頷いた。


鬼瓦先生は体育の授業ですごい才能を発揮していた。


鬼瓦先生は普通の体育の授業をするんだけど、自分もやるといって、100メートル十秒台、走り幅跳び八メートル台、握力100キロ台と世界記録に迫るものであった。


何で鬼瓦先生はここにいるんだろう?


ぼくは猿川に聞いた。

「何で鬼瓦先生は鉄棒で大きく回ったり、床で回ったりしてるの?」

猿川は言った。

「『体操やったことないから少しやらせて』って言って、ちょっと教えたら、あれになった」

「へぇ~、あれになったんだ」

ぼくはドン引きながら相槌を打った。


すると、ぼくの後ろの方でクラスメイトの阿部・鈴木・渡辺がコソコソと、

「あれはどう見ても素人の動きじゃねーだろ」

「どうして鬼瓦先生が普通に学校の先生やってんだ?」

「あの身体能力は人間じゃねーな」

それにぼくは心の中で、うん、と頷いた。


「鬼瓦先生すげー!かっこいい!!!!!」

太がまだ騒いでいた。




次の日。



太が一時間目の授業が始まる前に元気よく鬼瓦先生に言った。

「せんせーい!!!何で先生はここで学校の先生をやってるんですか!!!」

本当に元気いっぱいだった。瞬間、太以外のぼくたちクラスは凍りついた。


何となくだけど、鬼瓦先生はすごい身体能力を持っていてプロのスポーツ選手になってもおかしくないレベルだ。なのに小学校の先生をやっているということは、何かあって学校の先生をやっているということだ。で、聞いてはいけない何かがあるような気がして、で、太は聞いてしまった。


鬼瓦先生は頭を傾げた。

「教員採用試験に受かったからここにいるわけだが?」

「そうじゃなくて、先生は運動神経抜群なのになんでスポーツ選手にならなかったんですか?」

「『ならなかった』んじゃなくて、『なれなかった』んだ」

「どうして『なれなかった』んですか?」


すると、鬼瓦先生はうーんと唸った。そして語り出した。




どうしてスポーツ選手になれなかったのか・・・・・・



「どうしても何も、私はスポーツに関する運がないからだ。

時々いうだろ?『運も実力の内』って、その運が私に一切なかった。

私はとても運動神経がいい。だからありとあらゆるスポーツで優秀な成績を取った。だが!私のスポーツ人生は挫折だらけだった。


 まず、幼稚園生の時ちびっ子相撲で本当は県大会に行ける実力はあったが、たまたま同じ地区に後に横綱となった子が引っ越してきて、思い切り投げ飛ばされて挫折。


 小学三年生の時は空手で全国大会出場が決まっていたが、大会当日に風邪を引いて出られず。


 小学六年生の時は陸上100メートル走で東日本大会に出ようと親の車で高速道路を走っている途中で 大渋滞に巻き込まれてしまい、結局出られず。


 中学生の時はサッカーの全国大会に行くために電車に乗ったが女性に痴漢をしている男を見つけてしまい捕まえていたら思い切り遅刻をしてしまい出られなかった。この時、私は遅刻してしまったが補欠メンバーが出てサッカーの試合は見事優勝。つまり全国優勝だ。


 高校生の時は卓球で全国を目指そうとしたが、後にオリンピック選手となる人物に最初から当たってしまい地区予選でボロ負け。


 大学生の時はアメフトで全国大会に生まれて初めて出場し決勝まで行き、この試合に勝ったら女子マネージャーに告白するんだと思いながらプレイしていたら、その女子マネージャーは同じチームメイトの男と手を繋ぎながら応援しているのを目撃してしまい、撃沈。準優勝をした。


以上のことから私はスポーツに関する運がない。実力はあるが、名のある大会で私は活躍することができなかった。活躍できないのであればプロのスポーツ選手になることはできない。


だから私は今ここにいる。最初から教師になりたかったわけではないが、でも今は教師という職業は適職だと思っている。


他に、何か質問はあるか?」


それに、ぼくたちは首を横に振った。


休み時間、ぼくたちはクラスメイトは鬼瓦先生の話しで持ちきりだった。


すごい話しだったね、とみんなで言い合った。

そして太が一言、

「人生ってそう上手くいかねーもんだな」

それにぼくたちは、うん、と頷いた。




別の日



ぼくと太と亜豆は『キララの泉公園』で遊ぶことになった。


キララの泉公園は広いグラウンドやテニスコートや野球場やプールやアイススケート場。


ぼくたちはフリスピーで遊ぼうとしたところ、テニスコートに人だかりができていた。


何だろうと思い、ぼくと太と亜豆はテニスコートを覗きに行くことにした。


するとそこには鬼瓦先生と見知らぬカッコいい男性がテニスをしていた。


テニスのことはよく分からないけれど、激しいバトルをしているのがよく分かった。


そしてヒソヒソと聞こえてくるのが・・・・・・

「あのカッコいい男の人ってもしかしてオリンピックテニス選手の人?」

「え?あ、本当だ!何で月光町にいるの?」

「知らない。でも、ゴツイ男はただの小学校の先生よ」

「ただの小学校の先生?そんなわけあるかい、絶対プロのテニスプレイヤーだろ」

「それがただの小学校の先生らしいよ~」

「じゃあ何でオリンピック選手と対等にテニスの試合やってんの?」

「知らないよ~」



テニスバトルで勝ったのは、鬼瓦先生だった。



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