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風来譚  作者: ふちのべいわき
第二章
16/18

第十五話 雲明ける函館山

北海道編


※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係がありません。



「ジェットコースターの一番オモシロいとこって、どこだと思います? 息をつかせないウェーブ? 天地逆さまになるツイスト?

 うーん私としてはやっぱり、最初。グググっと上に昇っていって、グアアアアー!っと落ちていくとこですかね~。」


 日本最北端の町、稚内のノシャップ岬を過ぎたところで。宗谷丘陵からの風を受けながら、欣秀よしひではニヤケ顔を浮かべる。

「…さぁ~て、次の折り返しは、沖縄!

 こっから南まで一気に、日本の背中を下っていきますぜ。」

 スロットルを開け、日本地図の一番上。ジェットコースターのてっぺんから、今、滑走する。


挿絵(By みてみん)


 道道106、宗谷サンセットロード。

 右にも、左にも、何もない。地平へ向かって駆け抜けていける、唯一無二の極上路。ここを走れるのは、長い時間と体力を賭け最北端へと辿り着いた、ドライバー・ライダーのみである。

「ウオーーーー!!! 北海道、サイッコォーーーーーーー!!!」

 絶叫をあげてアクセルをぶん回し、欣秀は目の前に広がる"ご褒美"を、ものの数時間で平らげるのであった。


第十五話

 雲明ける函館山


―北海道滞在十四日目・札幌―


「それにしてもさぁ…おっそろしいバイクを作ったもんだよねぇ。」

「あはは。申し訳ないです…?」

「ウチはさ、バイクだったら何でも請け負うってポリシーでやってるから、やらせていただいたけど。はは、こりゃあ骨が折れるわ。」

「いやぁ、タイヤ交換に出すの初めてなんで。ここまでだったとは………すみません…。」

 札幌の郊外部に建つ、看板が色褪せた二階建てのバイク工房『シーランドサービス』にて、欣秀はロケットⅢのタイヤ交換に立ち会う。

 ヒゲをたくわえた主人と、その弟子と思われる青年が、タイヤチェンジャーを使ってもハマらない幅240、リム16インチなんていうバカげたリヤタイヤを、スレッジハンマーでぶったたきながら、無理くりホイールに嵌め合わせる。

 それを、マフラーを外すという大手術をするハメになったロケットⅢの、しちめんどくさい構造のシャフトドライブユニットに接続させていく。二人の着けているマスク越しに、時たま荒い息が聞こえてくる。

「電話でさ、"ロケットⅢのタイヤ、取り寄せといてくれませんかー"なんて言われた時は、こんな苦労をするとは思っちゃいなかったよ。あんた運がいいね。他の店じゃあ、ブランド以外じゃやってもらえんだろ。」

「こちらのお店を、教えていただいたんです。黒田さんって方なんですけど。」

「おー? なんだ、黒田のあんさんの馴染みだったか。はは、こりゃあまた借りができちまったなぁ。」

 様々な人と親し気な黒田。一体何者なのだろうか。欣秀は首を捻った。


「じゃ、こんなもんかね。工賃込みで9万円。」

「や、安い!」

 タイヤ交換が専門の店だから、と誇らしげに笑う主人に感謝した後、欣秀は取り外された二本のゴムの塊に顔を埋める。

「1万1,181㎞…! よく頑張ってくれた! この北の大地に眠ってくれ!」

 戦友に別れを告げ、ロケットⅢに跨る。

「そして、新しい仲間よ…! メッツラーME880マラソン改め、ME888マラソンウルトラ!! よろしく頼む!」

 大げさに意気込む欣秀を見て、いい仕事をしたなと主人は苦笑いする。

「そんで、次はどっちに行くんだい。」

「残念ながら、もう北海道は去るんです。今日中に、函館へ。」

「ほ~、そりゃまた大移動で。」

「ええ。ギリギリになっちゃいましたが、帰る前に、やんなくちゃいけないことがあるんで!」

 

 札幌から苫小牧へ抜け、海沿いに国道を走り、函館へひた走る。新品タイヤも、今日一日で皮むきが終わってしまうだろう。従来以上にしっかりと大地を捉え、乗り手に路面状況を逐次伝えてくれる。

(この北海道の道とも、いよいよお別れか。今更になって実感が湧いてきたな……そして)

 フワフワとしていた足元が、しっかりと地に着いていく感覚。それは、タイヤだけでなく、心からも伝わってくる。

「今晩は、るんだな、あの人と。……大丈夫。覚悟は、できてる。」

 2週間滞在した最後の日になって、空は景気よく青で塗られた大快晴。それが刻々と薄紫色に変わっていくまで。欣秀は、北海道との別れを惜しむよう、ひたすらにハンドルを握り続けた。


~~


 函館市電のレールを踏み越え、ロケットⅢは石畳の敷かれた『二十間坂』を駆け上がる。ひとたび止まれば、瞬く間に後ろへ崩れ落ちてしまいそうな急坂。

 真白な壁が特徴的な五島軒本店にも、豪奢な黒瓦が眩しい本願寺にも、目をくれる暇はなく。正面で出迎えるフジヤレストランも脇目にすり抜け、上り続けた先で欣秀がようやく足を止めたのは、鉄骨が無骨に組まれた、建造物の足元だった。

 日が傾き始める駐輪場に、既に一台のバイクが置いてあるのを確認すると、欣秀は急ぎ身支度を整え、建物の玄関口へ向かう。


「すみません、お待たせしました。」

「おお、おお! おかえり~! 欣秀くん。」

 相変わらずの屈託ない笑顔で出迎えてくれたのは、黒田だった。その隣には、相変わらず無表情の真玲が。

「本日、函館に着かれたのですか。一晩休まずに、よろしいのですか。」

「はい。いや、稚内からの帰り際、小樽なんかも見てきちゃったら、時間なくなっちゃって…。

 でも安心してください。疲れたのを理由に、"本気を出せなかった"、なんて言いませんから。」

 疲れが全くない、と言えば嘘になるだろうが、欣秀の笑みに無理はない。真玲を真っ直ぐに見据えるその瞳には、適度な緊張感と、十分な落ち着きとが重なっていた。それに安堵したのか、真玲はふっと口許を緩ませる。

「わかりました。…かくいう私も、到着したのは先刻です。ご安心ください、条件はイーブンです。」

(あれ、珍しく笑ったな…?)

 きょとんとする欣秀の前を、黒田が通り過ぎて声を上げる。

「さぁて、じゃあ、行ってみようとしましょうかね! お二人さんの、決戦の場へ!」

 決戦だのと大袈裟に言われ、頭を掻く欣秀と、まんざらでもない様子の真玲。黒田に引かれ、二人の旅人は『函館山ロープウェイ 山麓駅』へと入っていく。



 黒田から二人へ連絡があったのは、昨日のことだった。


"「いや~~二人の決闘の場なんだけどさ! い~い場所思いついちゃったよ~! 明日、日没の頃! 函館山ロープウェイに集合ね!」"


「あの、本当にいいんですか? 点検の時期に使っちゃったりして…。」

「いーのいーの! ここのオーナーさんとはちょっとした知り合いでさ、張り切ってお願いしたら、点検期間の明ける直前の日、夕方からなら、使ってもいーって!」

「ちょっとした知り合い…って、黒田さん、あなた一体…。」

 エントランスのチケットカウンター前に一人だけ立っていた受付嬢が、一行をワンフロア上のロープウェイ乗り場まで案内する。本来であれば観光客で込み合うラウンジに人はおらず、案内用のディスプレイにも光がない。チケットを提示しないと通れないゲートも、お休みモードだった。

「私は賛成です。私の両親が、"函館山は私たちにとって大事な場所だ、あそこがなかったら、お前はいなかったかも"と、常々言っておりました。

 きっと私にとっても、強さに繋がるものを得られる場であると推測できます。」

「桐谷さん、それ多分強さとか全然関係ない意味で、大事な場所だってことかと…。」

「はっはっは。要塞が開放されてから70年あまり。まさかまた、ここに刀なんぞが持ち込まれるなんてねぇ。」


 ゲートを通り過ぎ、ガラス張りにされた廊下を進んでいくと、乗り場に係留されたゴンドラが見えてくる。

 かつての対露の要たる函館山へ向かい、のんびりとした足取りで歩く黒田の背に。欣秀は、不意に問うてみる。

「…あの、黒田さん。私らにどうして、ここまでしてくれるんです?」

 黒田は悠長なその歩を止めぬまま、答える。

「私はね、見てみたかったんだよ。この北海道で、若人たちが何を見て、どう感じてくれるのか。多くの人の上に成り立ったこの土地で、成長というものを得てくれるのかってね。」

「………。」

 いつもの、穏やかな声。だが顔が見えないからだろうか、その声には妙な真剣さが感じ取れた。

 乗り場に着き、係員の案内で、欣秀と真玲がゴンドラに乗り込む。さて、黒田も。と二人が振り返ったところで、係員がドアに手をかける。

「あれ、黒田さんは行かないんですか。」

「いやぁ、見せるもんでもないでしょう? 決闘は。

 それにさ、なんか。戻って来た二人の顔を見たら、満足しちゃった。」

「はあ…。」

「いってらっしゃい! 両者とも、健闘を祈る!」

 ドアが閉じられると同時に、敬礼をしてみせる黒田。

 冗談めかしく歯を見せての仕草だったが、どうにもその姿はサマになっていた。


 曳索えいさくが巻き上げられる振動こそするものの、密閉されたゴンドラの中は静かなものである。

「……」

「……」

 欣秀も真玲も、無言であった。てっきり黒田も乗ってくるから、こんな気まずい状況にはならないだろう…と、両者とも思っていたのだが。

(梶井さんの時も、こういう感じだったなぁ)

 閉所に男女二人きり。そう書けばなんとも喜ばしい状況であるのだが、面白いことにこの二人は、これから斬り合う仲なのだ。

 無口な真玲のことだ。彼女からは何も話さないだろう…と、欣秀は話題を思索するが、何も思いつかない。

「ありがとうございました。」

「…んっ?」

 しかし予想に反して、口を開いたのは真玲だった。

「先に、お礼を申し上げておきます。ありがとうございます。」

「えっと…なににです?」

「無論、こんなことに付き合っていただけることにです。しかし、それ以上に…。」

 真玲は欣秀の目をしっかりと見据える。

「あなたのお陰で、強さの価値。意味。その片鱗が、つかめたような気がします。」

「…はぁ…。」

「ありがとうございます。」

 また、真玲は薄く笑みを浮かべていた。

 初めてまじまじと見る、その顔。

 出会った当初に知っていたことだが。その顔が整っていることに、欣秀はあらためて気付く。そして急に気恥ずかしくなり、目をそらして頭を掻いた。

(立ち合いなんかじゃなけりゃぁなぁ…)



~~




 ゴンドラから降り、展望台の中にある売店などを横目に、通路を抜けると。強かな海風が、二人の衣装を揺らす。

 函館山の屋上展望台は、曲線を描く、いくつもの広場が重なるような造型。

 諸説あるが、世界三大夜景の一つであり、“百万ドルの夜景”とも称される、日本屈指の夜景が見られるスポットである。多くの観光客を収めるため、その面積は広い。

 端から端まで歩いてみてみれば、函館湾から函館市街の隅々までを、その目に映すことが出来る。


 その世界的にも名のある場所に、今は二人きり。

 普段は雑踏が埋まる場所に漂う静けさが、互いの気持ちを引き締める。

 欣秀と真玲は、そのメインビュー。函館市街が見下ろせる、屋上展望で最も広いフロアに、荷物を下ろした。

 日本海へと身を沈め始める夕陽が、街を、函館山を、そして、二人の戦士を赤く染め始める。


(硬い床だ…。また吹っ飛ばされたら、痛そうだな…)

 欣秀は、取り出した本差と脇差を抜刀する。

(そんなのは勘弁だから…今度こそ、”きちんと”勝たせてもらうよ。絶対に後れをとらない)

 勝ちは勝ちだが、前回の辛勝はいささか無様だった。運の要素も多分にあった故、欣秀にとってあの勝利は誇れるものではなかった。

 だからこそ、今回は正面から、全力でぶつかり合い、そのうえで勝利をもぎとりたい。

(あなたに勝って…。変わるんだ。あの頃の、弱かった自分から)

 欣秀の目に恐怖はなかった。真玲が抜き放った、物干し竿の切っ先が向けられても。


(…なんて、迷いのない目なんでしょう)

 真玲の前には、正面からこちらを見据える、堂々たる男がいる。刀の切っ先を向けても、全く物怖じせず、同じように刃先を返してくる戦士が。

(きっとその強さの根底には、心の強さ、というものがあるのでしょうね。

 …私にだって)

 ただ単に手合わせをした、前回とは違う気持ち。”更なる強さを得たい”という想いが、真玲の芯に湧き上がる。

(私にだって、得られる筈です。この一戦で、それを、勝ち取ります)


挿絵(By みてみん)


 函館山は、ほぼ全方向を海で囲まれた山。

 日没、気温差が激しい時間になると、その山頂には霧もかかりやすい。

 西日が強くなるにつれ、二人の間に靄がかかり始める。


 その揺らぐ景色の中で、二人の刃が、橙に光る。

 再び雲が覆い始める、北の大地で。風の音が起こり始めて。

 向かい立つ二つの影が持つは、同じ志。

 それは、まるで絵画の如く、美しい瞬間であった。




 ビュウ、と吹く風が、一瞬、止んだ時。

「っ」

 欣秀が駆け出した。

 すぐさま、真玲が刀を振りかぶる。

 恐れを知らぬ彼なら、この距離は一瞬で詰めてくる。早すぎとも思えるタイミングで刀を振らねば、懐に入られる。

 相手を信頼しているからこその、容赦のない横薙ぎが、欣秀を襲う。


 完璧にタイミングを合わせられての斬撃。躱すのは難しい。だから欣秀はセオリー通り、片方の刀でそれをいなす―

 ことはしなかった。


「っらあ!」

 思い切り腰を捻った欣秀は、そのバネを開放し、両の刀を思い切り物干し竿に叩きつける。

 ただ刀を受けるだけの動きにしては、過剰ともいえる運動量。

 しかし、これほどの力が必要なのだ。真玲の恵体に対抗するには。

「!」

 そしてその努力は、確かに報われた。

 前回は馬鹿力に負け、そのまま振るい飛ばされてしまった真玲の斬撃が、止められる。

(よしッ…!)

 "受ける"のではなく、"ぶつける"。真正面から、本気で押し返す勢い。

 実際に通用するか、賭けであった欣秀だったが。目論見が通り、その足に弾みをつける。


 真玲は一瞬驚くが、すぐに刀を返し、袈裟切りで追撃する。

 それをまた、思い切り体のバネを使った動きで、欣秀は弾き返す。

(あれだけの動きをしながら、体勢が崩れない…!)

 真玲は弾かれるたび、間髪入れず次の太刀を叩き込むが。すべて、弾かれる。

 豪快な振るい方を連続して耐えうる、その体の柔軟性と剛性にも驚くが。

 たったの一回でも空振りしてしまえば、たちまち死に体になりかねない、無謀ともいえる振り回し。それを続ける覚悟に、圧倒される。


 太刀を受け損ねれば、死。

 その紙一重の綱渡りを、欣秀は駆け抜ける。

(右、左、右袈裟、右斬り上げ、また左薙ぎ―!)

 決死の覚悟で、絶対に真玲の斬撃を見逃さずに。

 鳴り響く金属音は、一定のリズムを奏で始める。欣秀はそれに合わせ舞うように、時に体を回転させるほどの勢いで、進軍する。

(ッ唐竹―!)

 不意に、真玲が物干し竿を頭上に振りかぶる。

 振り下ろされる一撃に向け、欣秀は二刀を思い切り横へ振るう―

「!?」

 響いたのは、金属音ではなく。

 重々しい、風切り音だった。


 フェイントだった。真玲はリズムを崩すことで、欣秀の空振りを誘ったのだ。

 物干し竿は未だその頭上にあり、そしてその刃は、片手の指で掴まれている。

(しまった空振り―!)

 大振りをした後の、隙。

 そこへ、指を離され、デコピンの要領で弾みをつけた大太刀が振り下ろされる。

 刀で弾く余裕はない。体を避ける時間もない。

 欣秀は、とっさに片腕を頭上に掲げ―


 少しばかりの、血しぶきが舞い上がった。

 恐ろしい速度で落とされる刃を、欣秀は腕でなんとか逸らし、頭への直撃を免れる。

 代償に、なで斬りにされるかの如く腕の皮が剥けた。

「~~~ッ!!」

 凄まじい痛みが脳へと伝わる―

 …前に、欣秀はまた体をねじった。

「アアアアア!!」

 再び轟音を上げ、二つの刃が真玲に襲い掛かる。

「!?」

 加えた筈の損傷。

 その余韻を感じる間もなく再び踏み込まれる姿に、真玲は思わず足を下げる。

(信じられません…これが、心の強さだというのですか―!)

(こんな痛みで止まるほど、俺の目指すものはちっぽけじゃない―!)


 止められない。

 抑えるどころか、より勢いを増す旋風は、確実に間を詰めてくる。もはや、真玲の太刀を欣秀が受けるというより、真玲がその連撃を凌ぐ形となっていた。

 真玲が押される、前回では考えられなかった光景。だが、いつまでも呆ける彼女ではない。

 目まぐるしい閃光が飛び交う中、物干し竿が、また不意に。今度は、真玲の顔脇へと引かれる。そして次の瞬間、その切っ先が真っ直ぐに欣秀へ迫る。突きだった。

(舐めんな!)

 また、タイミングがずらされた攻撃。欣秀は、二刀でそれを打ち上げる。物干し竿は、あっけなくその軌道をそらす。あっけなさすぎるほどに。

 それもフェイントだった。

 突きを放った物干し竿は、片手でしか握られていない。

 もう片方の手は、握り込まれ、真っ直ぐに欣秀の顔面へと向かっている。

(距離を詰めて徒手空拳で攻めます―!)

 刀を振るうには、距離が詰まりすぎている。欣秀はとっさにそのストレートを、肘でいなす。

 すぐさま、本差の切っ先を返し、柄頭を真玲の腹部へと突進させる。

 真玲もまた、それを柄で弾く。

 間髪入れず、脇差が真玲の脇腹に薙がれる。脇差を握る腕を押さえ、それも止める真玲。


 そのまま体を倒し、真玲は回し蹴りを放つ。欣秀の頭部直撃コース。

 とっさに本差とそれを掴む腕で、頭をカバーする欣秀。しかし完璧に遠心力を加えられたその一撃は重く、体勢を崩される。

 …ので、その倒れる間際に、真玲の腹を足裏で蹴り抜いた。

 ブーツ越しでも感じられる、芯をとらえる感覚が走る。大当たりである。


「っ!」

 真玲は後ずさりし、腹を押さえて膝をつく。欣秀も軽く飛ばされ、手すりに身を打ち付けたが。こちらは軽傷。

(このまま決める―!)

 欣秀はまた真玲に突進し、両の刀を振り回す。

 いつもの本差のリーチで牽制をし、懐に飛び込んで脇差で決める―という戦術は、そこには微塵もない。

 きめ細かな闘い方では、真玲に勝てない。欣秀は、袈裟、唐竹、薙ぎ、逆風―ありとあらゆる斬撃を、二つの刀で、荒れ狂う嵐のように複雑に繰り出す。


 息がまだ整っていない真玲は、物干し竿を振るわず、驚くべきことに、それらを全て見切って躱す。

 あらゆる角度から襲い来る二つの刃を、紙一重のところで、最小限の動きでかわす。恐ろしい動体視力が成せる業。

 加えて真玲の心には、徐々に熱が沸き起こり始めていた。

(こんなことで敗けていては…。私の気持ちだって、こんな程度ではない―!)


 もう、1分ほど刀を乱舞させているのではないだろうか。さすがに、欣秀に焦りが出てくる。

(なんて反射神経だよ…!)

 一撃も当てられない歯がゆさもそうだが、そろそろこちらのスタミナが尽きてくる。

 欣秀は、勝負を仕掛ける。

 体を思い切り反らせながら、真玲に向かって飛び掛かった。

 そして体重と、反らせた体を戻す反発力を加えて、二つの刀を交叉するよう振り下ろす。避ける軌道はないはずだ。

 真玲は…、ようやく物干し竿を構え、欣秀の重い斬撃を正面から受け止める。

 …受け止めつつ、その衝撃を、後ろへ転がりながら流す。


 そのまま巴投げの要領で、欣秀を後方へと跳ね飛ばした。

「ぅお…!」

 両の手に刀を握っていること。不意に天地が逆さまになったことで動転したことで、欣秀はまともに受け身をとれず、背に強い衝撃を走らせる。

(やっぱり痛てぇ…!)

 だが、悶えている暇はない。

 アドレナリンで痛みを抑えると、欣秀はすぐさま起き上がる。真玲は待ってくれない筈だ。

 と思ったが、真玲もまた息を切らして、立ち止まってこちらを見つめている。

 平然としているが、腹に鈍痛を抱えたままの、息が止まる回避行動、そして投げ―。彼女もまた、消耗が激しかった。



 お互いに、限界の状況。

 しかし肉体とは裏腹に、精神は極限まで研ぎ澄まされる。

 それに呼応するかのように、霧は消えゆき。互いの姿が、はっきりと目に映る。


 おそらく次が、最後の一撃。


 真玲は、息を吐き切ると。霞の構えをとる。

 初めて相対した時と、同じ光景。

 あの時と比べ、多少は土をつけられているが。その真摯な眼差しを向けてくれる様子は、往時と変わらない。

 美しいとまでいえるその姿に、欣秀は軽く笑い。

(…ああ、本当に。良い好敵手を得たなぁ…)

 脇差を、地面に置いた。

 そして両の手で、本差を構える。いつもの半身のセオリーを破る、正面をきった正眼の構え。

 更にそこから、刀を上げ――。守りを捨てた、火の構えをとる。

(これが、俺の答えです。桐谷さん)

 荒かった息を静め。欣秀は、丹田に気を練り始める。



(…本当にあなたは、強いですね。磐城さん。)

 姿勢も、眉一つすらも動かさない真玲。しかしその胸中には、誇らしさが湧き上がってくる。

(リスクを鑑みない、攻めを重視した戦法。

 ケガとか、死すらも厭わないというのでしょう…貴方の言う、守るもののためなら。

 …貴方と刃を交えられて、誇りに思います)

 この、湧き上がる気持ちを。

 どうやってぶつけたらいいのだろうか。

 真玲の眼差しが、ほんの僅かだけ下がる。


 それを、欣秀は見逃さなかった。

「っっっ――――!!!」

 思い切り息を吸い込みつつ、止め。猛然と真玲に突進する。

 足も、腕も、頭も、心も。

 全てを、この一撃に集中させる。

 後の事なんて、知ったことじゃない。

 この捨て身の一撃こそが、真玲の計算高いセオリーを打ち崩す、唯一の手段なのだ――


 あと、もう1秒も経たないうちに。その刃は振り下ろされるであろう。

 一瞬で距離を詰めてくる欣秀を前に、真玲は考える。

(また、あの捨て身の一撃と解釈。ならば、まずその太刀をいなし、返す刀で――)

「…」

 本当に、それでいいのだろうか。

 勝てるのだろうか。その理論じみた、太刀筋で。

「…!」

 目の前の戦士は、セオリーなど捨てて、全身全霊で打ち込んでくる。

 これはもはや、力とか、技術で研ぎ澄まされた一撃ではない。

 心の強さ、そのものを載せた一撃なのだ。


(私は…)

 私には、ないのだろうか。その強さは。

 全力でぶつけたい、想いは。



 いや、


 違う。


「ッ!」


 真玲はとっさに刀を脇に構え直し、陽の構えに。

 そして間髪入れず、地面が沈み込むかというほどの一歩を踏み込む。


(私にだって、負けられない想いがある―!)


 空振りのリスクなど、全てをかなぐり捨てて。


(強くなるんだ! 大切なもの、総てを守れる力に―!)


 持てる力、全てを振り絞り。


「とどけぇッッッ!!!」


 物干し竿を、空間が歪むほどの勢いで、横一文字に薙いだ。


 真玲の髪に、欣秀の刃が触れた、まさにその刹那。

 流星の如く重々しい塊が、疾走する黒衣の脇腹を捉える。

「ッッッ!!」

 欣秀の体は、折れ曲がり。

 慣性から離れられず、物干し竿にひっ付いたまま、真玲の横に振り回される。

「ォォォォォオオオ!!!」

 そのまま、真玲は体を一回転。

 まるでハンマー投げの如く物干し竿を振り抜き、

 欣秀を、遠方へと吹き飛ばした。



 宙に舞い、視界が天に満たされる。

 相変わらずの、曇り空だったが。

 紫に染まるその姿は、この地で見たどの雲よりも、美しかった。


 直後、激しい音とともに展望台の壁に叩きつけられ、そのまま地面に崩れ落ちる欣秀。

「く…っそ……!」

 思わず、悪態をつく。

 が、気を失う間際のその顔は、どこか満足したような笑顔であった。

(やっぱすげえや、アンタ…)



~~



「お体、痛みますか。」

「いえいえ、だいじょっゲホ、ゲホッ」

 展望台に座り、二人は体をいたわる。互いに傷はついたものの、敗者である欣秀のほうが、その損害は大きかった。声を出そうと息を吸うたび、脇腹が痛む。それを押さえる腕は、真玲に巻かれた包帯で覆われていた。

「前と、逆になっちゃいましたね~。…とはいっても、前回は運が良かったようなもんですし。こうも圧倒的に負けちゃったら…ハハ、私の完敗ですね。」

「そうですね。磐城さんの負けです。」

「はは…ほんと、ハッキリ言います…ゲホゴホ」

「申し訳ありません、手加減できず…。」

 俯いてせき込む欣秀を、真玲は介抱しようとする。が、それは笑って制される。

「いえいえ、むしろ、本気を出してくれて。ありがとう、って感じです。」

 息を整え、欣秀はすっかり薄暗くなった函館の空に、目をやる。霧はすっかり薄くなり、輝く光の束が、二人の顔を照らし始めていた。


「私…ほんとは、今日、桐谷さんと戦うの、恐かったんです。だって桐谷さん、メチャ強なんですもん。

 このあいだ勝てちゃったから、勝ち逃げしたかったなー、なんて思ったんですけど。」

「申し訳ありません。私が、無理に懇願してしまったばかりに。」

「いやいや! 違うんですよ。…当たり前のことに、気付いたんです。そうやって、大きい壁から逃げ続けてたって、成長なんかできやしない。変われない。大事なものを守ることなんか、できないって。」

「…それは同意いたします。ですが、それほどのケガを負うほどの挑戦となれば…。正直なところ、逃げたとしても。私は決して非難いたしません。」

「まぁ、確かにそうでしょうけど……。」

 真玲の顔が、出逢った時の冷ややかなものではないことに、欣秀は気付く。それは無表情でこそあるが、純粋に同じ修行者として、相手の意見を聞きたい…どこか、好奇心旺盛な子供のように見えた。

 だから欣秀もまた、包み隠さず、自分の考えを話す。

「…馬鹿なんでしょうかね。自分の体が傷ついて、済むんだったら。それでもいいんじゃないか、って思えるんですよね。

 桐谷さんはもう、ご存知でしょうけど。私、運動ができるわけでもないし。頭も良くなくって。

 昔っから、期待されていませんでしたから。価値ないって。そんな自分がケガをして、他の何かを守れるなら。上々じゃん?って。」

「磐城さん…。」

 冗談めかして語ったつもりだが、真玲は真剣に顔を向けている。それを和ますように、笑ってみせる。

「それにホラ、私、どうにも体は頑丈みたいですし! アハハハ。」

「磐城さんは、やはり、お強い方ですね。」

「…へ?」

 面食らう欣秀。不意に褒められたから、というのもあるが。真玲の顔が、柔らかく笑みを浮かべていたから。

「磐城さんは、強いお方です。仰るとおり。筋肉も多くないくせに、頑固で、大した策もなく、向こう見ずですが…。」

「褒められてんのかな…?」

「それでも、それをわかっていても。守りたいもののために、迷いなく駆け出せる。とても強い心を持っています。

 それは、何物にも代えがたい武器です。どんなに力があっても。技術を磨いても。前に踏み出す心の強さがなければ、勝負は制されてしまいます。…それを、教えてもらいました。」

 どこか、ホッとしたような。長年の憑き物に、ようやく別れを言えるような表情で。真玲は目を閉じる。

「磐城さん、貴方に会えて、良かったです。」

「……。」

 死力を尽くして、闘った相手。それが今、隣で、心の底からそんなことを言ってくれる。

 それは妙に艶を帯びており、欣秀の心臓を、何故だか高鳴らせる。


「私は…思えば、何故強くなろうとしていたのか。目的を見失っていたのだと思います。」

 陰る空を見ながら、真玲は話す。その瞳には光が映っている。

「本当は、周りの…大事な人に、迷惑をかけたくないから、強くなろうと思っていた筈なのです。

 私は…ご覧の通り。人付き合いが良いほうではありませんので。無用な争いも多く…。それを跳ねのけるために。他人が近寄りがたいほどの、強さに焦がれたんです。」

「…それはまた…すさまじい…。」

「ですが…いつからか、目的をはき違えていました。"自分が関わったら、より迷惑がかかる"。そんな風に思い、"守りたい"と想うこと自体から、目を背けてきました。手を出さねば、自分が関わらなければ、誰も自分のせいで傷つくことはない。

 そんな当然の建前を作って、逃げていたんです。力を振るう、責任から。」

「……。」

 力を振るう責任。

 誰かを傷つけるという痛み、恨みを買うという覚悟。

 岩手での夜を、欣秀は思い返す。

「…ですが、もう迷いません。決意しました。

 私が手を出すことで、また争いが広がるなら。それもまた、私が鎮圧します。

 何度も、何度だって。守りたいものを、永遠に守れるほどの強さを、私は手に入れます。

 やがて、どんな悪意も、手を出すことすら恐れられるほどの、強さを。」


 守るための、最強。

 それが、真玲が導き出した答えだった。


「迷いません。これからは、守りたいと思ったら、すぐに駆け出してみせます。

 欣秀さん。貴方のように。」

 崇高な決意を固めた真玲の姿は、美しかった。武人として、人間として。

 そんな眩しい人間が自分を褒めてくれるのだから、欣秀は途端にあたふたする。

「えっと……イヤイヤ! 私、そんな大した人間てワケじゃ…ハハ」

「自信を持ってください。」

 真玲はやや不服そうに向き直り、その顔を近づける。

「あなたは、私を変えてくれました。あなたは無価値なんかでは、ありません。」

 意外にも、子供っぽく意地を張って主張する真玲。だが欣秀は、異性の顔を目前にして冷静でいられるほど、無垢ではなかった。

「はは、あははは。そーですか。じゃあ、そういうことにしときます。」

 たまらず逃げるように立ち上がり、展望台の手すりに身を寄せる。

 真玲に、女性を意識してしまったのもあるが。

 それよりも本当に、嬉しかったから。その照れ隠しであった。

「…こちらこそ、ありがとうございます。」

 ついこの間まで、見ず知らずだった人に。共に研鑽する旅人で、尊敬に値する武人に。”無価値じゃない”と、言ってもらえた。




挿絵(By みてみん)




 雲は晴れ。見下ろす函館の街は、燦然と輝く。

 涙を浮かべる欣秀の目にとって、その光は眩しすぎた。




~~




津軽海峡フェリー、函館ターミナル。

早朝の澄んだ風に、欣秀は頬を撫でられる。

「ほんの数日だったけど。おもしろい経験をさせてもらったよ。ありがとねえ、磐城くん。」

「こちらこそ、黒田さん。いろいろとお世話になりました。今日も、こんな早い朝なのに見送りに来ていただいて…。」

「はは、少年と違って暇なもんさ。お気になさらず。」

 最後の最後まで、黒田は屈託なく笑う。

「私だって、社会人になって旅する暇人ですよ。…というか黒田さん、前から思ってたんですけど、私、"少年"、なんて歳じゃないですからね?」

「なに、好奇心を絶やさず、冒険ができるうちは。誰だって、輝ける少年さ。」

 本州に戻っても頑張れ、と。黒田は欣秀の肩を叩く。

「黒田さん…あの、あなたは一体、何をされてる方なんですか…? 顔が広すぎますよね。」

「なに、ただの老いぼれさあ。北海道が大好きな、ただのジイさん。…あんま詮索せんどくれ、恥ずかしい。」

「…はい。」

 何もかも知ってしまうよりは、謎があったほうが魅力的なのだろう、この人は。そう、欣秀は笑い、軽く黒田に頭を下げる。


「…桐谷さんは、まだ北海道に残り続けるんですね。」

「はい。もう一度、寄りたい場所もありますので。磐城さんに教えてもらったことを念頭に、もう一周してもいいか、と思います。」

 黒田と共に見送りに来ていた、真玲。夏にかけて行けるエリアも広がるので、まだこの地に滞在するとのことだった。

「ほんと、逞しいですねえ、桐谷さんは。こっちのほうが、いろいろと勉強になりましたよ。」

「…。」

 少しためらったのち、真玲は小包を差し出す。

「…この前、お会いした方が。仰っていました。旅をする人は、次々と新しいものに出逢いますから。古いものは、忘れてしまうかもしれない…。

 だからこうして粗品を渡せば、たまに思い出してくれるのでは。と。」

 手渡されたそれは、雪の結晶を象った根付だった。

「おお…! ありがとうございます。…でも、桐谷さん。私は絶対に忘れませんよ。」

 しばし考えたのち、欣秀はそれをロケットⅢのキーに飾る。

「勧められて寄った、旭川の雪の美術館で購入したものです。

 …氷の結晶は、とてつもなく冷たい、極限の環境でも。己の姿を、力強く保っています。

 磐城さんには、その強さを。どうか、持ち続けていただければと。」

「はは。私はそんな、強くありませんって…。」

 欣秀にとってはどちらかというと、その冷ややかながら美しい姿は、真玲をよく象徴するものであった。たしかにこれは忘れられないだろう、と苦笑する。

「困ったな…私も何かおかえしを…あ、そだ。」

 欣秀もまたバックパックをあさり、手鏡を取り出す。

「これはですね、岩手で買った、螺鈿らでん細工です。キレイでしょ? 男の私が持つより、桐谷さんが持ったほうが。コレもきっと喜びますよ。」

 両手で受け取った真玲は、興味深げにそれを眺める。

「……もっと、身だしなみに気を付けろ、ということでしょうか。」

「ああ、いやいや! そんなつもりじゃ…! ん? いや、そうなのかな…?

 嫌味じゃないんです! むしろ逆! 変なこと言いますけど、桐谷さん、かなりの美人さんなんですから! もっと意識しないと、もったいないですよ!」

「……私には、あまりそういったことは…よく、わかりませんが。」

 慌てて弁解する欣秀から、少し視線を外し。

「…ありがとうございます。」

 ややか細い声で、礼を言った。

 昨日とは打って変わって、珍しく自信のなさげなその姿を、欣秀は励ましたくなる。

「…桐谷さん。人付き合いが苦手だから、無用な争いが起きやすい、とか仰ってましたけど…。私から見れば、あなたはひたすら高みを目指す、すごい魅力的な人に見えますよ。

 昨日のお返しですけど。もっと自信もってくださいね。」

 しかしその言葉は、かえって真玲の胸をこそばゆくするだけであった。

「…また、会えますでしょうか。」

「んー。まぁ、どこかで。連絡先も、交換しましたし。」

 曖昧に答える欣秀。

 実際、一期一会の旅なのだ。また会えるという保証は、なかった。

 その対応に、真玲は僅かに不満げな顔をして。今度は、空の手を差し出す。

「シェイクハンド、です。また、会えますように。」

「あ……。」

 欣秀の中で、"会えたらいいな"という想いが、"会いたいな"というものに変わった。

「ええ。ぜひ、会いましょう。」

 今度は目をそらさずに手を取ってみるが。いざ触れてみると、やはり気恥ずかしくなって、欣秀は強張ってしまう。

「うんうん、いーねえ、青春だねえ!」

 その締まらない別れを、黒田だけが余裕の笑顔で見守っていた。



~~


“ボォーーーッ”


 汽笛が鳴る。


 甲板から欣秀は身を乗り出し、埠頭に手を振る。同じように手を振ってくれる、二人の友に。

「たった一人のさすらい旅なのに。こんな…見送ってくれる人ができるなんてなぁ…。」

 目頭を熱くする間にも、その影は、埠頭は、北の大地は。どんどんと遠ざかっていく。


〝「少年。北海道は、どうだった。君の目に、どう映った?」〟

 ロケットⅢに跨り、デッキに乗り入れる別れ際に、黒田に言われた一言を思い返す。


 欣秀は目を拭い、大声で叫んだ。


「最高でしたぁーーーー!! ありがとうございましたァーーーーー!!!」


 過去を想い、己を確かめ。新しい強さに焦がれ。

 傷を負うことで、友を得て。

 喜びを絶叫させながら、駆け巡った北の大地。


 自分とはどんなものなのか。成すべきことは、何なのか。

 それを、あらためて教えてくれた。


 絶対に忘れるわけがない。

 北海道の空に、もう雲はなかった。




挿絵(By みてみん)

ビジュアルノベルにしたものを作ってみました↓

https://freegame-mugen.jp/adventure/game_12647.html

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