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流星群の夜に  作者: 影津
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ゴーストタウン(タイムリープ三回目)

 花の甘い匂いと火薬の臭い。また目が覚めた。いつもと同じ朝だがいつもと違う。今度はよく感じようと鼻腔に空気を溜め込む。 


 花の甘い匂いはメアリおばさんのよく使う香料のベルガモットのようだ。だがすぐに匂いが錯覚であると気づいた。それからさきほどのことも、よく思い出そうと指や足の感触を確かめる。


 焼けるような痛みはすっかり消えて草原の葉っぱが足の指をくすぐった。裸足でこの後靴を拾おうとする。また繰り返しだ! 俺たちみんなこの時間に閉じ込められている。俺たちみんな本当に死んでいるのか!


 じれったくなって靴より先にユーリを振り返った。


「飛ぶんじゃなかっ」


「飛ばねぇよ」


 ユーリが言い終わるまでに遮って、靴を履く。泥の池にも飛び込まない。

 前回で分かったことがある。俺たちの死因は必ずしもペルセウス座流星群の落下ではないということだ。


 それともう一つ。このウォーデンの町は時間に隔離されていて立ち入ることのできないエリアがあるようだ。それを越えると流れ星が落ちるまでの時間その場所に引き留められ身動きが取れなくなり死を免れることができなくなるということ。


 これらのことから俺は今地獄にいるのと同じだと気づいた。


 仮定するならば俺たちはもう現世で一度死んでいるのではないだろうか。そのことに思い至って今度はユーリに抱きついた。


「急にどうしたんだよお!?」


 何か謝らなければ。だけど俺たちの何が悪かったというのか。


「今度は死なせない」


 心にそう決めて一分足りとも無駄にはできないのでユーリを引っ張った。まず隣町アーソーンに行けないというのならあの町のことについて調べなければならない。何故七年も交易がないことに誰も疑問を抱かないのか。


 走りながらユーリに聞いたら、アーソーンは、七年前から人の姿が見えないということ。ゴーストタウンにこちらから人を送る意味がないし、勝手に取り壊すわけにもいかないので放置されている。人々がどこに消えたのかはウォーデンの町の誰も知らないと言う。


「じゃあ、ある日突然人がいなくなったのか」


「それは分からない。だってそんなことあるわけないだろ。きっと人が何人か消えて、残りの人は町を捨てて逃げたんだ。近くには林や森、洞窟があるし新しく町を開拓しに行ったのかも」


 何故かユーリは自信ありげだ。


「それともう一つ聞きたいんだ。変な話なんだけど、ここは時間が止まってる。今夜俺とお前、町のみんなもペルセウス座流星群を見るんだけど。ほかに何か変わったことはないか?」


 さっきの一連の流れでユーリから得た大きなヒントはこのループの原因が流れ星ではないということだ。


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