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流星群の夜に  作者: 影津
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二回目の朝(タイムリープ二回目)

 花の甘い匂いと火薬の臭い。また、目が覚めた。いつもと同じ朝だがいつもと違う。足の指の間に草の感触があり、ベッドではなく草原に裸足で立っていることに気づいた。


 さっきと同じだ。さっきもこうして目覚めたのだ。じゃあ、俺はさっきの流れ星が落ちてきて死ななかったのか? 


 ユーリも? メアリおばさんも? 


 いや、死んだからこうして前の時間帯に戻ったのか? 俺は次に起こった状況を思い出してみる。靴を見つけた。


 拾おうとしてユーリが声をかけてくるかもしれないと振り返るとユーリが急に振り返った俺に少し躊躇した様子で「飛ぶんじゃなかったのか?」と聞いた。


 さっきと少し違っている手応えを感じたが、あえて先ほどと同じことを言って確かめてみることにした。


「飛ぶって何を」


 俺の曖昧な態度に腹を立てたユーリが尻を蹴飛ばそうとするので、避けるとユーリが泥の池に落ちた。俺はさっきと微妙に違うことが起きたので納得と同時に高揚感もつかんだ。今は流れ星が落ちてくる日のできごとであり、状況は同じでも違う選択を行うことができる。


「臭いし、ミミズみたいな味だ」ユーリが泥から上がってきて俺と似たような感想を抱いたことに関心していると、俺を捕まえるなり同じ目に合わされた。


 さっきと立場が逆ではないか。ぞっとした俺は慌てて泥から這い出ると、こいつとは小一時間も遊ぶつもりがないことを態度で示した。


「どうしたんだよ。顔が青いぞ」とユーリ。


 本来なら泥で一時間潰して、後は川で服を洗うはずだがそれではまた流れ星が落ちてきてしまう。


「昨日の喧嘩まだ怒ってんの?」そういえばユーリはこのおかしな現象に気づいていない。俺の昨日は流れ星の記憶だというのにこいつの言う俺と喧嘩した昨日とは一体いつの日のことを話しているんだ。


「今日は何日なんだ」


「さっきから何寝ぼけてるんだよ。仲直りの証にこうして――」


「待て待て、はっきり教えてくれ」


 ユーリは仏頂面で明らかに苛ついている。


「八月二十一日」


 心の中で反すうしてみたが、あまり気持ちのいい数字ではない。でも具体的に何にわだかまりを覚えたのか分からない。何にしろこの日の時間が限られている。もしくは時が止まっているのか。この時間から抜け出せないのか。


 ユーリだけは救えたと思っていたのに。脳裏にリフレインした言葉は自分の言葉だが自分言葉ではないような気もした。ただ焦りで背中がぐっしょり泥と混じって酷い悪臭がする。


「確かめよう」


「何を?」


「いいから来てくれ」


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