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流星群の夜に  作者: 影津
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ダイナマイトの空き箱

 とにかく身体は一つなのだからおじさんかおばさんどちらかしか追えない。メアリおばさんとは一回目のループで行動を共にしたのだから、今は炭鉱へ行く。


 炭鉱はすぐ近かったものの、入口に着くと日が暮れはじめた。またユーリが遠慮気味に念を押してきた。


「メアリおばさんはきっとコリーのこと快く思ってないと思うよ。今ならまだ引き返せる」


 どうしてそうメアリおばさんのことを悪く言うのか? 俺が不服そうな顔をしていたのかユーリは俺を小突いた。


「昨日喧嘩した後だってどうして服が汚れたかとか俺のことでお前がぶたれてないか心配してたんだぞ本当は」


 俺にはユーリのいう喧嘩のことが分からないのでメアリおばさんが俺を殴るような人じゃないとだけ言っておいた。目が怒っていたがユーリは何も言い返さなかった。


 炭鉱の中は真っ暗で入口にあったランタンを拝借したが、蝋燭が短いので長居はできない。地図にある一番広いエリアに行ってみた。


 ツルハシや、バケツ、ヘルメットが無造作に散らかっていて、廃坑になって長いみたいだ。ほかに見つかったものは木箱がたくさん。この木箱は空だが表面には埃がかぶっていない。誰かが中身を持ち出したのか。側面にはダイナマイトと書かれている。


 まさか、俺たちはダイナマイトで殺されたのか? もう中身がないということは既にギルおじさんの手に渡ってしまっているのか。青ざめた俺にユーリは黙って見ているだけだったが、意を決したような難しい顔をしている。俺に意見するのは珍しいことだった。


「メアリおばさんはきっと今夜も君を殴るに決まってる。だから今日は流れ星を見に行こうかって君を連れ出そうと思ってたんだ。なのにこんな真っ暗なところでダイナマイトの箱なんか持ってるんだもんな」


 ダイナマイトの空き箱とユーリを交互に見て俺は、ユーリに申し訳ない思いや何かメアリおばさんのことでお互いの認識がずれていることに違和感を覚えつつ、このループでの重大な局面が訪れたと実感する。


 だが俺からそれをユーリに問いただすのは何か酷なものが潜んでいるに違いない。ユーリを俺は傷つけてしまいそうで怖い。そのとき脳裏にあの影の声が聞こえた。


《オマエガヤレ、オマエガヤレ、オマエガヤラナイナラ、オレガヤルシカナイ》


 影が炭鉱までついてきていると直感した。姿は見えないが俺を脅す声は怒りで満ちている。


 きっと俺を殴りかねない。


 だけど影の正体はもしかすると俺のよく知るものかもしれない。俺に何をやらせようとしているのか? いや、これは過去だ。俺に何をやらせようとしたのかが方が正しい。


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