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冷たい海  作者: いっき
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冷たい海

 弦を弾く爪から零れる旋律は、澄み渡る冷たい空気を震わせる。世を照らす月の灯りはこの旋律と調和して、果てなく広がる冷たい海の波紋となる。

 海に落とされしその旋律は深い底に届かんと震え続けてただ一つ、その魂へ贈る調べとなる。この世から姿を消した愛する者。だからこそ、最もこの調べを伝えたい。永遠の生を与えたい、最愛の者……。

 贈る調べは海の底。眠る魂を青白く輝かせる。決して消えることのないように。冷たく暗いこの海に、封印されることのないように。

 

 絶え間なく贈り続けるこの箏奏は、生と死の狭間を曖昧に、箏を奏でる自らを冷たく薄く透明にする。

 それでも、いつまでも。この爪は弦を弾き続ける。夢を見るその魂に永遠の生を与えながら。


 満月は遥か彼方、その水平線に沈みゆく。海面に光り輝く永遠の旋律を伸ばしながら。眠りから醒めんとする魂に最大の光を与えながら。

 透明となった自らは、月と海と……贈る調べと一体となる。自らの魂を込めたこの箏奏は最愛の、その魂を呼び覚ます。

 呼び覚まされし魂は、眩い月を揺らすほどに透明な歌声を響かせる。その歌声は贈る調べと調和して、果てなく広がる海を永遠に青白く輝かせる。


 月は海は、この調べは、彼女に永遠の生を与えるであろう。たとえ、自らの生が消えてなくなる日が来たとしても。

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