酒井家の10月1日(酒の日)
酒井家にーちゃんねーちゃんおとうといもうと・に起こった10月1日問題。
ティーンズラブ的な内容です。 @短編その52
★ タイトル変更した。ティーンズラブはええぞ。
ティーンズラブって、酒がきっかけで始まることが多いよね。
普通お持ち帰りされて、やり逃げされることが多いのに、ドリーム展開。
さすが、ティーンズラブ界、すげえ。
長男・栄side ************
「うわ」
となりに飲んだくれの女が寝ていた。すっぽんぽんで。
昨晩ちょっと飲んで行こう、なんて思わなければよかった・・・
俺は酒井栄、30歳。独身。ちょっと有名な企業の課長。有能なので30で課長なのが自慢だ。
昨夜、同じ部署の同期である毛利葉子といきつけの店で遭遇、初めてふたりきりで飲んだ。
これがまた楽しかった!
くそ部長をこき下ろし、社長が最近派手なカツラを購入して地毛と色が違うから『段差』とか、ふたりで大笑いして、酒が進む進む・・・
会計を済ませ、タクシーに乗ったところまでは覚えているんだ。
ここ、どう見ても俺んちじゃ無い。
ラブホでも無い。
多分、毛利のうちだ。彼女の性格からして、こういうきちんと整頓された・・居心地いいな・・って違う!!
うわあああ・・・会社のおんなと同衾だけは避けてたのになぁ・・
はっ!!本当にしたのか?した感じはするんだが・・
ご、ゴ○!!俺、持っていたけど、使ったか?!俺は慌ててベッドから這い出し、バッグを捜す。
ミニポケットに入れている・・あ、そうだ、ゴミ箱・・・俺のゴ○の色だな?パッケージも俺が買ったのと同じだ!
でも毛利の彼のかもしれん。まだ毛利、寝てるな・・・起こすか。
6時か。携帯で地図検索・・○事駅近くだな。俺んちから意外と近いな。家に帰って着替えも出来るな。
逃げるか・・・
でもこういうのって、マンガだと女が先に起きて、男を置いて帰るってシチュエーションだな。
男が帰ると、いかにもやり逃げだな。
会社の同期で部下だ。逃げると後々困るな・・・えーーい!!男は責任ももてないなら誘ってはいけません!!
お覚悟案件になるくらいなら、自首します。
「おい、毛利。起きてくれ」
「にゅ・・」
むにむにと奇妙な声を出す。30の女が出す声か?
あ。昨日、すげえ可愛い声、って。おお、覚えてたぞ、俺!!
やっぱりやることやってるぞ!!ますます逃れん。
「おい、毛利!・・・・よーーこちゃん、よーーーこちゃーーん。そろそろ起きてくれないかな〜〜」
耳元で囁き声よりは大きめに声を出す。
「は・・?あ・・・酒井くん・・おはよー・・・さ、か・・・・えええええええ!!!」
「おお。やっと覚醒したか」
「わ、あ、え、ひええええ・・・酒井くん、もしかして」
「おお。抱いたぞ」
「どひぃいい」
「30女がそんな情けない声出すか。冷静になれ」
「あんただって30じゃん!!」
「おう。お前んち、ゴ○あった?」
「ないわよ」
「彼氏は?」
「いたらこんなことしないわよ!いたら家にあげるなんてしないし」
「男日照りとか言って嘘泣きしてたからな。俺はどうだった?」
「・・・・・・・・・」
急に黙った。ん?なにか考え事・・・ほう?
「おお、思い出しましたか。顔が真っ赤ですね。俺のテクはご満足いただけましたか?」
「やだーーーーー!!ばかーーーーー!!」
枕アタック炸裂。ちっとも痛くない。
「照れるな。こっちまで照れる。合格だったか?」
「図る目安対象なんかいなかったわよ」
「え。やっぱし初めてだった?まだ痛いか?」
「(やばっ)・・・・ん・・」
「そうだよな。どうもおかしいとは思ったんだよな」
お?むっとしてる?何故だ。
「どこらへんがおかしかったんでしょうねえ?教えていただければ、今後の参考にさせていただく所存」
もう笑ってしまうほど挙動不審な彼女が、日頃の落ち着いた彼女と違ってて、なんか新鮮で。
「だから、経験ないのかなーって」
「どの辺で?と言うかどうして分かるの??」
「きつかった。そして、痛がった」
「ひゃっ・・」
「痛いか?まだ」
「・・・・」
そして上掛けを剥ぐり、シーツを見る。あー・・汚れてる。
「あ。ゴメンな?初めてとは思わなかったから、ちょっと荒っぽかったな。でも入れる前にちゃんと一回はイかせたし、十分濡らし」
「ひええええ、言うな見るなーーー!!」
「あだあ!」
毛利がシーツを強引に剥がすから、俺はベッドから転がって落ちた。
彼女はすっぽんぽんなまま、シーツを抱えて洗面に駆け込んだ。
少し後にシャワーの音がする。
・・・うーん。なんか、なんかな?
不思議とこういうの、いいなって思ったんだ。
「スーツなら同じでもいいわね」
「下着を替えたいけどな。靴下とネクタイは替えを持ってるんだけど」
「私の履く?」
「履けねーよ。いや、履けるか?女のパンツってすごく伸びるし、お前ケツでかいし」
「なんだとこらー、そのケツになにしやがったー」
「キスマーク4つほど付けといた」
「ぎゃあああ」
「俺を言い負かそうとは、片腹痛いわ」
よーこちゃん、手早く朝食を作ってくれて、俺はシャワーを浴びて汗だけ流して昨日の服を着る。
そして二人で食卓を囲む。
うわぁ〜・・和朝食とか。手間だろうに。
わかめと豆腐の味噌汁。赤味噌が嬉しい。我が家は赤味噌派だからな。出汁はアゴか。へえ・・・
卵焼きは白だし味。俺んちは甘いの好きじゃないんだよな。卵焼きの横に、ほうれん草のお浸しまで添えてある。白ゴマがアクセント。そして、炊き立てのご飯。おや、ふりかけと『ご○んですよ』まである。いいよね、『ごは○ですよ』。
なにこれ。俺好みの朝食・・・
「よ〜こちゃんは和朝食派か?」
「またよ〜こちゃんって・・月水金はパン。火木が和。今日は木曜だから」
「ふーん」
「火木は弁当の日でもあるの。でも、お弁当分は酒井くんに出しちゃったのよねぇ〜」
「あ。悪い。ランチ、おごる」
「・・・・照れちゃう。ふたりでランチなんて行った事無いじゃないの」
おやおや。顔、赤いな。俺もなんか顔が熱い。同じになってるか?
「いいじゃん。会社のやつ、誰も知らんだろ、昨夜の事なんか」
「そうだけど。あー、今日仕事、ヘマしたら酒井くんのせいだぞ?」
ちらと、上目使い・・・うへ、可愛いな?30なのにさ。
仕事が出来る女で、俺と張り合ってた時期もあったけど、今は係長で俺の部下だ。
「上司として、というか同僚としてフォローしてやる。存分に失敗れ」
「やーよ!ミス無しミスって言われてるのに」
「誰だよ、そんなムカつくあだ名つけた奴」
「下の子たち」
女だけじゃ無いんだな、そういう事言うやつ。・・・ちょっと許せんな。庇護欲きました。
「本当、男も女も仕事出来ねーやつってクソだな。俺に言え。みっちり絞ってやる」
「えー。『酒井さんにちくったなんて、まるで彼女面しちゃって』って言われちゃうじゃん」
「言わせていいから」
「え?ちょっと」
「『私の彼ですが何か?』って言ってやれ。言わせてやるから、俺の女になれよ」
「ええええ」
「ダメ?」
今度は俺が上目使いをしてやった。おお。顔が紅玉並みに赤い。血管切れたらどうしようか?
うん。彼女がいい。昨夜の事、じわじわ思い出している。体の相性、凄く良かった。
大学から知っている彼女とは、12年近く一緒だったからな。
気心知ってるし、知り合いも丸かぶりだし、部署まで一緒だ。
話が合うっていうのは、一番いいんじゃないかなーー。俺のきょうだいとも顔見知りだし。
よーーし、囲い込むとするか!!俺のコミュ力を駆使してやろうかな!将棋でいうところの穴熊だ。
ちょうど今手が空いているし。半年後には嫁にしてやろう。俺も30だし、彼女も30だ。
次のプロジェクトまで、提案期間で手が空いてるもんな。グッドタイミングってやつ?
「という事で、覚悟しろよーこちゃん」
「よーこちゃん?!酒井く・」
「俺をえいちゃんと呼んでいいよ。さかえでも可」
「おとーとくん、栄次くんじゃん。被るよ」
「じゃあ、さかえさんって呼ぶんだなぁ〜〜?さあ、呼んでみたまえ」
「え・・」
「さあ、カマーーン」
「さ・・かえっ!さかえっ!!・・・さかえ」
「お。おう・・。よーこ」
「ひゃ、いっ!!」
「変な返事、ぷっ」
「なにおーー!」
あー、楽しい。気楽に話ができるのも、良い。
ずーーっと友達だった。張り合った時もあった。部下として良い関係だった。
もうワンランク、いや思い切り持ち上げて良いんじゃ無い?
「さあて、そろそろ行こう。遅刻するぞー」
「先に行ってよ」
「いいじゃないか。一緒に行って、見せびらかそうぜ」
「きゃーーー、無理無理無理ーー!!!!」
顔を真っ赤にして先に行く彼女に、俺は呼び止める。
「鍵、俺にもくれーー!無いから鍵掛けれないぞーーー!!」
「あ!はいーーー!!」
きゅるっとUターンして戻ってきた。
よーこの鍵、ゲット。ふふふ。
「明日、俺んちの鍵やるから」
「はぃ・・・押しが強いぃ」
「何か言ったかーー?さあ、行くぞ」
「課長だー・・」
「あははっ!」
面白いから手を繋いでみた。あー、よーこ脳血管切れそうなくらい顔が赤い。
慣れてもらわねば。チャ○ミーグリーンの爺婆に向かう岐路に来た?
会社に行ったら俺たちのオーラ?が怪しかったようで、同僚からどえらい聞かれた。
『なあ、お前、毛利さんとなんかあったか?』だって。あっれーー?
なんで分かるんでしょうねぇ・・・
顔が真っ赤な程度で分かるか?まだランチにも行ってないのに。
それに会社近くでは手を繋いで無いぞ?
「お前、すっげー毛利をチラチラ見てる」
「あちゃー」
俺でしたか。すまん、よーこ!
そしてランチに一緒に行った事で、確定された。いいよ、バレても。
そんなわけで、周りが勝手に囲んで、穴熊してくれました。あわあわしてるな?落ち着け。むふふ。
やーい、よーこ。もう投了したまえ。もう逃さないぞー覚悟しろー。
長女・栄子side ********
やばいやばいやばい。
昨日、超高級ホテルでレセプションがありましてな?お誘いがあって出席しましてな?
美味しいつまみ、シャンパンにワインに洋酒を飲み放題でしてな?
カクテルも流石に高級ホテル、美味いんでしてな?ぐいぐいいっちゃいましたよ。
勿体無いお化けに呪われた酒井家の人間ですもの。
バイキングにブッフェに飲み放題、もう腹一杯頂かなければと使命感に燃えましてな?
「酒井、大丈夫か」
誰かが私の名を呼びます。
「大丈夫!無問題!!あのおつまみ美味しそうです」
「まだ食べるのか。よく入るな、こんな小柄なのに」
「それなんて名前ですかー」
あー、酔っ払ってるかも?この声はー、誰だっけー。誰だったかなー。いや知ってる人ですよ。イケボの・・
「ブルスケッタだ。本当に入るのか?」
「食べますよー。ワインに合いそーな味ー。私は小柄ですが、兄と弟は180超えてますよー」
「そうか」
「さー、社長。シャンパンをどーぞ」
はい。私の上司、高坂社長ですー。名前は聖さんですー。でも年上ですー。40過ぎですー。かっこいいです。
だから私みたいな若造は、守備範囲では無い・・・私、28だったわー。アラサーだわー。守備範囲きた?
なんか・・・酔いが・・・うおお・・・目が回ってきた・・・
「俺はいい。本当、酒井呂律が変だぞ」
「・・・・」
「はっ!!酒井!!まだ我慢しろ!!我慢しろよ!!」
私の記憶はここで途切れている。酷い状態ですみません、社長・・
そして今の状況はというと・・・
隣に社長が寝ているーーー!!!!肩が丸見え。上半身、裸確定。
そっと上掛けを剥ぐって覗くと・・・わーーーん!!社長、パンツ履いてないよぅーーー!!
あそこがくたっとしてるよぅ・・でもくたっとしてるくせに、大きい・・
そっと上掛けを戻し、自分の体を見る。
裸だ。
見まごう事なくすっぽんぽんだ。
しかも・・・体になんか・・・赤い跡があるよ?キスマークって言うのかな?
ひえええええ・・・食べられたーーー!!!
社長!!社員に何してるんですかーーー!!
私は28歳、アラサーですよ?もっと綺麗な女の子にして下さいよーー!!
『うん、可愛いな』
昨夜、社長が耳元に囁いた言葉が、脳内でリフレインした!
しゃちょおおおおお!!もう、えっちーーー!!!
思わず社長の胸板に、ポカポカ拳で殴っちゃいました!
「肩にしてくれ。へなちょこ猫パンチめ」
がしーと両腕を回され、閉じ込められてしまった。
「はなせー」
「ははは。大人しくしなさい」
うわー、社長のイケボーー。笑い声だけで私をへなちょこにしてしまう。
・・・魔法使いか?
社長は42歳。だけど見た目30代に見える。若作りめ・・女の子にモテモテだもんね。イケメンだし。
むかー・・・ちょっとやきもちですな?今日はやいてもいいよね?
今日は金曜。会社あるから、だらだらと社長と同衾はやめなくちゃ。
「しゃちょー、起きませんか?」
「チェックアウトまではまだ時間があるぞ」
「そうだけどー」
「よし、もう一発」
「こらー」
社長凄くニコニコ顔です・・・時計は11時前です。
「もう一泊するからな」
「ばかー、仕事どーすんのー。さぼっちゃったよ!!」
「メール入れといたから。うん、可愛い可愛い」
「本当ぉー?」
「だからお嫁においで?美味しいもの、毎日食べさせてあげるから」
「迷うー」
「迷うことか?俺がおじさんだからか?」
「私だって、もうすぐ30だよー」
「俺なんか42だぞ」
「なんでその歳まで独身なんですかー?まさか、何か病気でも・・」
「馬鹿者。いいと思う女性との出会いがなかった」
「えー」
「本当だぞ?本当に出会いがなかったんだぞ!信じろ!」
「社長モテモテじゃないですかー」
「俺が良いと思う女ではなかったんだ」
「ふーん・・私みたいなちんくしゃ相手でいいんですかー?」
「うちで買っていたマンチカンに似ている・・特に顔」
マンチカン?あのダックスフンドの猫版ですか?!短足と言いたいと?
「マンチカンですか。短足と言いたいんですかな?」
「溺愛してたんだ。6年前の春にに死んでしまった・・そして4月に、お前が入社して、運命だと」
「馬鹿ですか?」
「えっこちゃんって名前だった」
私は子供の頃、えっこちゃんと呼ばれていた。今も母はそう呼ぶ。
やばい、運命感じちゃった。
「どうしてそんな名前を?」
「かわええ子からえっこになった」
あら可愛い、社長。お?社長の顔が近付いて、耳元に・・・
「えっこ」
「ぶっふぉ!!!」
イケボ攻撃、きたーー!!
42歳。でも大きな会社の社長、そしてイケボでイケメン、そしてエッチがうまい。
これは優良物件ですよね?ですよね?
「結婚、しようよ」
「しかたがないですねー。マンチカン、社長の家に住みついちゃいますよー」
「やった!」
そして、この土日で引越しを済ませて社長のお家に入居しました。
さすが仕事モードの社長は迅速です。
今は夫婦別姓もザラですので、暫くはこのままで。
そのうち社員に発表しようと。
マンチカンな私は、社長の膝に横抱きされてまったりするのです・・・
社長夫人よりはマンチカンでいいです。
次男・栄次side ********
やったぜ。
ヤったぜ。
酒でグテングテンにしてお持ち帰り。卑劣。
人として倫理観がちくちく胸を指すけど、もう手段は選べない状態だ。
ごめんね、亜李子ちゃん。
亜李子ちゃんは俺の幼馴染みの彼女だった。・・・3日前まで。
昨夜入った店に、亜李子ちゃんがカウンターでチビチビ飲んでいて。
最初俺を敵視していたんだよね。元彼の幼馴染みだから。
知ってるんだよ。
あいつ、亜李子ちゃんいるのに浮気してて。
俺は注意とか警告とか、してやらなかった。
別れてしまえって思っていたから。
俺の方が先に知り合っていたんだ。
ちょうど街であいつと出会して、俺が紹介しちゃったんだ。そのうち彼女にするつもりだったから。
俺が亜李子ちゃん好きなこと知っていて、あいつは先に告白して・・・取られた。
でもあいつ、俺から取るだけが目的だったからね。
1年よく持ったよ。
付き合い始めてすぐに、他の女と遊んでいたしね?
「ごめんね、知ってたけど・・言いづらくて。あいつに言ったんだけどね。浮気すんなって」
言いませんよ?俺をいい人に見せる演技くらいしてもいいよね?
俺から亜李子ちゃんを、あいつは取ったんだから。
あいつを悪役にしてもいいよな?そして、俺は全開の甘々モードだ。
ああ、あいつのために泣くな。
泣くなら俺の胸で泣きなよ。
俺は一筋だから。あいつみたいに泣かせないから。
会計を終えて、外に出ると『ありがとう』って言われた。
帰さないよ。
ひとりになんかさせないから。
俺が上書きするんだから。
そして俺んちに連れ込んで。
シャワーなんか浴びずに、速攻ベッドに連れて行って押し倒した。
・・・・え?
なんで?
初めて???
そして亜李子ちゃんが全てを告白したのだった。
なかなか俺が告白しないから、やきもち妬いてもらおうと思った?
で、それをあいつは承諾して、付き合うフリをした?
そのうちあいつが本気になって、付き合ってと言ってきたから別れて欲しいと言った?
そしたらあいつにストーカーみたいな事をされたり、強引にされそうになって、逃げていた?
俺に全部言おうとしたけど、あいつと交際している事になっているから言えなかった?
つまらない作戦を企てた、馬鹿な事をした、あいつを傷付けた、酷い女なんか・・・
店での態度は、俺を寄せ付けないように防御態勢だったから。だからあんなにつんけんして、睨んだのか?
涙をポロポロ零して語った真実に・・・
「こんなことする女なんか、好きになってもらえないと思ったから・・」
「うん。馬鹿なのはわかった」
「・・・」
「俺がちょっと勇気を持つだけだった。俺が馬鹿だった。だから亜李子ちゃん達を苦しめた」
涙顔の亜李子ちゃんは、くしゃくしゃになっているけど、それでも俺には可愛い。
「馬鹿な俺でもいい?亜李子ちゃん」
やっと腕の中に彼女がいる。
「ずっと大好きです。俺の彼女になってください」
腕の中の彼女はわんわん泣いて、刻々と何度も頷いて。
翌朝、あいつに二人で謝った。あいつが、
「一発、いや二発殴らせろ」
と言ったので、了解して気が付いた。しまった、あいつ、空手部・・・
痛てえ・・・良い音しました!!!
「暫くオレは笑えないから、声掛けるなよ」
「許してくれる気になったら、連絡してくれ」
こうしてあいつと暫く付き合いが無くなった。
俺がさっさと告白してたら、こんな事にならなかった。猛省だ。
「ごめんなさい・・・私がつまらない事を思いついたせいで」
「そうだね。反省してもらおうかな」
「・・どうすればいい?」
さあて、お約束、おしおき案件です。
「俺の事、もっと好きになってもらう。頑張ってね」
「はい!」
亜李子ちゃんを彼女にしたら、どこに行こうかとかずっと考えていた事に付き合ってもらおう。
亜李子ちゃんはケーキが大好きで、作るのも上手で。お弁当もいつも作って持ってきていて。
今日のお弁当は、生姜焼きのアスパラ巻きと、ソーセージ卵焼きにひじきの煮物。全部手作り!
おやつはブルーベリーとチーズのマフィン。凄いな!!
「あいつにも作ってやった?」
「一度も作った事ないの・・悪いことしちゃった」
ああ、ごめん。本当、済まんかった幼馴染みくん!!
付き合い再開したら、3回は奢る!!好きなものを頼んでくれ!!
というわけで、俺と亜李子ちゃんのキャンパスライフは続くのだった。
次女・栄美side ********
昨夜、年下の男の子と飲んだ。会社の後輩だ。時任喜理矢ってかっこいい名前だ。
26歳の誕生日を祝ってくれたんだよ。うれしーな!誕生日は10月2日だけど、土曜だからね。
1日早くお祝いしてくれたんだよ。
思わず嬉しくて、はしゃいで・・・調子に乗って飲み過ぎた。
「今日10月1日、知ってます?酒の日なんだそうですよ」
「おお、蘊蓄王ねー。知らなかったー」
後輩くんは有能で、多分今度の人事で出世して違う部署に行くと聞いた。
多分確定。
私の上司にならないからほっとした。上司になられたら、4年の頑張りが悲しくなる。
まあ優秀なんだから仕方がない。私の頑張りではダメだったんだ、羨むなんて・・・ううう。
飲んでやるーーー!!
だから遅くまで飲んでも良いように、栄兄のマンションへ泊めてと打診してある。良いって言ってたし。
彼女さんがいても大丈夫!栄兄のいえ、3部屋あるもん。タクシー乗っても二千円いかないし。
マン喫は寝にくいし、女性部屋が近くには無いからね。
だから全然安心して飲んでいたの。
「このカクテル美味しいですよ」
「はー。色も綺麗ーー」
「エメラルドミストです。僕も気にいっているんです。おすすめですよ」
「うん、キリッとして美味しいねー」
「ここのワインも美味しいですよ。カベルネ系のアルゼンチンワインで、カテナ・サパータ・アンヘリカ・サパータ・アルタ・カベルネ・フランって言う名なんです」
「長いね!!」
「最近の南米産ワインは本当、安価で美味しいんですよ」
「本当だ!さすが蘊蓄王〜〜」
「そして、シングルモルト。国産の山崎は日本の風土に合う味です」
ちょっとづつ飲んでいたのに、なんか、頭がぽわ〜〜んと・・・
今思うと・・・ちゃんぽんだったよね?
多種のお酒飲むと酔いが早いよね!どれも度数高かったし!!
でもいろいろお勧めしてくれるし、美味しかったから、ついつい飲んだ。
「起きた?栄美さん」
隣にいるのは・・・・後輩くんじゃん・・・
なんか、私抱きしめられてるんですけど?腕枕されてるんですけど?
しかも、なんか・・・下半身が、なんか、なんか・・・感触が・・変。
・・・・・・・・・。
もしかして。
もしかして!
嵌められた?
酒をちゃんぽんで飲ませて。
ぐてんぐてんにして。
嘘!
そんな後輩だったの?
人が信用出来なくなっちゃうじゃん!!
それに私は十把一絡げ、美人じゃ無いし、スタイルは平凡だよ?身長は姉は149なのに、私は166!
兄と弟はどちらも180センチ。それはいいか。
平々凡々な私を襲って何がしたい?
まさか、ドッキリ?罰ゲーム?
「何考えてるんです?罰ゲームでも、ドッキリでも無いですよ」
「心読まれた!!」
「僕、今度部署変わるんです」
「知ってた」
「部署変わったら、栄美さんと会えなくなっちゃうんで」
「そうだね」
あの部署に行ったら、本館に行く事になる。
本社ビルは双子ビルで、私のいる部署は第2館。滅多に会う事は無くなる。
「だから、もう栄美さんに告白・・・と思ったんですけど」
「はい」
「『またまたー。冗談はやめてくれくれタコラー』という謎生物ぶっ込んだギャグであしらわれると思って」
「あ、はい」
母がね、よく言うんだ。『やめてくれくれタコラー』って。昔の子供番組だったんだって。ググって。
「だからもう、強硬手段で体当たりで。栄美、好きだ。結婚してください」
「え!!彼女になって、じゃなくて嫁?嫁なの??」
「はい!!君に決めた!!」
「ひえーー、ボール無しでゲットだぜーですか?」
「僕、もう家も購入予定なんです。栄美好みに設計しますから!」
「凄いね、若いのにしっかりしているね。その半分でいいから、しっかりしたとこ欲しい・・」
「じゃあ、僕が仕込んであげますよ!ほらほら、僕みたいな優良物件、断る道理は無いですよね?」
「はい・・よろしくお願いします」
ぐいぐい来られて、つい返事してしまいました。
有能で出世頭で醤油顔。なんとなくイケメンで、中肉中背174センチ。ヒールもう履かない。
しかも、上手というか私に合っている。それ大事って友人が言ってた。
喧嘩してもしたら仲戻るって。
で、次の週末に親に合わせた。
「お前も?今金欠で式上げてやれない!」
だって。いやいいよ。二人だけ挙式、海外へ新婚旅行に行ったついでに済ますから。
え?栄兄と、栄子姉が結婚する?
写真見たら見覚えがある女の人だった。確か大学の同級生だったよね。
次に長姉のお相手の写真を見る。社長42だって!!いいの?って聞いた。
「いーの。聖さんイケメンでしょ?」
本当、30代に見えた。すごくイケメンだけど、長姉が惚れたのは声だった。
声聞きたいと言ったら、電話してくれた。マジイケボだった。くらっとしたーー。
笑っちゃう事に、話聞いたらきょうだい四人で10月1日になんか色々あった!!
で、長兄長姉が結婚式の代金の事で親に、
「親の金など当てにしない。老後に蓄えろ」
「聖さんが出すって」
長兄長姉二人が言う。さすが長男長女、しっかり者です。
二人とも高収入だしね。長姉に至っては、結婚相手が社長だもんね。
弟も可愛い・・え?めっちゃ可愛いぞ?!・・・彼女が出来ていた。優良遺伝子が加わるぞ!!やったね!!
「あんた。年下彼氏の気が変わらないうちに結婚してしまえ」
母と長姉が言ってきた。
あ、うん。
私の彼が一番普通の人だよね。
モテモテって感は無い。でも、既婚者は突然モテ期に入るらしいから注意はする。
そういうわけで・・・
私たちきょうだい四人にとって、酒の日が記念日になったのでした。
タイトル右の名前をクリックして、わしの話を読んでみてちょ。
4時間くらい平気でつぶせる量になっていた。ほぼ毎日更新中。笑う。
ほぼ毎日短編を1つ書いてますが、そろそろ忙しくなるかな。随時加筆修正もします。