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九十五話・番外編14 ミルナのライバル


ここはあるダンジョンの中......。


そのダンジョン奥の部屋にて、ポツンッと佇んでいる1人の少女がいた......。




「ここは...どこ?見た所、試練のダンジョンじゃないよね......?」


僕は目を開けて周りを見渡すが、そこは見た事もない場所だった。


「ええ!それじゃ僕、テレポートを失敗したって事なの?嘘ぉぉっ!?」


自慢の魔法の失敗に、僕は戸惑いと困惑に満ちた気持ちになって、

それを信じられないでいた。


「ハッ!?そ、それより、ライは...ライはどこっ!?」


僕はライがそばにいない事に気づき、急ぎ周りを必死に見渡すが、

どこを見てもライの姿がその瞳に映らなかった......


「ライ~ッ!どこにいるの~返事をしてよ!お願いだから...ねぇぇっ!

ライィィィィ―――――っ!!」


僕はそれでも諦めず、ライを見つける為に声を張り上げ、喉が痛い

くらいに大声で叫んでみるが、ライの返事や姿が僕の耳に返っても、

瞳に映る事もなかった...。


「そ、そんな...ライがどこにもいない...?」


僕はその事実に、ガクッと項垂れてしまう。


「ふふ...そんな慌てて、どうしたんです...ミルナさん?」


喪失感に落ちて愕然としているミルナの後ろから、突如、聞き覚えのある

誰かが話しかけてきた。


「い、今の声は...!?」


「ハイ、ハ~イ♪お久しぶりですね、ミルナさん♪」


「やっぱり、あんたか...セーファッ!」


僕は声のする方角へ顔を向けると、そこには見知った人物...セーファが

岩の上に座り、こちらをニコニコ顔でジッと見てくる。



こいつの名前は『セーファ・ゼット』


種族は今ではその数も少ない天使族。天使族は神の教えを伝える

象徴として昔から、人々から崇められている。


だが、こいつは天使族の癖に魔王軍に所属している裏切り者...

いわゆる、駄天使って奴だ...。


セーファとの初めて出会いは、前に戦った魔族の中にこいつが

参加していた時だった...。


その時にこいつに気に入られてしまい、その後スキを見せれば、今回みたいに

ちょっかいをかけてくるという、本当にウザさ全開のアホ天使だ。


見た目はいつもニコニコした優しい表情で軟らかい物言い...

そして、天使を名乗っているだけあって神々しさがその姿に滲み出ているが、

中身はゴテゴテの戦闘マニアで、その戦い方もえげつないからタチが悪い。


この駄天使野郎...いや、女だから野郎は変か...って、そんな事はどうでもいい!

こいつがここにいるって事は、つまり......


「僕のテレポートの転位をずらしたのは、あんたの仕業なのね!」


「ハイ、正解です♪」


ミルナの問いに、セーファが当然といった表情で悠々と返事を返す。


「それで、ライは!ライの奴はどこにいるのよ!」


「ライ...?ああ、あの子の事ですか。あの子なら行こうとしていた場所に

ちゃんと無事に転位していますよ!」


相変わらずのニコニコ顔をして、ミルナの問いにセーファが答えてくれる。


「その言葉...本当でしょうね!」


「ハイ、本当ですよ。私って、嘘はつけない性分ですので♪」


「そうだね、あんたって基本は天使族だものね...」


天使族って、良くも悪くも基本は素直で邪心がないっていうからね。

だからこいつの言っている事は、多分...嘘はないはず...。


「なので、信じてくれていいですよ!」


「そっか...ライは無事なのか...!」


ライが無事なのを知って、僕は安堵感に胸を撫で下ろす。


「あ!でも、あのダンジョンをライ一人で脱出できるかしら...」


「そっちの方も心配ないでいいですよ。あの子はミルナさんのお仲間に

救助されてた後、あなた達の拠点の屋敷に連れていかれましたから♪」


「僕の仲間?屋敷?ああ、ロザリーかモカのどっちかにか...。はあ...

ライの奴...あの二人に振り回されていないといいけど...」


僕はそれは十分ありえる展開だろうと諦め、取り敢えずライの無事を

素直に喜んでおく事にする。


「ん、あれ?そういえば、ライはまだ試練のダンジョンにいるはずなのに、

何故あんたが、ライのその後を知っているのよ?」


そうだよ!何でさっきまで僕と一緒にいたライが、ロザリー達に保護され

ちゃってるわけ!


「それは簡単な事です。さっきまでのあなたの時間と今の時間には、

少しズレがあるからですよ♪」


「時間のズレ...?」


僕の時間と今の時間がズレている......っ?


「ハイ!少なく見積もっても、あなたのテレポート後から今の時間とは、

数日のズレがありますね!」


「す、数日!?じ、じゃあ、今の時間は数日が経っている...って事なのっ!?」


セーファがのうのうと語る衝撃事実に、僕は目を丸くし喫驚してしまう。


「く...こんなふざけた誘拐紛いな事まで仕出かして、僕に一体なんの用だって

いうのかしら?」


「ふふ...!そ・れ・は・決まっているじゃないですか~♪」


セーファのふざけた行為へ怒りを露にしているミルナに対し、ニヤッと

口角を上げたセーファが静かに手を前へ突き出し、その手をバッと開く!


するとそこから大きな大鎌が現れ、それをぐるぐると振り回しポーズを決めると、

セーファは戦闘態勢に入る!


「ミルナさん...あなたをこの世から完全にほふっちゃう為にですよ♪」


「はは...本当わかりやすいな、あなたって...。でもまあ、答えはとっくに

わかってはいたんだけどね!」


僕は腰に装備していた杖を掴むとセーファに向かい合い、そして身を構えた。


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