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九十四話・これですよ、これ!


「うん...竜の国で王座を巡っての反乱が起きたらしく...そこから

命からがら逃げてきた竜の王女様と、クエストの最中に出くわしてさ......」


俺はあの時のミュン様との出会いを...ユユナの事は濁して、ロザリー達へ

詳しく伝えた。


「へえ...竜の王女様とは、そういう出会いだったんだね...」


「でもそうですか、竜の国の...竜の王女様...ですか......」


メイリが竜の王女の事で何かを思い出したのか、表情が神妙な面持ちに

変わっていく。


「ど、どうしたんですか、メイド長...?そんな顔をしちゃって...?

もしかして竜の王女様って...何か、厄介な人物か何かですか?」


深刻そうなメイリの表情を見て、ロザリーが喫驚している。


「知っていますか...ロザリーさん、モカさん?竜の国の王女様って、

かなりの美人で...そして、豊満なお胸をお持ちらしいという事を...」


「か、かなりの美人...!?」


「そ、それに、豊満なお胸...!?」


メイリが神妙に語ってくる竜の王女様の情報に、ロザリーとモカが

目を丸くして固まってしまう。


「ちょっと、ライ!あんた、やっぱりそれが目的だったんだねっ!」


そして間を入れずに、ロザリーへ声を荒らげてライに迫っていく。


「え...そ、それが目的...?はて...一体なんの事を言っているだい、

ロザリー?」


「しらばっくれないの、ライお兄さん!そのクエストを受けたのは、

竜の王女様のこれが目的だったんでしょう、これがっ!」


ロザリーの横からモカが同じ様に声を荒らげながら、自分の胸を手で

パンパンと叩く。


「これが目的...?これって、そのモカの服の事を言っているのか...?」


モカの叩いた場所へ俺は視線を持って行き、ジィィーッと穴が空くほど

見つめる考えるが、やはりモカの言っている意味が全くとわからず、

ハテナ顔になる。


「ワザとか...ひょっとして...ワザと言っているのかっ?」


不思議そうに首を傾げるライの姿に、モカのこめかみに青筋ができ

それをピクピクとさせる。


「へ...?ち、違うのか?」


「ワザとじゃないなら、もっとタチが悪いわぁぁぁぁ―――っ!!

胸ですよ、胸っ!オ・ッ・パ・イ・さんっ!!」


モカが苛立ち全開の声を荒らげると、先程より更に強く自分の胸を

ドンドンと何回も叩く。


「ああ、胸の事ですか...。つまり、竜の王女...ミュン様のオッパイが

俺の本当の目的だと...!?」


「え、ええ...そうよ!その竜の王女様の胸が、ライお兄さんの目当て

なんでしょう?隠しても駄目なんだからね!」


なるほど...なるほど...


あのペッタンコの盆地胸が、俺の目当てだと....そう申すのか.....


「んなワケあるかぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――っ!!」


「あひゃ――っ!?」


あまりにも明後日の問いを述べられたライが、喉が潰れそうな勢いで叫喚を

上げると、その声に心臓が飛び出る程にモカが喫驚し、聞いた事のない奇妙な

声が思わず、口から洩れしまう。


「あ...す、すまん、モカ。つい...無念の丈を思いっきり発してしまった...」


我に返ったライが慌ててモカへ謝罪を述べると、何かを思い出したのか、

その表情は困惑な表情へと変わっていた。


「無念の丈...?ライがそこまで叫ぶ程の無念って、一体なんなの...?」


「なはは...それはッスね、モカさん......ゴニョゴニョ」


ライがここまで怒る理由を知りたがっていたモカに、サイカがソッと

耳打ちする。


「おお..!おおお...!?竜の王女様の...が...私より...おほほ♪」


サイカから告げられる竜の王女の情報は、モカにとって朗報だった。


「何、あのモカの満面の笑みはっ!?サ、サイカさんは何をモカに

伝えたのかしら...!?」


サイカから何かを告げられてから、ニヤニヤがとまらないモカを見て、

ロザリーが困惑の表情を浮かべる。


「ふふ...それはね、ロザリーお姉さん......ゴニョゴニョ」


「ほほ...なるほど...竜の王女様......は...モカより......ねぇ...」


「あ...二人だけズルいですわ、私も、私も!」 


今さっきサイカから聞いた事を、ロザリー達にも伝達していく...。


「話を戻してもいいかな......まあ...そういうわけだから、その竜の王女の

ミュン様を慰める事が、今回のクエストなんだよ...」


俺は話を戻す為に真面目な顔をすると、モカ達にクエストの内容を伝える。


「慰めですか...?」


「ああ、キジュさん達によれば、竜の国の事でかなり心にダメージが

蓄積されているらしくてな...」


「そこでミュン様の心が開いた主様に、白羽の矢が立ったという

訳ッスよ!」


ライとサイカはキジュから頼まれたクエストが、ミュンの心のケアを

して欲しいという内容だという事を、ロザリー達に包み隠さずに伝える。


「そっか、その竜の王女...ミュン様の慰める為に...か」


「うん...でも、ミュン様の心がいつ復帰するかわからないし...数日で

戻るって事もないだろうし...。だったら、ここのみんなに心配をかける

よりはいっその事、ここを出ていった方が要らぬ心配をかけずに済むんじゃ

ないだろうかと判断したって訳さ...!」


でもここを出ていく最大の理由は、魔王こと...ユユナが原因なんだけどね。


されど、今ロザリー達へ述べた事も、また嘘偽り無しの言葉なのは本当の事だ。


何せ、ちょっと帰ってくるのが遅れただけで、めちゃめちゃ心配してくれる程、

人の良い連中ばかりだからなぁ...この屋敷の住民はさ...。


「そう言う訳だから...数日後にキジュさんのクエストを受ける為、この屋敷を

おいとまさせてもらうね」


本当は屋敷を出ていくのが寂しい俺だったが、その気持ちをグッと隠し...

無理に作った微笑みをロザリー達に見せるのだった。


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