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九十話・英雄


「どういう事...?偽名を使うにしても、聖剣の名前を使うだなんて

ちょっと、変わってるよね...その娘?」


「偽名じゃないッス!それに私の名前を使う事が変わってるって...失礼にも

程があるッスよ、この小娘がっ!」


偽名扱いに対し、激昂したサイカが頬を膨らませてロザリーへと詰め寄る。


「ちょっと落ち着けって、サイカ!?」


「離して下さい、主様!そこをどかないと、その小娘を殺れないでしょう!」


ロ、ロザリーを小娘って、それにサイカの奴...ッス抜きで喋っている!?

これは相当、頭にきているなぁ...


だって、殺るって言ってらっしゃるしっ!?


「全く、主様と言い...この女と言い...何故、私の名前をこうも偽名扱い

するんですか!」


「え...偽名じゃない?それじゃあ、その娘の名前って...本当に聖剣と

一緒なの...?」


サイカの名前が偽名じゃない事に、ロザリーが目を丸くして驚いている。


「一緒じゃないッス!正真正銘の自分の名前ッスよっ!」


「え...?一緒じゃなく、自分の名前...??」


サイカの言っている意味が理解できないロザリーが、ハテナ顔をして

頭をいためている。


「はは...それはね......」



俺はロザリーに、サイカとの経緯を全て話した......。



「ええええぇぇぇ―――――ッ!?それじゃ、その娘が本当に正真正銘の

聖剣だって言うのぉぉっ!?」


目が飛び出すくらいに目を見開いて、ロザリーが喫驚している。


「はは...まぁ、驚くよね。伝説の聖剣がこんな女の子だなんて...。でも、

これはダーロット王も認めてる事だから信用して欲しいな!」


「えぇぇ!ダーロット王も認めているんだ?なら、間違いないって事か...。

それじゃあなた...本当にサイカー・フォース...なの?」


「ふん...だから、そう言ってるじゃないッスか......!」


ロザリーの方に目線を合わせたサイカが、ブスッとした表情で

怒っている。


「だって、しょうがないじゃない...あの伝説の聖剣が、女の子の姿に

変わっていると言われて、一体誰が信じるって言うのよ!?」


はは...まあ、それはそうだろうね...。


俺だってこいつが聖剣だって信じるのに、相当な時間を食ったからな...。


「と、とにかく、この一大事をモカやメイリにも教えてこなきゃっ!?」


そう言うや否や、ロザリーが大広間の方へダッシュで駆けて行く。



――――――――――



「ほえええええっ!?そ、その女の子がマジで聖剣なのぉぉっ!?」


「そ、それに...ライが聖剣から選ばれるなんて...ビックリを通り越して、

唖然です...」


ロザリーがモカとメイリにサイカの事を全て説明すると、さらに詳しい事を

聞く為、俺の部屋にみんなが集っている。


「でも、それなら何でもっと早く教えてくなかったの、ライお兄さん!

おかげで聖剣探しの為、城のみんなであっちこっちと探し回って、

大変だったんだから!」


「しょうがないじゃん!俺だって、まさかサイカがあの聖剣だなんて、

想像がつくワケないってっ!」


「た、確かに...この見た目で聖剣って言われて、誰も信じませんよね...」


メイリがまだ信じられないという顔をして、サイカをジロジロと見ている。


「ちょっと、そんなにジロジロと見ないで欲しいッス!」


メイリの食い入る熱い目線に、サイカが頬を赤くして顔を隠す。


「それにしても、あの時にライお兄さんが聖剣から選ばれていただなんて...

私、すっかりと騙されちゃったよ!」


モカがあの聖剣の部屋の事を思い出したのか、プクッと頬を膨らませて

激おこしている。


「はは...それは素直に謝るって!でもさ、あの時の俺の心情もわかってくれよ!

触れられないって言われた聖剣に、何故か触れられた、あの衝撃な心情をさ!」


「うん...その気持ちはわかるよ。ウチだって、選ばれし者って言われて

動揺したしね...」


「あはは...そうだね、私もそうだったよ!」


ロザリーの言葉を聞いたモカが自分もそうだったと、ニガ笑いを浮かべる。


「ん...ちょっと待って......え、選ばれし者って、どう言う事...?」


ロザリー達も何かに選ばれた人物って事なのかな?


「うん、そうだね...本当はミルナが帰ってきてから言うつもりだったけど、

ライもこうやって自分の秘密を教えてくれたんだし...ウチらの秘密も教えると

しますか...」


「え...ロザリー達の秘密...?」


「うん、実はウチら...『勇者』とパーティを組む為に選ばれた『英雄』なんだ!」


「英雄...!?英雄って...あの魔王と戦うあの...勇者様のパーティメンバーの

あの英雄の事ですかっ!?」


俺がそうロザリー達に問いかけると、ロザリーが静かに首を小さく縦に振る。


「ええぇぇ―――――っ!?マジでぇぇぇぇ――――――っ!?」


そう言えば、聞いた事がある...勇者様が誕生した時に、そのサポートを

するべく選ばれる英雄が同時に誕生すると言う話を!


「そっか~!ロザリー達がその選ばれし英雄なんだ!」


「はは...選ばれしとか言われると、ちょっと恥ずかしいけどね!」


「ん...?でも英雄のロザリー達がここにいるのに、肝心の勇者様がいないけど、

それは一体どうしてなんだい?」


「勇者がこの屋敷にいないのは...そこの聖剣が関係あるんだ...」


ライの問いに対し、モカがサイカを指差してそう答える。


「え、サイカが勇者様がいない事に関係が...!?ま、まさかサイカ...

お前、勇者様を気に食わないからって、亡きモノにしたんじゃ!?」


「す、するわけないじゃないッスか!ただ、勇者が気に食わなかったのは、

本当の事ッスけど...」


「気に食わないって...聖剣の癖に、勇者様を拒否したのか...?」


聖剣がまさか勇者様を拒否るとは...流石はサイカと言うべきか...。


「そりゃ、当然、聖剣にも人を選び権利はあるッスからねぇ。まぁでも、

あの勇者は私に選ばれる条件を、充たしてはいなかったからッスけどね!」


「そ、そうか...だから勇者なのに、選ばれなか―――」


「だけど、例え条件をクリアしていたとしても、あれを選ぶ気なんか、更々と

なかったッスけどね~♪」


俺の納得を遮ったサイカが、ケタケタと笑いを浮かべながら勇者様を

小馬鹿にしてきた。


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