七十八話・リオとネイ
「す、すいませんッス!あれだけ頑張ったクエストなのに、私のせいで
これだけしか手元に残らないなんて...!」
「いいって、いいって、気にすんな!あれは半分俺も悪いんだし、報酬だって
二人の物なんだ。だからそれを二人で払った...それだけさ!」
「でも...」
「でもじゃないの...!お前もネガティブ発言は、もう禁止...だっ!」
「はにゃっ!?」
ライはさっきのお返しとばかりに、サイカの頭をわしゃわしゃと撫で回す。
「それにサイカのオッパイ&撫で撫でと言う、嬉しいコンボも貰ったんだし、
結果、俺的にはプラスなんだよ!」
「嬉しいコンボ...はうう、ムニャムニャ...!?」
ライにそう言われて、さっき自分がとった行動を思い出したサイカが、
プシューッと音が出てきそうな程、顔中を真っ赤にして照れてしまう。
そんな会話を続けながら歩く事、数十分...。俺達はダーロット城の門前へと
辿り着く。
「ふう...疲れた~本当、ここまで結構な距離だよな...坂も多いし...」
俺は少し休憩とばかり、その場にベタンッと座る。
「さて...ダーロット城に入る前に、後もうちょっと休憩していきたい所だけど...
夕時間前までに、お前の事をダーロット王達へ知らせておきたいし...
仕方がない、サイカ行くぞ!」
「うぃッス!主様!」
ライが立ち上がってサイカにそう言うと、二人でダーロット門へと移動する。
「こんにちは、門番さん。俺の事...覚えていますか?」
「え......?嗚呼っ!?あ、貴方様はミルナ様の大事な御方...ライ様では
ございませんかっ!も、勿論、覚えていますよっ!そ、それで今日は
どういった御用で...ここへ?」
ライに気づいた兵士達が、あわあわと動揺した口調でここへ来た用件を
聞いてくる。
「じ、実はちょっとした緊急事情ができまして...至急、ダーロット王...
もしくは、リオ様にお会いしたいのですが...」
「ダーロット王かリオ様にですか...?本当でしたら、アポを取って貰わないと
いけないのですが...ライ様はミルナ様の大事な御方...」
「ですので、きっとダーロット王も、ライ様を許可なく城の中へ入れたとしても、
お怒りにはならないでしょう...。だって、ミルナ様の報復が怖いでしょうから...」
「「ぶるぶるぶる!」」
門番の兵士達がミルナの報復を口にするとそれが恐ろしいのか、みるみる顔が
真っ青になって、その身を震わせていく...。
門番の兵士達から、ダーロット城に入る許可を無事に貰った俺達は、城の中へ
移動する。
「え...っと、聖剣の部屋って、どこだったっけ?」
「あ、そっちじゃないッスよ、こっちッスよ、こっち!」
違った方向へ移動しようとするライを、サイカが手招きをして呼び寄せる!
それからサイカの案内でダーロット城の廊下を歩いて行くと、遠くの方から
何やら慌ただしく騒いでいる声が、俺の耳に聞こえてきた...。
「ん...なんだ?何か、あっちの方がガヤガヤと騒がしいな...?」
「その方角ッスよ、主様!その騒いでいる声の聞こえる方角に、私のいた部屋が
あるッス!!」
そう言うと、サイカがライの前を横切り、その騒いでいる廊下の先へ駆け足で
走って行く。
「ちょっと、俺を置いていくなって~迷子になっちまうだろうが~!」
駆け足で走って行くサイカの後を、俺は慌ててダッシュで追いかける。
そしてサイカと一緒にしばらく走って行くと、目の前に俺の見知った人物が
立っていた。
「あ...!?あ、貴方はライ様じゃありませんか!?どうして、ここにいらっしゃる
のでしょうか?いえいえ、言わずともわかってますとも...!ライ様は、私に会いに
来て下さったんですよねっ!」
目の前にいる見知った人物...ダーロット城のお姫様リオ様が、俺にそう問い
かけると、瞳をキラキラと輝かせて、その問いの答えを待っている。
「え...まあ、そうと言えば、そうなりますか...はは...!」
「キャン、やはりそうでしたか!リオは嬉しゅうございます!これはもう今から、
結婚の準備をするしかありませんわね!」
「なんでだよ、このメルヘン女っ!?」
ライとリオの会話に割り込んできた少し乱暴な声の主...ネイと呼ばれた
人物が、メルヘンなリオにジト目をして、正論の言葉を叫声する。
「こら、ネイ!そんな下品な言葉使いはやめなさいって、お姉さんいつも
口が酸っぱくなる程、言ってるでしょう!」
「へへ...ゴメンね、リオねぇね。条件反射で、つい...ツッコミがでちゃった♪」
「条件反射って...全くこの娘は、何回言っても言葉使いや行動を改めてくれないん
だから...!」
「いいじゃん、別に言葉使いくらい...。誰かに迷惑をかけている訳じゃあるまいし!」
頬をプクッと膨らませたネイが、プンプンと怒りながらリオの言葉に反論する。
「実際事実、それで迷惑がかかっているんですよ!あなたのその乱暴な言葉使いの
せいで、何度お父様がお嘆きになられた事か...」
「それを言うなら、リオねぇねもだろうが!この間のお見合いの時だって...」
「ああああ、ああ、ああああ、ネイの言葉なんて何も聞こえない~!!」
「だから、この間のお見―――ヴェッ!?」
しつこく見合いの話をしようとするネイの頭上に、リオが思いっきり
振りかぶったゲンコツを食らわせる!
「あ、あの...り、リオ様...」
「ハッ!ち、違うんですよ!?い、今の見合いと言うのは、ライ様と出会う前の
お話の事で、その御方との縁談はキッパリスッパリ、お断りしていますのよ!」
「でもあいつ、まだリオねぇねの事を諦めてないみたいだけどな......ぐぎゃっ!?」
「本当、あなたは口がお軽いですよね...!」
さっき、ネイの頭にできたたんこぶ目掛けて、リオはしなる様に再びゲンコツを
食らわせるのであった...。




