表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/98

七十六話・伝えるべきか?伝えないべきか?


「おい、大丈夫か?だから、気をつけろって言ったのに...」


「うう...い、痛いッス!」


転がって行った時に頭をぶつけたらしく、頭に手を置いて何度も

擦る様に撫でている。


「ほら...立てるか?」


「撫でて...」


「え...?」


「頭...撫でて下さいッス...!」


そう言うとサイカがライの方へと、自分の頭をスゥーと向けてくる。


「ハイハイ...これで、いいか?」


「うへへ...ありがとうッス、主様~。これは中々、いい気分ッス~♪」


ライに頭を撫でられているサイカの表情が、ふにゃっと垂れて

頬は紅に染まり、ポワンポワンとしている。


「うっしゃ!充電完了ッス!さぁ、主様!行きましょうッス!」


「お、おう...!」


鳴いたカラスがなんとやらで、撫で撫で復活したサイカが雄叫びの如く叫声を

荒らげると、ライの腕を引っ張りダーロットの方へと足を向けて移動する。


「お、これはライ様お帰りなさい!それでクエストの方はどうでした!」


ダーロットの門前に辿り着くと、門番の兵士がこちらに気づき話しかけてくる。


「はい、何とか無事に達成しましたよ!」


「おお、それはご苦労様です!では、ギルドまでお気をつけて下さい!」


門番の兵士との挨拶を交わし終え、俺達はギルドへと歩いて行く。



それから歩く事、数十分後...。俺達はギルドに辿り着き、そしてギルド内に

移動する。



「おお、ライとサイカじゃねぇか!お帰り~!...で、どうだ?クエストは無事に

達成できたか?」


俺達がギルド内に入っていくと、冒険者達が休憩する場所でクナが酒をグビグビと

飲みながら、こちらへと出迎えの挨拶をしてくる。


「はは...まぁ何とか、ちょっとしたドラブルはありましたが、無事に達成でき

ました!」


「ガハハ!そうか、そうか、ドラブルか!まぁ、何にせよ無事に帰ってきたんだ、

それで良しってなもんだ!ひっく...お~い、ケーラァ~ッ!」


ライの達成の言葉にクナが高笑いすると、奥へ向かって大声で上げて受付嬢を

呼ぶ。


「ハイハイ~ギルマス、呼びましたか~?」


クナの声を聞き、奥の部屋から受付嬢...ケーラが営業スマイルで微笑みながら

出てきた。


「あ、これはこれは、ライ様じゃありませんか!お久しぶりですね♪」


「お久しぶりって...。メイリとここへ一緒に来た日から、まだ数日も経って

いませんけど...」


「あらあら、そうでしたかしら?おほほ...すいませんね♪」


ふう...この受付嬢、本当に言動が軽いな...。カロンのギルドの受付嬢...

リスティーさんとは、完全に真逆の性格してるよなぁ...。


リスティーさんか...。こっちに来たせいでしばらく顔を見てないけど、

元気にしているかな?


「ケーラ...すまんが、ライのクエスト達成の受理を頼むわ!」


「クエスト達成の受理ですね。ハイハイ、わかりました~!ではライ様、

ギルドカードをよろしいでしょうか?」



「え...ああ、はい。どうぞ...!」


受付嬢からギルドカードの提出を催促されると、準備していた懐から

ギルドカードを取り出し、受付嬢へと手渡した。


「あ、そうそう...トラブルと言えばダーロット城が、今まさにそんな状態

らしいぞ...」


「ダーロット城が...ですか?」


「何だ...?ロザリー達からその話を聞いていなかったのか...?」


「ロザリー達から......」


嗚呼~そう言えば、思い出したっ!確か...ロザリー達が朝から緊急で

ダーロット城から呼び出しを受けていたっけ...?


え~と、確か...聖剣が紛失したとか.........っ!?


ああぁぁぁぁ――――っ!!


「ど、どうしたんッスか!私の顔をジッと見て...」


ライが何かを思い出し喫驚すると、慌てる様にサイカの顔をジィッと

見つめる。


「ちょっと、何でそんなに私をジッと見てるんッスか!は、恥ずかしいッスから...

あんまり見ないで下さいッスッ!」


未だに自分を見つめているライの事がよほど恥ずかしいのか、サイカは顔を

真っ赤にして、あたふた慌てる様に顔を隠す。


「あ...!サイカのあの恍惚な表情...。ライの野郎、また天然ジゴロを発動

しやがったな...。こりゃ~メイリの奴が荒れそうだ......ハア~!」


顔を真っ赤にしているサイカをジト目で見ているクナが、呆れた表情で

メイリの事を考えると、思わず深い嘆息が口から洩れる。



そんな噂をされているとは露知らない、等の本人...ライはというと、

今絶賛、お悩み中だった......。


これはヤバい事になったな...。もしサイカの事がダーロット王にバレたら、

俺の野垂れ死にルートが確定じゃないか!


でも言わなきゃ言わないで、聖剣紛失状態になってダーロット城は

大騒ぎだろうし...。


じゃあ、どうする...?


バラす...?バラさない...?


どっちがいいんだぁぁぁっ!?


ウキャァァ――――ッ!!あ、頭が痛いィィィ――――――ッ!!?


「ち、ちょっと、主様~!いきなり悶えはじめて、一体どうしたんッスか!?」


頭を抱え、雄叫びをあげている様に悶絶しているライ対し、喫驚したサイカが

心配な表情を浮かべ、近寄って行く。


「だ、大丈夫ッスか、主様!?」


「あ、ああ...大丈夫だ。ただ俺の悩みの内容が、俺のスペックを超えた

だけだから......」


「な、悩みッスか?それは一体、どんな悩みっだったんッスか?」


「お前だよ...お前!聖剣の事を素直に伝えたらいいのか、それとも伝えずに

黙っておくべきか、この二つの間で際まみれていたら、頭がボンッと

ショートしちゃった...はは」


ライが頭がポリポリと掻きながらそう述べると、その表情にはニガ笑いが

浮かんでいた...。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ