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七十四話・キジュとクーイの決意


「いいですよ、その依頼引き受けます!」


「本当ですか、ライ様!ありがとうございます!」


ライの良い返事を聞いたキジュが、相好を崩す笑顔でお礼を言ってくる。


「ただし、クエストとして引き受ける以上、報酬はちゃんと貰いますよ!」


本当はただで引き受けてもいいんだろうけどさ、俺も一応これから冒険者稼業で

生きていきたいから、ここら辺の線引きはしておかないと。


「それは勿論、承知してます!クエストの報酬として、これ何かいかがで

しょうか?竜の国から奪ってきた、竜の籠手なんですが...!」


「り、竜の籠手っ!?」


竜の籠手...これって竜の鱗をふんだんに使っている、めっちゃ激レア物

だったよな...。


「その表情...もしかしてこれじゃ、報酬としては足りないでしょうか...?」


「い、いえ...違うんです!この顔はただ驚いてしま――」


「じゃあ、これもつけますから、ライ様!どうか、引き受けて下さいませんか!

お願いします!」


報酬が凄すぎて逆に困惑していた俺だったが、その表情を見たクーイが、それを

勘違いし、懐から慌てて報酬を上乗せする為に何か光る物を取り出した。


「これは『隼の指輪』と言って素早さを倍にする装備アイテムです」


は、素早さを倍にするですとぉぉ...っ!?


「ど、どうでしょうか...ライ様?この二つで何とか私達の依頼を受けては

もらえないでしょうか?」


「コラァァッ!いい加減にするッス、魔王の手先ども!主様の困惑に

満ちた顔を見てみろッス!そんな魔王の手先からの報酬なんて受け取る

ワケない―――」


「そのクエスト...引き受けるよ!」


「えええぇぇ―――ッ!?何で受けちゃうんッスか!引き受けるって事は

そいつらの...魔王のアジトに行くって事ッスよ!」


あ、そうか...ユユナのいる場所って事は、魔王の...って事になるのか...。

だけど...


「さっきから何度も言っているが、ユユナはユユナであって、昔の魔王は

魔王ってクラスなだけのただの魔族のおっさんだ!決してイコールじゃない!」


「ユユナ様はユユナ様であって...」


「決してイコールじゃない...ですか...」


「キジュ...!」


「ええ...わかっています...。ユユナ様は良い御方と出会いなされたのですね...」


「ふふ...そうですね...。でも、まさか魔王様をおっさん呼ばわりとは...本当に

面白いですね、ライ様は♪」


「...ですね。だって、私達の事も女性として見てくれるんですから...ふふ」


クーイとキジュは普段あまり見せない屈託のない表情で微笑みを浮かべると、

クスクスと笑い合っている。


「...と、言う事なので、二人のクエストはちゃんと引き受けるので、

サイカの言葉はガン無視しちゃって下さい」


「が、ガン無視って!?ひどいッス!ひどいッス!主様の事を思っての

言葉だったのに、ガン無視はヒド過ぎッスゥゥ―――――ッ!!」


「お、おいっ!?サイカ、どこに行くんだよ~!戻って来い~!」


ライのあまりの言葉にショックを受けたサイカが、泣きながら駆け出し

森の中へと消えて行く...。


「たっく...サイカの奴はしょうがないなぁ...。じゃあ、キジュさんに

クーイさん、俺、ちょいとあいつを追いかけますんで簡素でいいから、

日にちと待ち合わせの場所を教えて下さい!」


「え、ええ...それでは、日にちは......」



「はい、わかりました。その日の朝に行きますんで、その時に

また詳しい事をお願いしますね!...じゃ、これで失礼しますっ!」


キジュさんとクーイさんから待ち合わせ場所を聞いた俺は、二人に一礼すると、

慌ててサイカの消えていった方向へ駆け出して行く。


「行ちゃいましたね...ライ様」


「ええ...行っちゃいました...」


「男性とのお話がこんなに楽しいものとは思ってなかったよ、私」


「それは私もですよ、クーイ。ユユナ様がライ様と楽しそうにお話し

されている姿を見ていましたが...なるほど、こんなにも心がウキウキ

するものなのですね...」


「でも...ユユナ様がライバルか...」


「はは...勝てそうもありませんね...。でも私、負けません!」


「おお!凄い意気込みですね、クーイ!」


「ふ、当然です!こんなにも高揚感溢れる気持ちを諦められませんから!」


「ですね...ハードルは高いですが、やってみる価値はありますね!」


「ええ...頑張りましょう!キジュ!」


「はい!そちらも頑張ってクーイ!」


キジュとクーイは打倒ユユナを宣言し、お互いの目を見つめ合う。

その瞳には、今の闘志を表現するかの様な炎がメラメラと燃えていた。


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