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七十三話・キジュとクーイ


「キジュさんとクーイさんはこれからどうしますか?」


「私達はユユナ様が待っていらっしゃると思いますので、早急に屋敷へ

帰ろうと思います」


「帰るならさっさ帰れッス!主様にこれ以上迷惑をかけんじゃねえッスよ!」


キジュとクーイ達の言葉を聞いたサイカが、捲し立てる様に木の下で

プンプンと文句を足れている。


「あ、あの...ライ様。あそこでギャーギャー叫んでいる女の子は誰でしょうか?」


「ち、ちょっと待って、クーイ...!あの娘に似た気質...どこかで感じた事

ない...?」


キジュが困惑した表情でクーイにサイカの事を聞いてくる。


「え...?あ、確かにこの感じの気...私も感じた事があるような...?」


「感じて当たり前ッスよ!この魔王の手先どもめッス!」


「えっ!な、何を言ってるのよ!私達が魔王の手先だなんて!」


サイカの口から出てきた驚愕な言葉に、キジュ達が喫驚の表情して

言い訳を述べる。


「とぼけても無駄ッスよ、魔王の手先!この聖剣サイカー・フォースの目を

誤魔化せるとでも思ったッスか!」


「聖剣サイカー・フォース!?」


「何を言ってるのあの娘?自分の事を聖剣サイカー・フォースだなんて...」


「でもあの娘から、確かに聖剣の気質を感じる...!」


キジュが改めてサイカの気質を感じると、確かに聖剣のそれだった。


「もう、サイカ!さっきも言っただろ!ユユナが魔王だろうと

関係ないって!」


「え...?ライ様、ユユナ様が魔王だと知っていらしたのですか!」


「うん、さっきまでユユナ達がここにいてさ、その時にサイカが...ね」


「そ、それでユユナ様と何かあったのですか...!」


それを知ったキジュ達が少し困惑した表情で強張り、こちらに向け

身を構えてくるので、ライはその時の経緯を詳しく話して聞かせた。



―――――――――



「...なるほど、その様な事があったのですか...」


「まあ、そう言う事があって、ユユナが魔王ってわかったんだよ」


「わかったんだよって、ライ様はユユナ様が魔王と知って畏怖しなかったの

ですか?」


「ユユナの事をかい?別にあいつはあいつだしな...」


大体、屋台であんなキラキラした表情を見せていたユユナが、この世界を

恐怖に陥れるなんて事...到底するとは考えられないし...。


「それにさ...魔王って言っても、ユユナのクラスが魔王ってだけの事だろ?」


そうさ、物語の魔王とあいつを同一に考える方がどうかしてるって話だ。


「ハア、物凄い偏屈な考え方ですね。でも...そうですか、気にしませんか...

アハハ...流石、ユユナ様がお認めになっておられるお人だ!」


へえ...ユユナが思う俺の印象って、そんな感じなんだ...全然知らなかった。


だって、あいつの俺に対する態度って...大体、悪態やビンタばかりだったから、

そんな良い印象と聞いて、ちょっとビックリだ...。


「主様~!そんな魔王の手先なんてほっておいて、さっさとクエストを

再開しようッスよ!」


「そ、そうだった!クエストの方がまだ終わってなかったんだ!」


ユユナやキジュさん達...それにあの飛竜使いに気を取られて、スッカリ

クエストの事を忘れていた!


「じゃ、キジュさんにクーイさん!俺はここで失礼しますね!ユユナに

よろしく言っておいて下さい!」


「ねぇ...キジュ、あの話をライ様に頼んでみてはどうかな?」


「ライ様にですか?た、確かユユナ様の事を知っても一つも畏怖しない

御方だ...力になってくれるかもしれないな...」


クーイの言葉にキジュも納得の相づちをうつと、二人がライに頼み事をする為、

口を開く...


「あ、あの~ライ様!貴方にお頼みしたい事があるんです!話だけでも

聞いてもらえませんか?」


「え...俺に頼み事...ですか?」


「はい...ユユナ様に会ったって事は、ミュン様に会ったんですよね?」


「ええ...会いましたよ、ペタンコだったあいつですよね!」


覚えていますとも...ペッタンコ...。俺のささやかな夢を崩した

竜の国の王女様の名前ですよね!


「え...ぺ、ぺったんこ...?ぺったんことは一体なんの事でしょうか?」


「あ!イヤ...き、気にしないで下さい!こ、こちら事ですから...はは!

そ、それで、そのミュン様がどうかしたんですか?」



「あ、はい...竜の国の王女ミュン様に会っているなら、竜の国の内乱の事は

お聞きしましたよね?」


「ユユナから聞きました。そのせいでミュンをユユナが保護しに竜の国へ

行ったんですよね?」


「はい...それでライ様への頼み事と言うのは...ユユナ様と一緒にミュン様の

心を守ってくれませんか?」


「心を守る?」


「はい...今のミュン様の心はかなり不安定なのです...。だから、その心が

壊れない様、ライ様に手伝って欲しいのです!」


ああ...言われてみれば、確かにミュン様...言葉足らずって感じだったな...

そっか、傷ついていたんだ。


ごめんミュン様!ぺったんこかよ!とか、えぐれ胸め!とか、地平線が

見えるわ!とか、思っちゃって...マジにスンマセンでした!!


ミュン様が聞いたら絶叫で怒られそうな言葉を、俺は心の中で叫喚する様に

謝るのであった。



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