七十二話・感謝のキス
「俺は木の上に放置状態にしているキジュさん達の所に行ってくるから、
お前はそこで大人しく待っていろよ」
失ったHPとMPをヒールとMP回復ポーションで回復させた俺は、
キジュさん達が飛んでいった木の方へ目線を向ける。
「え、じ、自分も一緒に行くッスよ!」
「無理すんなって、俺と一緒じゃキジュさん達に近づけないだろう?」
「う...そ、それは...!」
図星をつかれて、サイカは困惑した表情を浮かべる。
「いいからそこで待ってろ、いいな!」
「わかったッス...」
俺はサイカにそう言葉を残し、キジュさん達の所に足を向ける。
「よいしょ...んしょ......ふう、ついた!」
俺は落ちない様に木の上へ登っていき、キジュさん達のいる場所に
辿り着く。
「キジュさん大丈夫ですか!キジュさん!」
俺はキジュさんの肩を両手で掴み、前後に振って目を覚まさせる。
...その間、体を振る事で揺れるおっぱいを堪能しながら。
「ん...んん...!こ、ここは......!?」
「あ、もう起きた!せっかくのオッパイ...ゲフン、ゲフン、やっと起きましたか、
キジュさん!」
うっかりでてしまった本音を咳払いで誤魔化し、俺はキジュさんへ笑顔で
対応する。
「ん...!あ、貴方はライ殿じゃありませんか!どうしてこんな所に!?」
「それはクエストでですね...って、違う、違う!覚えてないんですか!
キジュさん達、さっきまでヂガンとかいう竜騎士に囚われていたんですよ!」
「あ...!そういえば!それじゃ何故、私は今無事にここにいるのでしょうか?」
囚われていた自分が何故、無事でいるのかとキョロキョロして周りを確かめる様に
見ている。
「はは...俺が何とか、あの野郎を倒しましたからね!」
「え!あ、あの赤族のエリート軍団の竜騎士をですか!?」
自分達が勝てなかった相手をライが倒したと聞き、キジュの口から喫驚の声が
洩れてしまう。
「まあ、ギリギリだったんですけど、キジュさん達の為に頑張りましたから♪」
「わ、私の為にですか...!」
ライがはにかんだ笑顔でそう答えてると、キジュは頬を紅に染める。
「何を言ってるのですか、キジュ...。このお方はキジュさん達と
言ってましたから...つまり、私もその数に入っているんですよ...」
自分だけを助けに来た様な口振りを見せるキジュをクーイがジト目で
窘める。
「あ、クーイ!貴女も無事だったようですね...!」
「ええ、そのお方のおかげさまでね...。で、そのお方はどなたなのかしら?」
「このお方はライ殿といって、ユユナ様の友人でもあり、恩人でも
あらせられるお方だ!」
「ユ、ユユナ様の...!それはご無礼な態度をっ!」
ライがユユナの大切なお方だと知ると、サッと立ち上がって片ひざをつき
そして頭を垂れる。
わ、クーイさん、ちょっと大袈裟だな...。
その態度にちょっと困惑した俺は頬を掻きながらクーイさんを観察する...。
尖った耳に褐色の肌...。クーイさんもキジュさんと一緒で
種族はダークエルフか。でも、キジュさんと比べて肌の色が
褐色というのは、ちょっと日に焼けたって感じの色合いだ。
髪はロングヘアをショートアップした髪型で、
色はキジュさんと同じ色か...。
成人のダークエルフにしては珍しく、身長が俺より低い。
...っというより、モカに近い身長かな?
それなのに、その体は...キジュさんと同じくボンッキュッボンッの
ナイスバディなのだ!
クーイさんをモカには見せられないよ!
「ど、どうしたんですか!私の事をそんなにジロジロと見て?」
「そう言えば、私と初めて会った時も確かそんな感じで見ていた様な?」
「え、はは...クーイさんもですけど、キジュさんも本当に綺麗だなと
思いまして!」
「え、い、嫌だ!こんな戦闘馬鹿と言われているダークエルフの私達が
綺麗だなんて、そんな冗談を!」
「そ、そうですよ!戦いの道具としか見られない私達ダークエルフが
綺麗だなんて...からかい過ぎです、ライ殿は!」
ライの誉め言葉を聞いたキジュとクーイが表情を紅に染めると、
あわあわと慌てて動揺してしまう。
「そんな事ないんだけどなぁ...」
二人の様にキレイでナイスバディな女性を放っておくなんて...。
「全く...キジュさんの国の男連中って、どんだけアホなんだ?」
俺がそんな事を考え呟くと、クーイさんがスッと俺の近くに寄ってきた。
「じゃ、じゃあ...こんなお礼は嬉しいかしら...チュ!」
そして俺の頬に優しく唇を当てて、キスをしてくる。
「ちちち、ちょっとクーイさん!いきなり何て事をするんですか!」
「その慌てよう...やっぱ、さっきの言葉は、冗談を言ったんだ...」
慌てるライの姿を見たクーイが、表情を暗くしてシュンッとする。
「ち、違いますって!こんな嬉しい事をいきなりしてくれるなんて
思っていなかったの慌てようですよ!」
「本当に...?じゃあ、私も......チュ!」
ライの言葉を聞いたキジュが 、クーイとは逆の頬に近寄って行くと、
照れた表情を見せつつ、キスをしてきた。
「おおおおぉぉぉ―――――っ!やったぜ!こんなご褒美が貰えるなんて、
頑張ったかいがあるってもんだぜぇぇぇ―――――っ!!」
俺は全身を使ってそのキスへの感動を叫声を荒らげて、喜び勇むのだった。
「ライ様のあの表情...本当に嬉しいんだ...」
「あれだけ喜んでもらえると、なんだかこっちも嬉しくなっちゃうな...」
喜び勇んでいるライを見つめるキジュ達のその表情は、湯気が見えそうなくらいに
真っ赤になっていた。




