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七十一話・それでも俺は...!


「主様...」


ライを心配そうに見つめ、今にでも助けに行きたいサイカだったが、

聖剣の思考が魔王の事でそれを邪魔してしまう。


「さあ...どうする...!ここで泣き言でも言ってみるか?」


「はん、そんな事を言うなら、最初からこんな事なんてしてないさ!」


くそ...あいつ、もう冷静さを取り戻してやがる...!今のコンボで駄目なら、

次はこいつを使うか...。シス...お前の特製マジックアイテムが役に立ちそうだぜ!


「じゃあ、戦闘の続きといきますか!おりゃぁぁ―――っ!!」


俺は大地を踏みしめる様にひざを曲げ、その反動の力で空中へ蹴り上げり、

相手に突進する!


『食らえ!双月斬ッ!ウリュアア―――ッ!』


そして、気を溜めて軌道を描く様にバツの字に剣を思いっきり振ると、

双月斬の2つの波動が左右からヂガン目掛けて、弧を描きながら飛んで行く!


「中々早いな...だが、それじゃ俺を捉える事なんてできやしないぜ...ハァァァッ!」


ヂガンは左からきた波動を持っていた槍で斬り裂き、間を入れずに右の方の波動を

斬り裂きに行く!


「ふん、他愛もない......何ィィィッ!?」


切り裂いた波動の中から、ライのマジックアイテムが現れてヂガンに発動する!


「はは...また引っ掛かったな!そいつはマジックアイテム『能下』だ!」


『能下』...正式名称、能力低下。その名の通り、相手の能力を減少させる

シス特製のマジックアイテムだ。


「ぐぬぬ...何だ!いきなり体が重くなった感じがするぞ!」


ヂガンは自分の体が思う様に動かない事に、喫驚な表情で動揺を見せている。


「その隙を見せていいのかい、竜騎士さんよ!」


『相手を包み焼け!フレイィィィ―――――ムッ!』


俺の突き出した両手から炎が巻き起こり、ヂガンへ向けて螺旋を描いた炎が

凄い速さで突き進む!


「チィィィ―――ッ!」


ヂガンは横っ飛びでその場を移動し、間一髪で螺旋の炎を避けてるが、

着地に失敗し転げ回る!


「何だ...何だ...何だって言うんだあああぁぁぁぁ――――ッ!!」


自分のあまりの不甲斐なさにヂガンは絶叫を荒らげ、地面をバンバンと

叩いている。


「てめえ、もう絶対に許さんぞぉぉぉ―――ッ!」


血走った視線でライの事を睨みつけると大地を蹴り上げ、雄叫びを上げながら

突進してくる!


「な!速い!能力を落としたっていうのに――――――ガハッ!?」


「おいおい...。そんな攻撃で眠るんじゃねぇ!せっかく素手で攻撃して

やってるんだから...な!」


「グハアァァァ―――ッ!?」


腹に拳をもらってえずくライに対し、憤怒のこもった叫声を上げたヂガンは、

もうひとつの拳を右頬へと繰り出した!


「アハハハッ!うりゃあぁぁぁ―――ッ!!」


「く、危な―――――――――――ガァアッ!?」


頬を殴られ地面へと下がって行くライの顔に、しなりを効かせた右足で蹴り

上げる!


ライは庇う様に頭の前に腕を持っていくが、そのままヂガンに蹴り上げられて、

気づいた時は少し離れた岩山に叩きつけられていた!


「うう...う...」


「主様!主様ぁぁぁ!」


今にも死にそうになっているライを助けに行きたいのに、聖剣の思考が頭に何度も

何度も現れて、その思考が鎖の様に体を繋ぎとめ、動く事ができないでいた。


「ふん、もう動けないか...くそ、俺はこんな奴に遅れをとったって言うのか...!」


ヂガンがライを蔑む目線で睨み付け、自分の有り様に腹を立てている。


「はは...そりゃ...てめえが脳筋だから...あんなしょうもない手に...

引っ掛かるんだよ...」


「貴様ァァァ!言うに事欠いて、俺様が脳筋だとぉぉぉ―――ッ!」


「お前の......どこに...脳筋以外の要素があるん...だ...ハァ、ハァ...」


ちょっと挑発しただけで、またカッカしてきやがった。こいつ...やっぱり

脳筋だな...。


俺の予想通りなら、こいつはこの後......


「もう手加減なんしてやらねえ!ここでくたばれやぁぁぁ―――ッ!!」


「よし...予想的中!あの速さなら、これを避けられないはずだ!そりゃぁぁ!」


我を忘れて突進してくるヂガンに、俺はマジカルリュックから取り戻した

シス特製マジックアイテムを、相手の突撃線上に向けて投げつけた!


「ギャハハ!そんな物に当たるかボケがぁ―――っ!てりゃぁぁ――っ!!」


ライが投げつけたマジックアイテムを、ヂガンが槍で素早く砕いて叩き落とす!


...だが、その瞬間!


「ギャアアアァァァ――――――う、腕がァァァァァァッ!?」


砕けたマジックアイテムからイマズマの様な無数の光がヂガンの腕に

絡みつくと、その腕をビリビリと痺れさせる!


相手が脳筋で助かった...。あれは相手に当たるか...または砕かれてる事で

初めて発動するマジックアイテムだから、避けられたらおしまいなんだよな...。


俺は上手く決まってくれたマジックアイテム『部痺』が決まって、ホッと胸を

撫で下ろす。


「腕がァァァ!腕にイマズマが落ちた様にビリビリしやがるぅぅぅッ!!」


ヂガンは息を荒らげる様な声を上げ、自分の腕の痺れにのたまわっている。


「竜騎士ヂガン...これで終わりにしようか...ハアアアァァァ―――――ッ!!」


この剣義の一撃に全てをかける為、俺は全MPを気合いへと変換していく!


80...90...100...120...よし!気が溜まった!


「食ら......!?」


とどめの剣義を放とうとした瞬間、思考がヂガンを人と認識してしまい、

手の動きがとまってしまった!


くそ...ここにきて、道徳心なんて出てくるんじゃねえよ...!


あの時を思い出せ!俺が盗賊何ぞに情けをかけようとしたばっかりに、

リィーナやアルテをあんな怖い目に...!そうさ...ここでこいつに情けをかけて、

もしサイカやキジュさん達に何かあったら......!


「俺は......嫌だ!そんなのは...死んでもごめんだぁぁぁ―――――ッ!!」


『食らえぇぇ!双・月・斬・ッ!!ウリャアアアァァァ―――――ッ!!!』


決意を糧に俺は腕が千切れるくらい、思いっきり二回腕を振り上げ、ヂガン目掛けて

波動を飛ばした!


「くそがぁぁあぁ!そ、そんな攻撃...避けて...ギャァアァァ――――ッ!!

う、腕がァァァ―――ッ!!俺が!俺がこんな殺られかたをするなん―――」


ヂガンがそのセリフを最後まで言う事は出来ず、ライの撃ち出した波動の

光の中へと消えていった。


「ハァ...ハァ...。や...やったのか...?」


俺は双月斬の爆煙が消えて、その場にヂガンがいない事をその目で確認する。


「いない...!は...はは...!やるじゃん俺、まさか十パーセントの方に

乗れるとは...うう!」


勝利の喜びに浸るライだが、HPもMPも殆どきれて意識がフワッと飛びかけると、

その場に倒れ込む。


「あ、主様ぁぁぁ!?」


倒れ込んだライの元にサイカが喫驚の声を荒らげて、駆け足で近寄って行く。


「ごめんなさいッス!ごめんなさいッス!私...私...!どうしても魔王の事が

頭に浮かぶと体が...心がそれを拒絶してしまうんッス!」


「サイカ...」


「主様が命を落とすかもしれないのに、優位順番は魔王討伐と何度も浮かんで

それを邪魔する主様を助けに行くなと、体が思う様に動いてくれないんッス!」


サイカは今の戦いへ参加できなかった羽交いさと悔しさから、表情を曇らせて、

その瞳からはボロボロと涙を流している。


「気にするな...恐らくお前を作った奴がその魔王討伐の楔を打っただけで、

別にお前が悪い訳じゃないんだ...」


「でも...でも......ハウッ!?」


その事がよほ悔しいのか、未だにボロボロと涙を流すサイカを慰める様に

ライはその頭に手を乗せて、わしゃわしゃと撫で回す。


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