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六十八話・聖剣使いの条件


「それにしても、キジュとクーイが追いかけてこないけど、まだあの連中に

手こずっているのかしら?」


「ん...確かにちょっと...遅いか...?」


「......」


「お...!流石にアイツの...魔王の力を目の辺りにしてしまうと、主様でも

慎重な顔になるんッスね!」


ユユナ達の会話を真面目な顔をして聞いていたライの耳元で、またサイカも

真面目な顔をして呟く様に述べる。


「あ...そうだな、あの混乱の元と言われる魔王だもんな!」


本当はユユナ達がさっきから発しているクーイって女性...キジュさんと

一緒でナイスバディなのかなぁ...だといいなぁ...!


...と、考えていたのだが、空気を読んでその場を誤魔化した。


「それで主様、どうするッスか?隙ができてる今がチャンスだと私は

思うんッスけど?」


「チャンスって何が?」


「とぼけてるッスね...。勿論、魔王を撃つチャンスに決まってるじゃ

ないッスか!」


「魔王を撃つチャンスって...撃つワケないじゃん!」


俺は何を言ってるのって表情をし、サイカの言葉を否定する。


「な、どうしてッスか!世界を震撼させた魔王が目の前にいるんッスよ!

これを撃たずに平和は来ないッス!」


昔、この世界を震撼させた存在...魔王。俺も最初は勇者様の事を聞いた時、

魔王を恐れてたよ...。


でもさ、伝説の魔王はこいつじゃない...。魔王の畏怖だってユユナからは

全くといって感じられない。さっきの凄い戦闘を見てもだ!


なら、俺はシスがよく口癖で言う『考えるな!感じた事を信じろ!』を信じて、

ユユナを絵本や歴史に出てくる魔王としては決して見ない!


そう...心に決めたんだ!だから俺は口開き、サイカにこう言葉を語る......


「イヤ...それは違う魔王の話だろ...?ユユナの事じゃない...そうだよな、

サイカ?」


「うう...そ、それはその通りかもしれないッスが、アイツも絶対にその魔王と

同じ道を歩むに決まっているッスよ!だからこそ......って、ハウッ!?」


「何をそんなに意固地になっているか知らんが、リラックスしろ、リラックス!」


ムキになって俺に魔王討伐を進言してくるサイカの頭に手を置いて、落ち着く様に

わしゃわしゃと撫で回す。


「ハウッ!もう...主様は前の主様と違って、本当に変わった人ッスね...」


撫でられる事で少し落ち着いたサイカは、頬を赤らめて呟く様にそう洩らす。


「そ、そうか...俺はどこにでもいる普通の人間だと思うが...?」


「普通の人間は聖剣に対して、女の子へなれって言う願望はかけないッスよ!」


「うう...ま、まさか俺もあの願望が聖剣の姿を変えるとは思うもんか!」


「はは...まあ、あの時は私もビックリしたッスけどね...。何せ、そこら辺の

剣でも取るか様に私を掴むんッスから!」


その時を思い出したのか、サイカがニガ笑いを浮かべてライを見ている。


「い~やぁ、伝説の聖剣を手に握ってしまった時は血の気が引く思いを

したぜ!」


「血の気がって、私に...聖剣に選ばれたって言うのに、その言い方は

あんまりッス!」


ライの困惑の口調で苦笑している姿を見て、サイカが膨れっ面でプンプンと

激おこで抗議する。


「当たり前じゃん!だって、国の戦いなんかに巻き込まれたくないじゃんか!

俺って、ただのそこら辺にいる一般市民の一人なんだぞっ!」


俺は戦争に巻き込まれて、どこぞで野垂れ死んでいる自分を想像して

思わず、ゾッとする。


「そもそも不思議なんだが、何で一般市民のこの俺なんかが聖剣に選ばれ

たんだ?」


「私達、聖剣に選ばれる条件ッスか...?そうッスね...聖剣に選ばれるには、

色んな特殊条件があるんッスけど...私の場合は、まず...『LVが二十になる前に、

LV6つ分のポイントを幸運に全振りする』...が条件の一つッス...!」


「幸運の全振りっ!?」


思いっきり、身に覚えがある特殊条件が、サイカの口から述べられた。


「それにもう一つの条件は『神級魔法を覚えている』が事が条件ッスね!」


「神級魔法って、そんなの覚えた記憶が...あ!」


俺はメイリが言っていた神級魔法の可能性あると言っていたのを思い出す。


「どっちも覚えがあるッスよね?」


「はい...存分にあります...」


「それッスね、大切な二十台になる前のLVポイントを全て、幸運へ

全振りする奇特な人物は単なる馬鹿か、先の見えない英雄の素質ありか...

これのどちらかッスからね!」


「単なる馬鹿か、英雄の素質あり...か」


「まあ、主様は前者の確率が高いッスけどね♪」


「お前...仮にもその言葉、主に対しての物言いじゃないぞ...」


流石の俺も堂々と馬鹿呼ばりするサイカに、プンプン顔で抗議する。


「キジュ達...いくらなんでも遅すぎる...。まさか、あいつらに捉えられ

たんじゃ!?」


ユユナはその事を想像しているのか、表情から色がみるみると抜けていく。


「と、とにかく、一旦、私の屋敷に帰って、キジュ達の情報が入っていないか、

確かめに行きましょう!」


「ん...それがいい...かも...!」


ユユナの提案にミュンがコクリと頷いて、同意の言葉を述べる。


「じゃあライ、私達は行くけど、もしここにキジュ達が来たら私達は屋敷に

帰ったと伝えて頂戴ね!」


「おお、わかった!」


「ちょ、魔王!どこにいくつもりッスか!逃がさな......ハニャ!」


興奮してユユナに突っかかるサイカの頭を、再びわしゃわしゃと撫で回した。


「んじゃ、またな...ユユナ魔王様!」


俺は、ユユナに別れの挨拶をジョークっぽい言葉で述べ、敬礼ポーズをビシッと

決める。


「.........」


「ん...どうした、そんなにボーッとして、もしかして今の敬礼...思いっきり、

スベッちゃったかな?」


「ううん...そうじゃないの。ただ、その聖剣の言葉じゃないけど、ライって

本当に変わった人だよねって思ってさ...♪」


「ちょ、お前もそれを言うのかぁ~!一体、俺のどこにそんな要素がっ!?」


「ふふ...」


本当に変わってるよ、ライって...。だってさ、私の正体が魔王だとわかっても、

ライったら、これまでの接し方と全く態度が変わらないんだもん...。


「さぁ、どこで何でしょうね♪」


「うう...こんなに決まっているナイスガイの俺のどこに変な所が...!」


何度も繰り返す様に俺はどこが変なのかと、思考をグルグル働かせて

頭を痛めるくらいに考える。


「ハイハイ、そんなに悩まないの!さっきの私の言葉は、ライの事を誉めた

言葉なんだから...ねっ♪」


へこんでいるライにユユナは感嘆の言葉を述べ、可愛くウインクをする。


「お...!?」


か、可愛いっ!...って、いかん、いかん、何をときめいているんだ俺!こいつは...

ユユナは男なんだぞ...!?


不覚にも俺は、男のユユナの事を可愛いと思ってしまい、少し戸惑いの顔になる。


「はは...♪それじゃね、カッコいい聖剣の使い様っ♪」


ユユナは相好を崩す笑顔を浮かべ、困惑状態のライに手を何回か振ると、その場を

ミュンと共に去って行った...。


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