六十話・番外編7 シス特製マジックアイテム
「あ...クリルさん、このクエストを受けたいので、受理をお願いしても
良いでしょうか?」
私はさっきクエスト依頼を見ていた時、剥がしておいたクエスト依頼書を
クリルに手渡した。
「はい...クエスト依頼ですね。では、受理するまでしばらくお待ち下さい!」
シスにそう言うと、再びクリルが奥の部屋へ入って行った。
それから数分後...。
「シスさん、お待たせしました!これが受理書です、お受け取り下さい!」
「確かにクエスト依頼の受理書...受け取りました」
シスはクリルから、クエスト依頼の受理書を受け取る。
「それでは、いってきますクリルさん!」
「ハイ!気をつけていってらっしゃいませ、シスさん!」
シスはクリルに出かける挨拶をすると、商売ギルドから外に出て、
依頼の材料がある東の森へと足を早め移動する。
――――――――――
カロンを出てしばらく歩いて行くと、目の前に目的地の東の森が
見えてきた。
「ふう...やっと、東の森が見えてきた...意外に遠いよね、ここ...」
私は文句を呟きながら東の森へと移動する。
「目的の材料があるのって、確か...あっちの方角だったよね...?」
前のクエストで目的の材料を採取した事がある私は、それを思い出しつつ、
その場所へとゆっくり歩いて行く。
その場所に歩いて行く事、数十分......。私は無事に目的の採取場所へと
辿り着いた。
「うむ...確かにこの風景に見覚えがあります...。それなら、この風景の
南西の方角に目的の採取アイテムが......おお、ありました、ありました!
あそこに見えるは間違いなく...クエスト依頼の『奇っ怪草』です!」
奇っ怪草...その名が示している様に、混乱アイテムを作る為の材料の
1つだ。
「しかし...来た早々すぐに見つけてしまうとは、何てラッキー日なんで
しょう♪」
私はいきなり見つかったクエスト依頼アイテムに、相好を崩す笑顔で
喜び、スキップに近い足取りで奇っ怪草へ向かう。
「よいしょっと、ふう...これでクエストは達成ですね!」
クエスト依頼の奇っ怪草を採取して皮袋に入れると、安心のひと呼吸を
吐いた。
さて...次は、私の魔道具を作る為の素材を採取するとしますか...確か、
あの素材アイテムは...あの魔物の部位でしたね.........んっ!?
「おぉぉ~いぃぃ、誰かいませんかぁぁぁ~!!誰でもいいですぅぅぅ!
こちらの声に気づいたら、助けに来てくれませんかぁぁぁぁ~っ!!」
私が素材アイテムの事を考えていると、遠くの方から誰かの叫ぶ大きな声が
聞こえてきた。
何...今の声...?聞いた感じ女性の声みたいだったけど...助けに来てっとか、
言ってたよね...?
もしそうだったら、急いで助けた方がいいよね...。あ、でも...罠の可能性も
十分にあるか...。
こういう時は、これを......使って...っと!
私はマジカルポーチから一つのアイテムを取り出し、それを空中へと
放り投げる。
空中に放り投げたアイテムは、私の特製マジックアイテム...その名も『望遠』!
これは魔力使って操作し、遠くの場所を見る事ができるマジックアイテムだ。
どれどれ...ここら辺がさっきの声が聞こえてきた場所だよね...?ん...何か人影が
二つ見えてきた...。あれがさっきの声の人達かしら?
見た所、少女ともう一人は...ローブのせいでどっちかわからないわね...?
あ...少女の人が何か苦しんでる...!?あれは...どう見ても演技じゃ...ないよね!
「うん...厄介な状況でないのは把握できた。それじゃ...手遅れになる前に
助けに行くとしますか...」
飛ばしたマジックアイテムを手元へと戻し、マジカルポーチに入れると、
私は早急に、望遠で発見した少女達の元へ駆けて行く。
「あの~!大丈夫ですかぁ~!」
数分後、少女達のいる場所に辿り着いた私は、慌てふためいているローブを
纏った人物の元へと近づいて行く。
「あ...!良かった...私の声が聞こえたんですね!」
「そこに倒れている女の人...見た所、お腹を抑えて苦しんでるみたいですけど、
一体どうしたんですか?」
「実は...お恥ずかしいお話なのですが、そこに生えているキノコを毒があるか
ないかを調べる前に、この娘が勝手に食べてしまって...」
「そこに生えているキノコ...嗚呼!そのキノコって、『ベアキルキノコ』じゃない
ですか!」
ベアキルキノコ...。強靭な魔物ビックベアでさえ、食えば一撃であの世に送ると
いう強毒を持つ事で有名な毒キノコ!
「ちょっと待って下さいね...。確か...ここに...あ!あった、あった!ほら...
これをその娘に飲ませて...」
マジカルポーチから取り出した、私特製の状態回復アイテムをローブの人物へ
手渡した。
「こ、これは...?」
「それは私の作った特製マジックアイテムで、混乱と毒としびれを同時に
治してくれる、中々の優れ物なんですよ!」
「これ、あなたが作ったマジックアイテムなんですか...!しかも状態回復
効果が三つもあるなんて...」
「ほら、感心してないで、さっさとそれを飲ませる!」
「は、はい!では...ほら...起きれる...?これを飲んで...」
苦しんでる女性を抱きかかえたローブの人物が、シスから貰った薬を女性の
口に運び、ゆっくりと飲ませていく。
「う...うううん......はっ!?こ、これは...!い、痛くない...痛くないぞ!」
薬を飲んだ女性が、抑えていた自分のお腹を擦って、痛くない事を確認すると
喫驚の雄叫びを上げる。
「す、凄いねこの薬...。あんなに苦しんでいたのに、もう完全回復してる...!」
「これだけ元気ならもう大丈夫ですね。それでは私は用事がありますので、
この辺で失礼させてもらいます...」
「ちょっと、待った~!」
「...って、キャア!?」
元気になった少女が、立ち去ろうとするシスを掴まえる為に、ジャンピングして
抱きついてきた。
「ちょっと、な、何をするんですか!鼻を打ったじゃありませんか!」
「だって、お前がお礼も言わせずに立ち去ろうとするから...」
ジャンピングでシスに抱きついてきた少女が、膨れっ面でシスに抗議の
言葉を投げかける。