六話・証拠を見せてあげるよ!
「なあ、ついて来るのは構わないんだけどさ...
何故、俺の腕にピッタリとつっくいているんだ?」
「いいジャン、僕の様な可愛い娘に腕を組まれて
めっちゃ、嬉しいでしょう?」
「まぁ...満更でもないけどさ...それに...」
「それに...何?」
「はぅ!いや、何でもないよ!うん、何でも!」
「ええ、その慌て方、何か気になっちゃうなぁ~!」
さっきからね...ミルナがギュッてする度、俺の腕に
柔らかい2つの膨らみが、ムニュッて当たってラッキーッ!
「...なんて、言える訳ないよね~」
俺はミルナに聞こえないくらいの
小さな声で呟く。
「それにしても、通り難いなぁ...
これ、さっきより人が増えてないか?」
俺は人の間を縫う様に進むが、あまりの人の
多さに少しげんなりしてくる。
「ちょっと、休憩しようか...?」
「え!もう休憩するの?さっきの休憩から
まだ、十分くらいしか経ってないよ?」
「いや~この町って、普段はこんなに人がいなくてさ、
人の多さにちょいと酔ってしまって...」
俺はそう言うと、人波から少し離れた場所にドスッと
座り休憩する。
「しかし、勇者様に聖女様か...なあ、ミルナ。
君はこの2人が、この町に来ているって知ってたかい?」
「勿論、知ってるわよ!」
ミルナは当然でしょうという顔で、ライの顔を
見てくる。
「そっか~勇者様と聖女様...
一体、どんな姿をしているんだろうな?」
「勇者様はどうだか知らないけど、聖女様はきっと、
物凄い美人でナイスバディーだよ!」
ミルナは満面の笑みで聖女の事を褒め称えている。
「そうか~?聖女といってるけど、意外にデブで
オークみたいな豚顔をしてるかもしれないぞ...あはは!」
「誰がデブで豚顔だっ!ぶっ飛ばすぞっ!!」
聖女への冗談を、自分が言われたかの様に激昂し、
今にもライを殴りかからんとばかりに拳を震わせている。
「おいおい、どうした?そんな大声を出して...
俺は別に、お前の事を言った訳じゃないぞ?」
「あ、あはは...ゴメン。つい自分の事を
言われている感じになっていたよ♪」
「お前...それはいくらなんでも、自意識過剰だぞ...」
「あは、あはは...そ、そうだよね~」
ライのその言葉に、勘違いをしましたと
ミルナは困った様な顔をし、薄ら笑いで誤魔化している。
「さて、まだ休憩をしていたいが、このままじゃ
本当に日が暮れるし...そろそろ行くかなっと!」
「OK~!じゃ、合体ッ!」
俺が腰をあげ、起き上がると同時に、
ミルナが俺の腕に、再び絡みついてくる。
「なぁミルナ...また、そんな感じでついてくるのか?」
「同然ジャン!サービスでもっと、くっついて
あげるから...ほれほれ♪」
「なななぁぁっ!?」
ミルナはそう言うと、更にギュッと腕に抱き付き、
俺の腕にたわわな膨らみが埋まっていく。
そのあまりの感触に、大きな奇声を上げてしまう。
「どう?嬉しいでしょう~♪」
ミルナが俺の方に顔を向け、にひひと声が
出ていそうな表情で見てきた。
あ、これ...俺がミルナのオッパイの感触に、
感無量してたのが、完全にバレてるパターンですわ~。
「さ、さあ...ギルドにさっさと行くぞ!」
「あら~何で、そんなに顔が赤いのかな♪」
俺の心とは違い、表情は正直なもので
みるみる真っ赤に顔が染まっていく。
ミルナはそれが楽しいのか、イシシッと意地悪に笑い、
俺の腕に抱きついては少し離し、
また抱きつくを、繰り返して遊んでいる。
こんちきしょう~!いい加減にしないと、
そのおっぱい揉みまくるぞっ!
...と、口から出せる訳もなく、
ミルナの意地悪?攻撃に顔を赤くし我慢しながら、
ギルドへと向かう。
そうこうしてる内に、何とかギルド前に到着した。
「あれ?もう着いちゃったんだ、つまんない!」
「つまんないって...ほら、いいからさっさと離れて!」
俺はそう言うと、ミルナを強引に引き剥がす。
「ちぇ~もうちょっと、楽しみたかったのに~!」
「いや、それは本当なら俺のセリ...」
「え!何々、今なんて言おうとしたの?」
俺の迂闊な発言にミルナは食い付き、ニンマリと
口角があがり、キラキラした瞳で俺の顔を下から覗き込む。
「コホン、さあ!こんな所でのんびりしてないで、
さっさとクエスト達成を知らせに行くとしようかな!」
俺はミルナのツッコミに、咳払いを軽く1つして誤魔化し、
急ぐ様に早足でギルド内へ入って行く。
「ねね。今なんて言おうとしたの?ねぇ~ライってばぁ!」
それを追いかける様に、意地の悪い言葉を投げかけながら、
ミルナが脱兎の如く、ライの後をついて行った。
「あれ、ライさんじゃないですか?」
ギルドに入ったすぐ近くに、レスティーが立っていて
こちらに気付いて話しかけてくる。
「クエストを達成するにはまだ早い様な...
それにリィーナさん達の姿が見えませんが...?
はっ!まさか、あの二人に何かあったんですか!」
緊急の事態かと、慌ててレスティーさんが近寄って
来る。
「安心して下さい。あいつらは無事ですから!」
「そうなんですか?それは良かった」
ライの言葉を聞いたレスティーは安堵して、
胸を撫で下ろす。
「では何故、ライさんがここに一人で来られたのですか?
さっきも言いましたが、あのクエストを達成するには、
ちょっと時間が早いような?」
「それはですね、あの森で結構強いスケットが
参戦してくれて思いの外、早く済んだんですよ」
「スケットですか...それでリィーナさん達はどこに?」
「あいつらは、そのスケットのスケットをやる為、
あの森に残りました。俺は代表でクエスト達成を知らせる為、
逸早く戻って来たって感じです」
「なるほど、そういう訳でしたか♪」
俺の説明にレスティーさんは納得し、笑顔を見せる。
「んじゃ、改めて...ギルドカードを渡しますね」
「はい、では受け取りますね···」
レスティーはライからギルドカードを受け取り、
カードリーダーらしき物に通す。
「ゴブリン退治数1...2...3...4...5。
クエスト達成確認しました!ご苦労様です!
では、ギルドカードは、お返ししますね!」
レスティーは達成を確認すると、
ライに笑顔を向け、ギルドカードを返す。
「あ、それと...これ、魔物の素材なんですが、
換金してもらっていいですか?」
俺は腰に下げていた皮袋を、レスティーさんに渡す。
「はい、では換金してきますので、少々お時間を頂きますね...。
それまで、そこのソファーにお座りになってお待ち下さい」
レスティーは受け取った皮袋を持って、
奥の換金部屋に入って行く。
「さて...おい、いつまでそこに隠れているつもりだ?」
俺はいつの間にか、ソファーの後ろに
隠れているミルナに声をかける。
「はは...僕って人見知りでさ、つい隠れちゃったよ♪」
「人見知りって...嘘をつけ嘘を!大体、お前が人見知りなら、
今までの俺との会話は何だったんだ?」
「う~ん、それは...愛してるから?」
「はいはい、それは嬉しゅうございますなぁ~」
「ああ、信じていないな!」
ミルナは顔をライ近づけ、
激おこな表情で頬を膨らませる。
「信じてますよ~愛してるからだもんね~♪」
「ああ、その態度ムカ付くなぁ!
よし!じゃあ、証拠を見せてあげるよ!」
「証拠?証拠って、どん――っ!?」
俺が言葉を言い終わる前に
ミルナの唇が俺の唇と重なり合った...。