五十一話・聖剣が消えた!?
「ロザリー様!モカ様!起きて下さい~っ!」
「ムニュ...な~に...?こんな朝から...うるさいなぁ...!」
寝ボケまなこで起きたロザリーが、そのうるさい声を上げる人物へ
ジト目を向ける。
「ふわぁ~アーミカじゃない...?どうしたの...そんなに慌てて...?」
その次に起きたモカが、慌てているアーミカに問う。
「そ、それがですね......」
「「ええぇぇ!ダーロット城から聖剣が消えたですって!?」」
流石の二人もその言葉を聞いて、スッカリ目が覚め驚いている。
「だって、あの聖剣って...幻創造魔法のせいで誰にも触れられないし、
動かせないはず...!」
「仮に動かせたとしても私やロザリーお姉さん以外じゃ、数十名の魔法使い...
しかも上位クラスが数十時間使って、やっと動かせるんだよ...!」
「それに加えて、王家の紋章の許可魔法もいる...。それなのに、一夜にして
どこかに聖剣を持っていっちゃうなんて、実質不可能なのに...どういう事!?」
ロザリーやモカが叫声を上げてその謎を考えてる中、俺はその声で目が覚めた...。
「うはあ~!ロザリー、モカ...それにアーミカもおはよう!」
「あ、おはようございますライさん!」
「それで、何をそんなに騒いでいるの...?」
アーミカ達は今の会話を含めた聖剣紛失の事を、俺に詳しく話してくれた。
「せ、聖剣が...あの部屋から消えてなくなった?」
「それで、ライお兄さんはこれについてどう思う?」
「う~ん。そうだな...」
...って、なんだ?体が重いような...?
それにこの体に伝わってくる至福の感触...これはまさしくオッパイッ!?
俺はこの感触をそう確信し、ゆっくり布団をめくって中を覗き見ると、
そこに可愛い謎の少女が俺に抱きついて寝ていた。
だ、誰...この娘?
「どうしたのライ?」
「い、イヤ...何でもない、はは...何でもね!」
俺はこの事がバレない様に作り笑いを必死に浮かべ、その場を何とか
誤魔化した。
「メイリ様もこの事態を重く見て、先程ダーロット城へ出向かれました。
お二人も起きたばかりですいませんが...」
「仕方がないって、もし聖剣が魔王の手にでも落ちたら大変だもんね!」
「んじゃ、ライお兄さん!私達ちょっとダーロット城に行って来るから...
いい子で待っているんだぞ♪」
「誰がいい子でだ!まあ、頑張ってこいよっ!」
俺がそう見送ると、ロザリーとモカは早急にダーロット城へと駆けて行き、
アーミカも仕事の為、部屋を出て行った。
「......三人とも出て行ったか」
この部屋から誰もいなくなったのを俺は確認して、再び布団をめくった。
「く~く~♪」
「...やっぱり、いる...な!」
謎の少女が布団の中にいるのを確認した俺は、やっぱり夢じゃなかったと思い、
「それじゃ...この娘、誰?」...っと、頭がグルグル困惑してしまう。
「と、取り敢えず、起こしてみようか...おい、起きろ!おいっ!」
「ムニニ...プハアァァ...あ!おはようッス、主様!」
「あ...!はい、おはよう!」
謎の少女に相好を崩す笑顔で朝の挨拶をされ、俺も思わず笑顔で
挨拶を返してしまう。
「...って、違うぅぅっ!お前は何者で何故、俺の布団の中にいた!?」
「質問ばかりッスね主様は...。私の名前は『サイカー・フォース』って言うッス!
サイカーじゃなく、サイカと呼んでくれたら嬉しいッスね♪」
自分の事をサイカと呼んだ少女が、ニカッと微笑んでVサインを決める。
「ふうん...サイカー・フォースねぇ...。ん...どこかで聞いた様な気が...?
イヤ!あるわっ!聖剣の名前じゃんか、それ!」
「そうッスよ♪」
「そうッスって...お前、偽名を使うならさ、せめてもっとわかり難い
名前を使えよ...」
あまりに安直な偽名に俺は思わずノリツッコミをかましてしまい、
乾いた嘆息をその口から洩らす。
それにしてもサイカ...ねぇ。俺は聖剣と同じ名前を名乗った人物を
ジッと見つめて観察する...。
髪型はサイドテールで、パステルグリーン色。
瞳の色はコバルトブルー。
身長はロザリー以下モカ以上で、肝心のバストさんは
まあ、平均より上...かな?
「偽名って...そんな事を言われても、ちょっと困るんッスけど?」
「ハイハイ...。それでそのサイカさんは、どうして俺の布団の中に
入っていたんだ?」
「何を言ってるんッスか!私の使い手である主様の側にいるのは
当然でしょう!」
サイカは然も当たり前ですって顔で、ライにそう述べる。
「主様って...あ!さてはお前、ここのメイドさんだな!」
「違うッスよ!」
「言うな!みなまで言うな!メイリが怖くてここに逃げて来て、思わず
俺の布団の中に隠れちゃったんだろう?」
「い、イヤ...全然違うッスって...!」
「いいから、いいから!黙っててやるから、もう何も言うな!」
俺はメイリの怖さを身をもって知っているので、サイカに安心させる様な
にこやかな表情で説得する。




