五話・ミルナーユ・グランド
「······」
「♪」
「······」
「♪」
「......なあ、1つ聞いてもいいか?」
「何?」
「何故、俺の隣に座るんだ?」
「いいジャン別に。
それに元々、ここに座ってたのは僕だよ!」
ミルナの顔が、俺の目と鼻の先くらいにまで近づき、
ジッと見つめながら話してくるので、
俺は思わず、顔を横に反らしてしまう。
そんな俺の態度も特に気にする事もなく、
ミルナは話を続ける......
「ねぇねぇライ、所でその袋って何が入っているの?」
ミルナはライの腰にぶら下げている皮袋に
ちょんちょんと指を刺す。
「これか?これはクエスト中に
敵がドロップしたアイテムが入ってるんだ」
そう言ってミルナに皮袋の中を見せる。
「角に...牙に...羽...。それに鉱石に薬草?
へえ~スゴい!結構、色んなアイテムが入ってるんだね!」
ミルナは、素材やドロップアイテムを見て、
喜色溢れる笑みで歓喜している。
「でも...クエスト中って言ったけど、ライって
もしかして、冒険者なの?」
「まあな、冒険者として一応ギルドには登録してる!」
俺は、懐からギルドカードを取り出し、
ミルナに見せた。
「そっか~ライも、冒険者なんだ!」
「もって事は...ミルナも冒険者なのか?」
「うんにゃ、違うよ。
僕の知り合いの娘が、冒険者をやってるんだ」
ライの質問に、ミルナは否定し顔を横に振る。
「へえ、知り合いがね...。
じゃあミルナって、もしかして学生さん?」
「ううん、それも違うかな」
再び顔を横に振る。
「何々、さっきから質問攻めだけど。
ライってば、そんなに僕の事を知りたいの?
嗚呼!ひょっとして、僕に惚れたのかな~♪」
ミルナは顔をライに近づけ、
イシシッと、意地悪そうな笑顔で言う。
「ううん、惚れてない」
「はうっ!そんなあっさりの否定っ!?」
ライに瞬時に否定されたミルナは、ガー―ンッ!と、
音が出そうな表情で落ち込んでいる。
「ま、ミルナがそんな冗談を言ってまで、言いたくないんじゃ
しょうがない。これ以上は詮索しない方がいいよね...」
俺はミルナを嫌な気分にさせたくないので、
これ以上、聞かない事にした。
「冗談って...はぁ...ライってノリが悪いな...っていうかさ、
君...鈍感とかよく言われるでしょう?」
「な、何でわかるんだ!?
まさか「テレパス」も使えるのかっ?」
俺は本当の事をズバリ当てられ、
頬から一筋の冷や汗が流れ落ちる。
「はは、これは相当のやつか...」
未だに不思議な顔をしているライを、
ミルナは半ば呆れた表情で見続けている。
「そんな鈍感じゃ、ライの周りの娘達も大変だね...」
「失礼だな!俺だって異性を意識くらいするってんだ!
例えば、ミルナのオッパ――ゲフン、ゲフン!」
「ん...ライってば、今なにを言おうとしたのかな~?」
ミルナはライの失言に、いっさい照れもせず、
おやおや~と、ライの顔を覗き込む。
「な、何でもないって!気のせいだ、気のせい!」
俺はミルナの顔を見れず、視線をずらしながら
必死に言い訳を口にする。
「もうライってば、照れ屋なんだから♪」
ミルナは、本音を照れて隠すライを見つめ、
相好を崩す。
それから、数十分が過ぎた......。
「さて~!休憩はここまでして、そろそろ行くか!」
俺はその場で背伸びをし、深呼吸をすると
ギルドに向かう為、ベンチから立ち上がり
移動の準備をする。
「じゃ、ミルナ!俺はそろそろ行くから、
ここでお別れだ!」
俺は手を振り、ミルナに別れの挨拶をする。
「ちょ~!こんな美女をこんな所に
置き去りにして、一体どこに行くつもりだよ?」
ライのいきなり過ぎる別れの挨拶に、
ミルナは目を見開き喫驚し、
その後、身を乗り出す勢いで憤怒する。
「置き去りって、変な言い方するな!
元々俺もお前も、ここには1人で来たんだろうが!」
ミルナの理不尽な憤怒に、俺はド正論を叩きつける。
「う~!それはそうだけど...。
でももうちょっと、付き合ってくれてもいいジャン!」
ミルナは表情が曇り、しゅんっと顔を伏せる。
「悪いけど、そうもいかないんだ。クエスト達成の報告をしに、
夕方までには、ギルドに行かなきゃいけないんだよ!」
「...じゃ、僕もギルドに一緒について行っていい?」
ミルナは伏せた顔を少し上げ、
チラッと上目遣いで、ライの顔を見る。
「ギルドにか?う~ん、俺は別に構わんが」
「んじゃ、早速ギルドに行こうよ♪」
ライの了解の言葉を聞くと、ミルナの顔が、
さっきまでの曇り顔が嘘の様に
晴れやかな顔になっていく。
「ほら~はやくはやく~♪」
そう言うとミルナの手が、ライの手を取り引っ張る。
「ミルナって、人見知りがない娘だな...。
知り合ってまだ、1時間も経っていないのに...」
俺の手を引っ張るミルナの顔を見て、
目を細め笑いながらも、渇いた声が口から漏れる。
「まぁ、いいか。可愛いし♪」
愛くるしい表情を見せるミルナの顔を見ると
俺の頬が、少し紅に染まっていく。