四話・神級魔法使いは、ボクっ娘少女
「おのれ!どこのどいつか知らないが...
俺の断りもなく、勝手に特等席に座りやがって~!」
まさに理不尽な怒りで、俺はベンチに座っている人物を
確かめるべく、こそ泥ポーズで素早く、遊具、木の裏と
次々に隠れながら、移動し近づいて行く。
「く~!まだ見えないな...後もうちょっとか...。
次...あの大木の場所で、顔が見える位置のはずだ...!」
俺はそう確信すると、次の移動場所の大木に、
見つからない様、素早く移動する。
「よし...ここからなら多分、見えるはずだ。
さて...俺の特等席に勝手に座ったやつのお顔を
拝見しようか...!」
俺は緊張しながら、大木の裏からスーッと顔を出し、
その人物を見る為、視線をベンチに向けると......
「...って、あれ?い、いないっ!?」
1つ前に隠れながら見た時は、確かに座っていたはずの人物が
突如とベンチから消えていなくなっていた。
俺が唖然とそのベンチを見ていると...
「君、何してるの♪」
「な―――っ!?」
突然、俺の後ろから誰かに声をかけられ、
心臓が飛び出るかの様にドクドクと
激しく鳴っている。
俺は、その身をブルブル震えさせながら、
声がした背後の方に、ぎこちない動きではあるが、
ゆっくりと顔を向ける...。
「やあ♪」
振り向いたそこに立っていたのは、
さっきベンチに座っていた人物と同じだった。
肩まで長い栗色の髪の娘。頭には白いベレー帽に似た
キャップを被っている。後ろ姿しか見ていないが、
間違いなく一緒の人物だろう。
俺は恐る恐ると顔の方を見てみると...
かなり整った顔立ち...うん、これは可愛い!
年齢はリィーナと同じくらいかな?
それにオッパイの大きさも中々にグットッ!
いやいや、そんな事より一体どういう事だ?
さっきの人物と、この少女が一緒なら
何故、俺の目の前にいたのに気付いたら
俺の後ろにいるんだ!?
俺は頭がおかしくなりそうだったので、
この人物に考えるより早く、質問を問いかけていた...
「い、いつの間に後ろに?だって君、さっきまで
そこのベンチに座ってたよな?」
「うん、そうだよ♪」
あっさりと肯定された。
ライは先の答えを聞くべく質問を続ける。
「じゃあ何故、俺の後ろに立っているんだ?」
「いや~ベンチで休憩してたらさ、人の気配がするじゃない?
で、誰だろうって思って「テレポート」を使って
そいつの後ろ...つまり、君の後ろに移動してみたってわけ♪」
「て、テレポートッ!?
それって『神級魔法』じゃないか、もしかして...使えるの?」
「へへ~ン、スッゴいでしょう!」
少女の鼻から、フンスと息が出て
見た目でわかる様な、自慢全開のドヤ顔をしている。
「ああ、確かに凄いな...!」
俺は神級魔法使いが目の前にいる事に
ビックリした表情で驚いている。
しかし、この自慢顔もわかる。テレポートといえば
さっきも述べたが、神級魔法に認定されていて、
おいそれと誰でも使える魔法ではないからだ。
「あ!そうそう...肝心な事、忘れてたっ!」
少女は、そう言うとライの方をジッと見てきて、
こう、話を続ける...
「君が悪党だったら、お仕置きしてやろうと
思ったんだけど...君って、もしかして悪党?」
「っ!?」
俺はこの言葉に焦った。神級魔法を使えるんだ。
ほかにも、別の神級魔法や、上級魔法を使える可能性が高い。
ヤバイ、俺...殺られる!
「い、いや違うって!証拠はないけど......
見よ!この爽やかな笑顔をっ!!」
焦る中、俺の頭に突然と思い浮かぶ、爽やか少年コウガ。
その爽やかな笑顔の真似をし、口角を上げ
歯をキラキラと光らせ、少女に見せつけた。
「どうだ、この笑顔を作れる奴が悪党だと思うかい?」
「ぷっ!何~その無理矢理感100%の爽やか笑顔...あはは♪」
少女は吹き出しそうになる口を両手で隠し
そして、ケラケラと満面の笑顔で笑っている。
よし、咄嗟の行動だったが、俺...勝った!
「その笑顔は、俺が悪党じゃないって事を、
信じてくれたと思っていいよね?」
「あはは、うん!信じるよ!その変な笑顔は
悪党にはできない表情だよ~♪」
そう言うとミルナは、涙を浮かべながら笑った顔を
ライに向け、可愛くウインクを投げかける。
何か、余計な一言があった様な気もするけど、
まあ...取り敢えず、誤解が解けて良かったよ...。
ありがとう、爽やか少年コウガッ!
でも、神級魔法を使える人物が、何故こんなに所いるんだ...?
俺はその疑問を聞いてみる。
「ねえ、君って...一体、誰なんだい?
神級魔法が使えるって事は、物凄く有名な魔法使いなのか?」
俺は少女に、探求心に近い言葉で問いかける。
「おいおい、人に誰かと尋ねるならば、
まずは自分から名乗るのがマナーなんだぞ!」
至極当たり前の答えが返ってくる。
「ごめんごめん、そうだよな。
俺は『ライ・シーカット』って名前だ。
気楽に、ライって呼んでくれ!」
俺は真面目な顔で自己紹介をする。
「ライか、良い名だね。僕は『ミルナーユ・グランド』
気楽にミルナって呼んでね。
それから僕は残念ながら、有名じゃないよ」
「神級魔法を使えるのに、有名じゃないんだ?」
「まあ、その内に僕って有名になるだろうから、
僕の活躍にご期待を♪」
うわ、自信満々だな...それより1つ気になる事が。
「さっきから僕、僕って言ってるけど、
もしかしてミルナって...男の子?」
「おい!失礼だな~!僕のどこが男の子なのよ?
どこをどう見ても女の子でしょう!」
ミルナは、ライの顔を目を細めジィ-と睨む。
まあ、君が女だってのはわかっていたよ。
だって、その見事なオッパ――コホン、
立派な2つの山を胸部に持っていらっしゃるし。
とは、流石に言えないので......
「ゴメンゴメン!だってさ、その一人称。
僕って言ってるから、つい男の子なのかなって思ったんだよ!」
...と、別の言い訳で誤魔化した。
「あ、この一人称ね。僕って昔はやんちゃで、
男の子とばかり遊んでいてさぁ~この一人称は
その時の名残なんだよ、あはは♪」
俺は今も多分、やんちゃだろっと思ったが
口には出さなかった。
「所でライは、何をしここに来たの?」
「俺はまんまだよ。ここには休憩をしにさ」
突然の出来事のオンパレードでスッカリ忘れていたが、
俺は、ここに休憩をしに来たんだった。
その事を思い出した俺は、
休憩をしに、ベンチに足を向け歩いて行く。