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三十話・クエスト開始



王都ダーロットの門から外に出て、

しばらく歩き続けるとその先に少し荒れた草原が俺の目に見えてきた。



「確か...討伐クエストのターゲットのダークキャットは、

ここによく出没するはず...」


メイリがその場に身を構え、サーチアイの魔法を詠唱し、

左右を見渡す様に目線を向けて、ダークキャットの事を探している。


「どうだいメイリ?見つかったかい?」


「いえ、まだ...あ!見つけた!ライ、あそこにいるわよ!」


ダークキャットを探していたメイリがある方向を目線を送ると、

サーチアイの効果で、目が赤く光った。


「え...?どこにいるんだ?」


「ほ~ら!あそこだよ、あそこっ!」


サーチアイが発動した場所を指差すメイリだが、

いくら目を凝らし見続けても、俺の瞳には全く映ってはくれなかった。


「しょうがない...ライはあっちの方角に身を構えて、その使いたいっていう

魔法の準備をしててよっ!」


「わ、わかったよ!あっちの方角......あ、南西の方角だな...!」


俺はメイリが指差す方向に腕を突き出し、魔法詠唱の準備をする。


「ダークキャットが、こちらに気付いた...!あ...どんどんこっちに

向かって突進してくる!」


「え!マジで!俺にはまだ全然、見えないんですけどぉ!?」


俺は構えている先の方を必死に凝視するが、突進してくるダークキャットの姿が

全く見えない事に焦り、額から出てくる大量の汗がとまらない。


「ライ!そんな焦らないで、私がカウントダウンするから...

そのタイミングに合わせて!」


「カウントダウン...だな、よし!わかった!」


メイリの叱咤激励に俺のあたふたとしていた動揺がスッと収まって、

再び、魔法詠唱の為に身構える。


「カウントダウン行くよ!5...4...3...2...1...ッ!今よ魔法を放ってっ!」


「了解!行くぞ...」


メイリのタイミングに合わせて詠唱を終えた魔法を放つ為に、

俺は思いっきり両手を突き出す。


『ハアァァッ!マキシックゥゥゥ・ブリッカァァァ――ッ!!』


..................


..................


..................?


「あ、あれ?魔法が発動...しない?」


放った魔法が全く出てこず、その場には俺の声だけが虚しく響き渡る...。


「ちょっとライ、どうしたの!魔法が発動していないみたいだけど!」


「イヤ...ちゃんと詠唱したんだけど、魔法が全然、発動しないんだよ?」


「ええ!ダークキャットがどんどん接近してきてるわよ!」


「マキシックゥゥ・ブリッカァァ――ッ!

マキシックゥゥゥ・ブリッカァァァ―――ッ!!」


「おっかしいなぁ...!何で発動しないんだ?」


いくら気合いを入れて魔法を詠唱しても、うんともすんとも言わず、

俺の両手からは、何の魔法も全く出てこない。



「もしかしたら、その魔法って、攻撃魔法じゃないんじゃないの?」


「イヤ...覚えた時、確かに...攻撃魔法としてイメージがあったんだ!」


あの時に頭に浮かんだ魔法のイメージは何度思い出しても、攻撃魔法で

間違いないはずなんだが...!?


「しょうがない...取り敢えず、こいつは倒しちゃうよ!」


『コールド・バスタァァァーッ!』


メイリが魔法を詠唱すると、氷の粒子が一点に集まり大きくなった瞬間、

波動の如く氷の塊が発射される!


「グキャアアアアアアァァァ――――――ッ!!」


飛んでいった氷の波動が遠くで何かに当たった瞬間、爆発音の轟音が周囲に

響き渡り、それと同時に獣が雄叫びを上げている様な

断末魔が聞こえてきた!


「ふう...」


メイリがひと息吐くと俺の所に歩いてきた。


「あ、ありがとう。助かったよ!」


「別にいいのよ。サポートが私の役目だし...それにしても、

何で発動しなかったのかしら?

魔法を覚えた後、ステータスカードはチェックしてみたの?」


「あ、そうだった!ステータスカードを見ればわかるんだった!」


「もしかして、チェックしてなかったの?」


「はは...後でやるつもりでスッカリ忘れてた!」


「ハァ、それで試し打ちって...」


「んじゃ、改めて...チェック、チェック!」


俺のお調子者ぶりに、少し呆れた表情で溜め息を吐くメイリをよそに、

覚えた魔法を確認する為、ステータスカードを取り出してチェックする。


「え~と、どれどれ...。攻撃魔法欄はここで......おっ!あったあった!

マキシック・ブリッカー攻撃無属性魔法...!ほらやっぱり、ちゃんと覚えてる!」


ステータスカードに記載されているマキシック・ブリッカーの名前を見つけて、

ひとまず、俺は安堵で胸を撫で下ろした。


「それじゃ、何で魔法が発動しなかったんだ...ん?

ハアァァァ―――ッ!?な、なんだ!このMP消費量はっ!?」


「何、いきなり大声を上げて!MP消費量がどうしたの!?」


MP消費量の事で叫喚する俺に、ビックリしたメイリが

どうしたのかと聞いてくる。


「MP消費量200って...通りで全く魔法が発動しない訳だ...。

だって、俺の現在MPは、55だし...」


「なっ!MP消費量が200ですって!神級魔法LVの消費量じゃないの!?

もしかして、その魔法って...神級魔法なんじゃっ!?」


あまりのMPの消費量にメイリが目を丸くして喫驚している。


「はは...それは流石にないよ!あのオッパイ店長には悪いけど掘り出し物店で、

神級魔法の書なんか、絶対に見つかる訳ないって!」


「それがそうでもないのよ。神級魔法書ってね...偽造魔法書と似ていて、

その見分けかたが殆ど、わからないんだよ...!」


「偽造魔法書?何それ?」


「簡単に言うなら、昔の人が作った魔法書の偽物だよ!」


「偽物...それと今覚えている俺の魔法とどう関係が?」


「偽物はその名前の通り、頭に魔法が浮かんでこないんだけど、

神級魔法も覚えられる人以外には、頭の中に浮かばない仕組みなの...

なので、偽物魔法書として掘り出し物に並ぶ事もあるって事!」


メイリが偽物魔法書と神級魔法書の似ている所を、詳しく説明する。


「そっか...だから、この魔法が神級魔法の可能性が十分にあるって事なのか...

おお、これは凄い!」


俺はその可能性があるかもと、感激な感情で歓喜に震えていた。


「でも、その魔法が使える様になるまで、まだまだ先の話しだよね?」


「うう...それを言っちゃ駄目っ!」


歓喜している俺に対し、メイリが要らん水を指してくる。


「MP消費量200...今のMPの4倍か...。死ぬまでに使えるかな、この魔法...はあ」


俺はステータスカードをジッと見つめ続け、

その途方もないMP量に、思わず落胆の溜め息が口から洩れる。


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