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二十九話・普通の喋り方


「イテテ...流石、メイリ!

マジで容赦のないドSに相応しい攻撃だったぜ!」


崩れた壁の瓦礫の中から出てきたクナは、この非道な攻撃に対し

軽い毒のこもった称賛をしてくる。


「あら?どうやらまだ...おかわりが欲しいみたいね?」


ドS発言にイラッとしたメイリがクナにそう告げると、

再び身構えて、魔法を詠唱しようとする。


「ダア~ッ!それはもう勘弁してくれ!これ以上それをやられると、

このギルドが半壊しちまう~っ!」


クナは、もうギルドが壊されるのは流石にゴメンという顔で、

前に突き出した手をフルフルと振って、やめてのサインを懸命に送る。


「そうですか、おかわりは要らないんですか...残念」


「残念って...こいつのドSな性格を久しぶりに実感したぜ...!」


「ん...今何か言いました?」


「いいや、何にも言ってねえぞ!本当だぞ!」


ボソッと呟いた小さな声に気づくメイリに対し、

クナは頬に冷や汗を掻き、目を丸くして必死に言い訳をする。


「それよりクナ、私達のクエストとパーティの受理はもう済みました?」


「お、おっと!そうだった、忘れていた!クエストとパーティ申請は

バッチリと受理しておいたぜ!」


そう言ってクナは、懐から受理書を取り出してメイリに手渡す。


「確かに受け取りました。それじゃ...ここにもう用はないですね...。

さ!行きましょうか、ライ!」


これ以上クナにからかわれたくないのか、冷静な口調で受理書を受け取ると、

ギルドを出て行こうとメイリは、足を出入口に向ける。


「キシシ、そんじゃメイリ~頑張ってソイツと、イチャイチャしてこいよ~!」


「イチャイチ...!?よ、よけいなお世話ですっ!」


「おお、怖!またギルドが壊される前に退散しますか、じゃあな!」


懲りないクナに色恋沙汰を振られ、顔を真っ赤にしているメイリをよそに、

本人は言うだけ言って、ちゃっちゃと奥の方にダッシュで引っ込んでいった。


「あ...もう!逃げ足が早い!しょうがない、この愚痴は後で言うとして...

ライ、足を止めてゴメンね。じゃあ...行こうか!」


「お、おう...」


奥の方に逃げていくクナに軽い愚痴をこぼしつつ、

メイリは俺と一緒に、ギルドの出入り口に向かって歩いて行く。



――――――――――



「まったく、クナは相変わらずの性格でしたね...!」


クナの事を思い出しているメイリは、頬を膨らませた様な表情で

プンプンと怒っている。


「······」


「ど、どうしましたライ?私の顔をジッと見て...

ち、ちょっと、恥ずかしいですよ!」


急にジッと見つめてくるライに対し、メイリは頬を紅に染めて

慌てた表情で照れている。


「イヤ...メイリって、メイド言葉じゃない普通の言葉で

喋べれるんだなって思ってさ!」


「そんなの当たり前でしょう、

メイド言葉はあくまでも仕事用の喋りなんですから!」


「そっか~!でも普通に喋っているメイリって、何か可愛いよね♪」


「だ、だから、可愛い言うなぁぁっ!」


メイリは年甲斐もなく可愛いと言われるのが嫌なのか、単に照れているのか、

顔を真っ赤にして、可愛いの単語に拒否する叫声を上げる。


「そう、それそれ♪」


「うう...ライと出会ってから、

私の何かがどんどんと崩れていく感じがします...ハア」


メイリはその無邪気な笑顔を見て、こちらにライが来てから起こった

数々の事をふと思い出し、諦めに近い口調で呟くと深い溜め息をそっと吐いた。



――――――――――



「お、門が見えてきた!」


数十分くらい歩いた俺達は、王都の出入口のある門に到着する。


「おや...あれは、メイリさんじゃないか!」


「珍しいな...メイリさんがこの門に来るなんて?」


門に近づいていくと門番の兵士達が、ライの横にいるメイリを発見して

少し喫驚を浮かべた表情をしている。


「お勤め、ご苦労様です。はい...これ、クエストの受理書です!」


そう言ってメイリは、門番の兵士の一人に

受理書を手渡す。


「ウムウム...はい!クエスト内容...確認しました!」


受理書を確認した門番の兵士は、メイリに受理書を返す。


「でもどうして、メイリさんがクエストに?」


「確か...メイリさんって、冒険者家業をやめたと聞いていたのですが?」


「それはそうなんですけど、ま...色々ありましてね。

簡単に言うなら、この子のお手伝いの為に一時復帰って所かしら?」


メイリが門番の兵士にそう告げると、ライの方に視線をチラッと向けてくる。


「凄いなあの子...あの鉄の鬼と呼ばれたメイリさんの決定を覆すなんて...!」


「嗚呼...下手したらメイリさんには、貴族達も口答えできないって話なのによ...!」


二人の兵士がそれぞれ、ライ達に聞こえないくらいのかぼそい声で、

こそこそと何かを述べている。


「それでは...もう通っていいでしょうか?」


メイリは何か感づいたのか門番の兵士達に少し威圧感のある口調で、

通行の許可を求めてくる。


「は、ハイッ!それは勿論です!」


「さ!どうぞ、いつでもお通り下さいませ!」


瞳はニコニコとしているが、顔は能面の表情をしているメイリに

門番の兵士達は慌てふためき、早急に通行の許可を出す。


「わかりました...それではお二人とも、ごきげんよう♪」


「「ハッ!どうか、お気をつけてっ!!」」


あたふたしている門番の兵士達に一礼すると、

ライ達はダーロット門の外へゆっくり歩いて行く。


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