二十五話・謎の魔法書
掘り出し物市場から帰って来て、数時間が経った夜...。
「う~む、わからん!」
「何がわからないの?」
「この魔法書の事だよ...」
俺は魔法書を開いて中を凝視するが、書いてある事が
全くわからなかった。
「ああ、それか......。
確か、あの乳オバケの店で買ったっていう魔法書だよね...?」
「ちょ!何で、それを知っているの!」
モカに、魔法書をどこで購入したのか、
もろバレだった事実に、俺は目を丸くして驚く。
「何でって、アーミカさんから聞いたんだよ♪」
「はは...あの娘、おしゃべり好きだからなぁ、
今日の事は、色々とバッチリ聞かせてもらったよ!」
モカとロザリーは、あっさりと情報の発信者をバラす。
「やっぱりアーミカか!あいつ、口が軽そうだもんな...はあ」
まあ、そうだろうな~と、心で納得はしたが
俺の表情は少し呆れ顔になり、嘆息を軽く吐いた。
「...で、この魔法書の文字を読む方法ってあるのか?」
「あるよ...というか、魔法書は文字を読むとかじゃなくて、
心で感じるんだよ!」
「は?感じる...?全然、意味がわからん...」
俺はモカの言っている意味が理解できず、
表情がハテナ顔になる。
「そうだね、口で言うより実行した方が早いか...。
ライ、その魔法書をおでこにくっつけてみてよ?」
「おでこにって......こうか?」
俺はモカに言われた通りに、魔法書をおでこにつける。
「そして、魔法書から何かの念が送ってこられる様な感じを、
頭の中で想像してみて...」
「ムム...こんな感じかな?」
俺はおでこにグッと力を入れ、
魔法書と会話している様なイメージを想像する。
「お、魔法書が光ってる!」
「どう?頭に何か浮かんでこない?」
「んん~。そう言われれば、文字みたいのが浮かんで見える...!」
モカが言う様に、頭の中に何かの文字が浮かんで見えている。
「文字が浮かんだみたいだね。おめでとう!
その魔法書の魔法は、無事にライのモノになったよ!」
「え...マジ?、これだけで覚えたの?」
余りの簡単さに俺は思わず、嘘でしょ?と
言う顔をしてしまう。
「うん。さっきも言ったけど、魔法書って...読む物じゃなく
そうやって、頭に感じるものなんだよ!」
「へえ…あ!ま、魔法書の色が!」
魔法書の色が、役目を終えたと言わんばかりに、
モノクロ色に変わっていく。
「そりゃ当然よ。魔法書は、一回こっきりの
消費アイテムだもの!」
ま、考えればそうだ。もし永久に使えたら、
レアモノ魔法書1つで、一生稼いでいけるだろうしな...。
「それでライ!一体、どんな魔法を覚えたの?」
「どんなって?えーと、確か名前は...
『マキシック・ブリッカー』だったかな?」
「マキシック・ブリッカー?そんな魔法、知らないな...」
「私も全く、聞いた事がない魔法だよ!」
「二人にもわからない魔法なのか...これ?」
ロザリーとモカは、俺の覚えた魔法の事を、
知らないし、聞いた事もないらしい。
「意外に神級魔法だったりして♪」
「ないない、だってあのインキチ全開の
乳オバケの店だよ!」
「だよね~。私も呪い系だと思ったもん♪」
「ちょい待てぇぇぇ~いっ!
お前、この魔法書が呪いの魔法かもしれないのに、
俺に魔法書を使わせたっていうのか!?」
モカの口から出た驚愕の事実に、
俺は身を乗り出し、唾が飛ぶ勢いで叫喚する。
「え...!あはは...いいじゃん!結果違ったんだしさ♪」
「笑って誤魔化すんじゃない!罰としてそのオッパイをも......!?
イヤ...な、何でもない...許すよ...」
「おい!今、何を言いかけてやめ、それで許した!」
モカは、明らかに自分の胸にライの視線が向けられ、
許しの言葉を吐いたのがわかり、顔を真っ赤にして憤怒する。
「まあまあ、落ち着きなさいって、ほら...どうどう!」
「私は馬じゃない~!それに...
それをタユンタユンさせて言うんじゃない!」
「キャッ!ちょっと!どこを掴んで...
...って、イタタタタァァァッ!?」
モカは叫喚し、ロザリーのオッパイを鷲掴み、
思いっきり捻り上げる。
「ハア...まったく、何やってるんだお前達...」
「「元々は、ライのせいでしょうが!!」」
ライの呟いた呆れ言葉に、部屋中に響く様な声で
二人がシンクロさせて叫喚する。
そんなやり取りが続いた夜も明け、
次の日の朝が来る...。
「ロザリーさん、モカさん...
私、昨日も言いましたよね!淑女たる者が、
男性の部屋にお泊まりするなど...言語道断だと!」
「ハイ!確かに言いました...」
「それなら何故、またライ様の部屋にお泊まりを?」
「そ...それは、ライの事が好きだから...かな?」
「右に同じく...」
「好きになったって...貴女達、ライ様とは出会って、
まだ2日足らずでしょうに...」
「チチチッ時間なんて関係ないよ、好きになるのはさ!」
「そうだよ!あ、でもロザリーお姉さんは行き遅れで
焦ってるだけかも知れないけどさ~!」
「おい、モカ!誰が行き遅れじゃい!
私は十代だと、いつも言っているだろうがぁっ!
行き遅れなんて言葉はなぁ!メイド長みたいな者を
差して言うんじゃっ!」
モカの発言にロザリーは憤怒で叫び、メイド長を指差し
思わず本音を絶叫する。
「ほう...ロザリーさん。今、何と言いました...?」
その絶叫を聞いたメイド長の体から、どす黒いオーラが
噴き出している。
「イヤ...その...口が滑ったと言いましょうか...
本音が出ちゃったと言い――――ハウッ!?」
必死の言い訳が終わる前に、ロザリーは顔を思いっきりと
鷲掴みにされ、持ち上げられる。
「もう、馬鹿だな~ロザリーお姉さん、そんな事を言――――ナウッ!?」
モカが、もう一つの手で鷲掴みにされ、
持ち上げられる。
「モカさん。貴女も同罪です...よっ!!」
「「アイタタタタタタタタタタタタタタタッ!!!」」
メイド長は力のある限り、
全開でロザリーとモカの顔を鷲掴みにして握り潰そうとする。
そんな地獄の様な時間は、ロザリーとモカが気絶するまで
ずっと、続いたそうだ...。




