二十一話・掘り出し物市場
俺は今、アーミカの言っていた場所、
掘り出し物市場に来ている。
「へえ...ここ凄いな!様々な店が見渡す限り、
アッチコッチに、いっぱいあるじゃないかっ!」
目に入ってくる様々な店舗を見て、
俺の心の中がワクワク感で、いっぱいになる。
「そうでしょう!私もたまに来るんですけど、
店の中を探しまくり、レア物を見つけ出した日には、
勝利の雄叫びを上げちゃっています!」
アーミカが、興奮を隠しきれずに叫喚に近い声で、
ライに掘り出し物店のなん足るかを語る。
「で、アーミカはどんなレア物を発掘したんだ?」
「ふふ...よくぞ聞いてくれました!私がここで発掘した
一番のレア物は...じゃ~ん!これですよ!」
アーミカが懐からごそごそと、ナイフらしき物を取り出して、
ライに見せつける。
「ナイフか...確かに綺麗な装飾のナイフだな...」
「チチチ...それだけありませんよ!
このナイフは何と!オリハルコン製なんです!」
「オリハルコンって、あの伝説の!?」
「ハイ!鑑定も済んでいるから、
正真正銘、本物のオリハルコンナイフですよ、これ!」
驚きを見せる俺の前で、アーミカは自慢する様に、
ナイフをフリフリと振っている。
「ヘエ...これが、伝説のオリハルコンか...。
なぁなぁ!そのナイフ、ちょっと触らせてくれよ!」
「あ、それは無理ですよ!」
「無理って、何故に?
ちょっとくらい、触らせてくれてもいいじゃん!」
「そうさせてあげたいんですけど無理なんですよ、
だって...このナイフには『装備用魔法』が添付されていますから!」
「装備用魔法?」
俺は初めて聞くその単語に、ハテナ顔をする。
「装備用魔法って言うのはですね...簡単に言えば、
装備者以外の者が持つとその者に対して自動魔法が発動し、
天罰的ものを与える魔法です」
「天罰...!?」
「あ、ちなみに私のナイフには、1キロ先くらいまで
吹っ飛ばす風の魔法が添付されてます」
「い、1キロ...それ、生存絶望LVじゃねえか...!」
「だから、私のナイフを見かけても、
決して触らないで下さいね!」
「そんな物騒なもん、死んでも触るか~!」
俺は叫喚し、アーミカのナイフから
思いっきり距離を取る。
「はは...でも、カウントダウンの間は、
ただ重くなるだけなんで、触っても大丈夫ですけどね♪」
「カウントダウン?」
「はい!カウントダウンはそのままの意味で、
警告音声が鳴った後に5から0までカウントが入り...
0になったら装備用魔法が発動って、流れなんですよ!」
「なるほど、いきなり発動じゃないんだ?」
まあ、考えりゃ当たり前か...。
ウッカリ落とした装備用魔法付きのアイテムを、
親切心を持った人が拾う可能性も十分にありえるしな...。
「じゃあ、私は行きたい店があるので、一時間後に
ここで落ち合いましょう!」
「わかった。一時間後だな」
「ハイ!ライさんもレア物を発掘できる様、頑張って下さいねっ!
では、行って参りますっ!」
アーミカは、幸運を祈ると言わんばかりの敬礼をした後、
市場の店に目掛けて、一目散にダッシュして行く。
「うわ...アーミカのやつ、めっちゃ気合い入ってるな...
さて、俺も頑張ってレア物を探しますか...」
まずは、あの店から行くか...。
俺は目の前の店に取り敢えず、入ってみる。
「いらっしゃいませ~♪」
店員が元気良く応対してくる。
ライはそれに無言で一例し、店の品物を値踏みしていく。
「う~ん...特にめぼしい物はないな...次に行くか」
俺は入った店を出て、また次の店に入るを繰り返し、
次々と色んな店を巡り歩いていく。
「この店は...魔法書の店か...。何か独特の雰囲気を感じる店だな...。
よし、次はここに入ってみるとするか...」
俺はこの店が持つ独特な雰囲気に、
少し期待を胸にして、店へと入っていく。
「あら?可愛い坊や。いらっしゃい♪」
この店の店長らしき人物が、艶っぽい声で出迎える。
オッパイ、デケェェェ―――――ッ!!
俺は店長のあまりのオッパイの大きさに、
叫びが口から洩れそうなくらい、心の中で叫声を上げた。
今、ボヨヨ~ンってなったぞ!ボヨヨ~ンッてっ!!
俺はもう、店長のオッパイにしか視線が行かなくなっていた。
「どうしたの坊や?何か買う物はないのかしら?」
店長が前屈みになり、オッパイの谷間を見せながら
ライに近づいてきて、何を買うのかと聞いてくる。
「はいいっ!?じ、じゃあ...これ...これ下さい!」
谷間のインパクトに俺は動揺し、そこら辺にあった適当な魔法書を
パッと手に取って、プルプルと震える手で店長に手渡した。
「これは...銀貨7枚って所かな?」
「7枚ですね!はい...銀貨7枚...って、ハアアウッ!?」
俺が銀貨を手渡そうとすると、
店長がいきなり後ろから抱き付いてきて、
その状態のまま、手に持っていた銀貨を数え出す。
「4...5...6...7枚、確かに受け取ったわ。
お買い上げありがとうね、坊や♪」
「かぉっ!?」
数え終わった店長が、俺の顔に自分の頬を付け
感謝の言葉を囁く。囁いた吐息が顔にかかると
俺は、全身がポォォォオォォォォッと叫び出しそうなくらい
顔全体が、真っ赤に染まっている。
そのまま、フラフラと店を出た俺は...
心の中でこう叫喚する。
ヤフゥゥ――ッ!
掘り出し物市場、最高ォォォッ!
...と。
それから、一時間が経過し...約束の集合場所に、
俺は戻ってきた。
「お、来た来た♪
それで、どうでしたライさん?掘り出し物市場は?」
「本当に、最高でしたっ!色々と堪能させてもらい、
感謝の念しか出てきませんっ!!」
俺は、完璧な敬礼でアーミカに感謝する。
「は...はあ、それは良かったです...あはは」
ライの恍惚な表情を見て、我が振り直せを感じたのか、
乾いた声でアーミカは苦笑する。
「でも、そんな表情をしているという事は、
とてつもないレア物を見つけたって事ですよねっ!」
「へ...?」
アーミカの質問に我に返った俺は、
手に持っている魔法書に目線が向いた。
「あ!それが見つけたレア物ですか!
見た所...魔法書みたいですけど?」
「ああ、そうみたいだね...?」
俺は見もせず買った、謎の魔法書を見て
ニガ笑いする。
「え?レア物っぽいから買ったじゃないんですか?」
「い...イヤ~そうなんだけど...はは」
「ん...?魔法書......あっ!?
ハハ~ン!なるほどねぇ...。あの魔法書のお店ですかぁ...!」
アーミカが、何かをふと思い出した途端、
俺の顔をジト目で、ジィィィ~と凝視してくる。
「なんですかねぇ...その視線?」
「オッパイ...ッ!」
「っ!?」
「密着...ッ!」
「ッ!!」
アーミカの口から次々と出てくる単語に
俺の心にダメージが蓄積していく。
「はあ...やっぱり、あの乳オバケの店で
それ...買ったんだ......」
「はいはい、あのオッパイさんの店で買いましたよ!
でも、いいじゃん!オッパイ堪能代だと思えば、
この魔法書の購入くらい安いものさ!」
アーミカの追及に逆ギレに近い言い訳を
俺は叫び上げる。
「そこまで、逆ギレされたら、
最早...清々しさを感じますね...はは」
アーミカは、あまりのライの開き直りっぷりに、
ニガ笑いを浮かべ、溜め息が口から洩れる。
「あ、あれ?そんな事より、アーミカ...時計搭を見てみなよ!
そ、そろそろ屋敷に帰る時間じゃないかな~?」
俺はその場を誤魔化す為、ワザと大きめの声で
掘り出し物市場の広場にある時計塔を指差し、
帰る時間だとアーミカに伝える。
「あ、本当ですね!ミミを待たせると後が怖いし、
急いで、戻っちゃいましょうか!」
「おう!」
俺は魔法書をマジックリュックに、
アーミカは、自分の買った掘り出し物をマジックポーチに入れ、
それぞれ、ミミの待つ屋敷の門前に向かって走って行く。
「ふう、何とかこの場を誤魔化せたな...」
俺はアーミカに聞こえないくらい小さな声で、
そっと呟いた...。