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二話・町の噂話


「ほら~ライったら!もうちょっと足を早く動かす!」


「そうですよ、ライさん。それ、走ってるっていうより

引きずられてるじゃないですか、ですか!」


「そんな事を言われても...俺、さっき起きたばかりだぞ...

それでいきなり走れって言われても、無理だってぇ...」


俺は、幼馴染み達に引っ張られて...いや、引きずられながら

愚痴をこぼしつつも、頑張って足を早く動かす。


「なあ...聞いたか?」


「聞いたって何を...」


ライ達が、ギルドに向かう途中、町人達が

何かヒソヒソと話している声が、

風に乗って耳に入ってくる。


「ほらあれだよ、例の王都の噂!」


「ああ、『勇者召喚の儀』のことだろ?」


「もしその噂が本当なら、魔王がこの世界に現れたって

噂も本当なんじゃ...」


「ごく···や、やめろよ!縁起でもない!!」


「そんな物騒な話しより、飯でも食いに行こうぜ!」


「だ、だな...!」



くわばらくわばらと、言わんばかりの表情で

町人達が、ライ達とは逆の方に歩いて行く。


「勇者と魔王か...」


昔の歴史の書物等を解くと、確かに

存在したといわれている伝説の人物達。

だが、いたと知らしめる物が1つも残っていない

架空な存在でもある。


「ねえ、今の話って本当なのかな?」


リィーナにも今の噂話が聞こえたらしく、

頬に冷や汗を掻いた表情で、ライの顔を見てくる。


「いくらなんでも勇者や魔王なんて眉唾すぎるって。

例え本当だとしても、俺達みたいな市民には

雲の上の話し過ぎてどうもならないさ!」


「ま、それもそうだよね...」


ライが苦笑を含んだ言葉を吐くと、

リィーナも困惑な表情で言葉を返す。


噂話の真実がどうのこうのと話していると、

俺達はギルドの出入り口前に到着した。


「さてさて、良いクエストはまだ残ってるかな♪」


アルテはクエストボードに、脱兎の如く走って向かう。

それに続けとばかりにリィーナも、

クエストボードに早足で向かう。


「む、むむむっ!」


身長が少し低いアルテは懸命に背を伸ばし、

ボードとにらめっこ。リィーナは顎に手を当て

視線を報酬額に向け、どれが良いか選別している。


「むむむ、はっ!?これは!ねね、リィーナお姉ちゃん!

このクエストなんかどうかな?」


背伸びした腕で、ちょんちょんと依頼書を指差す。


「ん、何々?依頼内容はゴブリン退治...数は5匹、

報酬額は銀貨6枚...おお、中々いいんじゃない!

よし!これにしましょうかっ!」


そう言うとリィーナは、ベリっと依頼書を剥がし

ライに手渡す。


「ライ、これに決めましたので...」


「クエスト申請、お願いします、ますっ!」


「はは...俺の意見は聞かないんだ...」


俺は苦笑いで溜め息を1つ吐き、リィーナ達から

依頼書を受け取って、受付の方に歩いて行く。


「あ!ライさん、おはようございます!

今日もリア充してますね♪」


受付嬢はライから依頼書を受け取り、

笑顔で対応する。


俺に話しかけてきたこの人は

ギルドの受付嬢のレスティーさん。


エルフ族の女性で、髪は金髪で肩より長く、

瞳の色は淡いブルー。


そして、何より語りたいのが

エルフ族らしからぬオッパイの大きさ!

このオッパイに目線が行き、何度リィーナから

ビンタを食らった事か!


別に見たっていいじゃん、本人が気にしてないのにさ!

あ...俺の後ろから変な威圧感が...!


ちなみに、年齢は内緒にしているらしく、

アルテが一度、興味本意でレスティーさんに

年齢を聞いた事があったのだが、

その後、静かに待合室にアルテが連れて行かれた。


数十分後、アルテが待合室から出てきた時、

化け物でも見たのかというくらい色のない表情になっており、

それからしばらくレスティーさんが近づく度、

「ごめんなさい!!」と、何故か謝るようになった。


そんなレスティーさんなのだが、普段は気さくな性格で

俺達パーティは、よくお世話になっている。


「いや、だからレスティーさん!

何度も言ってますけど、二人はただの幼馴染みで

そんなんじゃないんですってば!」


「はいはい、そういう事にしておきますね♪」


レスティーさんはうんうんと顔を縦に振る。


「ま......それが本当なら、私的には嬉しいんですけどね...」


ライに聞こえるか聞こえないかの

小さな声でそっと呟く。


「ん?何か言いました?」


「い、いいえ。何も言ってませんよ、はは...。

それより、クエスト申請の受理をしてきますね。

少々お待ちください!」


レスティーは、平静な振りを見せるも、

表情は慌てていて頬に汗を落としながら、

早急に奥の部屋へ入って行く。



数分後······。



「ライさん、お待たせしました。

クエスト申請の受理の方、無事に終わりました!

では、クエスト頑張って下さいね!」


依頼書を挟んだ書類をトントンと机に軽く叩き、

レスティーはニコっと笑顔を見せる。



――――――――――



ギルドを出て幾時間、俺達はクエストの現場の

『西の森』入り口に立っている。


「ふう、やっと着いたぞ。西の森!」


そう叫んだアルテの声が森に響く。



【西の森】

俺達が住む村【カロン】から草原を少し抜けた所にある森。

薬草やキノコ等の採集、スライムやゴブリン等の討伐場として

初級冒険者によく利用される有名な場所だ。



「じゃ、ゴブリン退治開始しますか!」


リィーナが杖を構え、魔法を詠唱する。


『サーチ・アイ!』


リィーナの顔が森をぐるっと見渡す。

ある方向の場所に顔が合った時、

リィーナの目がキラッと光る。


「見えた!ここから北東ゴブリン発見!」


「北東だね、お姉ちゃん!行こう!ライさん!」


「ふう、了解~」


「もう、面倒くさがらないで行くよ!」


俺のノンビリした行動に、リィーナが

一喝してくる。


そうは言うが、ここまで来るのに

結構、体力持っていかれてる――


―って、アルテもリィーナも早っ!もうあんな所に!?




「ぐぎゃぁぁぁっ!?」


俺が着いたときには既にゴブリンが一匹倒されていた。


「遅いぞライ、あなたこのパーティの前衛って自覚あるの!」


「反省してます...」


リィーナさん激おこだな...これ以上怒られるのも嫌だし、

しょうがない、本気でやりますか...。

俺は剣を抜いた瞬間、アルテが俺に向かって、

何が必死に叫んでいる。


「ライさぁぁんっ!危ない!上、上ぇぇっ!!」


「上っ?」


アルテが指を指した方向に、俺は慌てて

視線を合わせる。


「っ!?」


視線が合ったゴブリンが、

斜め頭上から俺に向かって攻撃してきている。


「うわ!これはヤバイっ!?」


俺は剣を盾代わりに前に出し、

防御の構えに素早く入る。



ザン――――ッ!!



風の音がそう響くと同時に

ゴブリンの体が上下にズレその場に倒れる。


「大丈夫だったかい?」


爽やかな声が森に響く。俺が顔を声の方に向けると

そこに少年が立っていた。







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