十八話・言質を取ったパンツの件
「......」
「......」
「......」
何だ、この重々しい空気は...!
ついさっきまで、楽しくエロエロ談笑をしていたとは
とても思えない空気感なんですけどっ!
ミルナさん伝説...何て恐ろしい...。
ここは、何とかしなければっ!
そう心の中で決意した俺は、この場の空気を変える為の
作戦を開始する。
「ま、まあ~なんだ!ミルナの事はここまでにしてさ...
こほん、あの...ロザリーさん!」
「な、何?そ、そんな畏まった顔して...?」
「ロザリーさん!先ほど言質を取ったパンツの件...
お願いしやぁぁぁすっ!」
その言葉を発すると同時に、ビシッと空気音を響かせ、
垂直に曲がったキレイなお辞儀を
ロザリー見せつけた。
「す...凄いねライ、この淀んだ空気感の中で
よく、その言葉が出てきたね...!」
「あれはあれ!これはこれ!ですから!」
俺はコウガにも負けないくらい、爽やかな表情で
この言葉をロザリーに語る。
「もう...そのセリフ、その表情で言う事じゃないからね...!」
「アハハ...ライお兄さん、本当にHなんだから!」
「ふ...これが、俺の生き様だから、諦めてくれ♪」
俺は二人にドヤ顔をしながら、サムズアップする。
「ふふ...ライったら、そんな堂々とした態度で言っても、
内容が内容なだけに全然、カッコよくないから!」
「ぷっ!ライお兄さん、カッコわる~です!」
ライのドヤ顔に呆れてた二人が思わず吹き出し、
笑い合っている。
その二人の笑顔を確認し、ライは心の中で
よっしゃぁあああっ!作戦終了――――ッ!と叫声を上げ、
この場の空気感を変えられた事への達成感で心底喜んだ。
「それじゃ皆さん、落ち込んだ心も無事に帰って来たという事で、
夜も更けてきたし...この辺でお開きという事にして、
そろそろ...って、ロザリーさん?いつの間に俺の隣に?」
「それは...ね。さ、さっきの約束...ウチの...見たいんでしょう?」
ロザリーは、恥ずかしそうに
自分のスカートを掴んで、モジモジしている。
「い...いや...あれは...その...」
「え...!見たくないの...?そ、そうだよね...
四捨五入で二十代のパンツなんか、興味ないよね...?」
「そ、そんな事ないです!モロに眼球に納めたい程、
物凄く見たいです!」
あたふたして嫌がる素振りを見せる俺に対し、
年齢が気になったロザリーが、シュンとした表情で落ち込む。
それを見た俺は、必死に否定の言葉を投げかける。
「良かった~!それじゃ...」
「だあ~!ちょっと、待って!タンマ、タンマ!」
否定の言葉を聞いて安心したロザリーは、
再びスカートに手を持っていき、たくしあげようとするので
俺は慌てて、その手を抑える。
「やっぱり...見たくないんだ...」
「それは...あ!」
俺の視線にモカが入る...。
「そうそう、今はほら...モカがいるから...
だから...その...二人っきりの時に...ね...!」
「いやだぁ~もう!二人っきりの時だなんて、
本当にH少年だな~!うん、わかった!二人っきりの時に...ね!」
ロザリーは可愛く上目遣いでライの顔を見つめ、
頬を紅に染めて照れている。
「はは...」
ロザリーの表情を見た俺は、二人っきりになった時の事を考え、
期待と不安のニガ笑いが口から洩れる。
そんなひと悶着があった夜もゆっくりと更けていく...。
数時間後...沈んだ太陽が顔を出し朝がくる。
結局二人は帰らず、俺の部屋に朝まで居座った。
その間、俺の布団に侵入してこようとロザリーとモカが
本気のケンカを始め、
俺は軽く死にかけたりと忙しい夜だった...。
え...二人の争いの結果はどうなったかって?
それは...俺の両腕が支配されていると言えば
わかるかな?
「う、うう~ん...ムニムニ...」
俺の右腕にロザリーが絡まり付き...。
「ス~ス~」
そして、左腕にはモカが絡み付いている。
「う、動けん...」
さて...どうしたものか...?
これだけ、がっちりホールドされていたら
動ける訳がない...特にロザリーさんLV50ですよ、
そんなお方に力でどうこうできません...。
大体、無理に動かそうとすると、
俺の手の甲に当たっている二人の股関節部分を
まさぐる状況を作ってしまう。
もし、無理に動かしている時、手のひらが
逆向きになり、そこでホールドでもされようなら...
俺、昇天する自信ある!
そんな葛藤をしている最中、俺の部屋の前に誰かが来て、
勢いよく、部屋のドアノブを回す。
ガッチャッ!!
「おっはよ~ございます~!ライ様~!
朝食の時間がきますので、
そろそろ、起きてくだああああいい――――っ!?」
ドアを開け、元気良く挨拶をするメイドさんだったが、
俺のこの状況が視線に入ると、石化した様に
カチコチに固まって動かなくなる。
「あの...固まっていないで、助けて下さい...!」
「え...!で、でも、ライ様達のお邪魔をしちゃ、
悪いですし......」
何を勘違いしているのか、メイドさんはモジモジしだし、
顔中が真っ赤に染まっている。
「お邪魔じゃないから!マジで身動き取れないので、
何とか助けて下さい!」
「え、そうなんですか?わ、わかりました!
只今、お助けしますね!」
メイドさんは、腕捲りをし鼻息荒く俺の元へ、
ズンズン足音を鳴らし近づいてくる。
「ムニムニ...」
「ウニャァァ~!?」
メイドさんが丁度、俺の前まで差し掛かった時、
ロザリーがメイドさんをガバッっと腕で掴み、
そのまま、俺の方に持ってくる。
「はうっ!め、メイドさんの胸が俺の顔に!
これは想像以上に大きい...う、埋まる!?」
思わぬ神の報酬に、口元が緩む俺だったが、
メイドさんの予想以上の胸の大きさに、
息ができないほど顔が埋まっていき困苦する。
「アンッ!息を荒くしないで下さい、
くすぐったいです~!...ハウッ!」
「そ、そんな事を...モガ...言われても...モゴ...息が...!?」
俺は以前、大きいオッパイに埋もれて窒息するのは本望じゃ!と、
抜かしていましたが、あれは嘘です!助けて下さいっ!
...と、神に向けて必死に懇願する。
「貴方達は...何をしているのですか...」
部屋に入ってきた神...イヤ、メイド長がこの惨劇を見て、
呆れた表情で困惑していた...。




