十七話・ミルナを語る
「お、お前達、ちょっと落ち着けって!
それに今の時間を考えろ!もう夜なんだぞ!」
「うう...!」
「むう...!」
これ以上、放置しておくと取っ組み合いになりそうなので、
ライは冷静に二人を説き伏せる。
「それにロザリーはブサイクじゃない!
むしろ、俺はとても可愛いと思っているぞ!」
「ふえぇっ!?」
「ウチが可愛いって...本当に?」
「俺がパンツを見たくて歓喜したのがいい証拠さ!」
俺はアホっぽいポーズをとり、
ロザリーに向け、サムズアップする。
「何、その...嬉しい様な、嬉しくない様な、証拠は...!」
ロザリーはどちらともいえない複雑な表情で
ライを見て落胆する。
「じゃ、私も可愛いって事だよね?
絶景とまで言ってくれたんだからっ!」
「うむ、確かにあれは良いものでした...!」
俺はあのピンク絶景を思い出し、うんうんと何度も小さく頷く。
「うう...やっぱ、私も複雑だ...。
これって、素直に喜んでいいのだろうか?」
モカは首を傾げ、この疑問にニガ笑いを浮かべる。
「気を取り直して...こほん、ライお兄さんにちょっと質問~!」
気持ちの切り替えにモカは咳払いをすると、
質問をする為、元気良く挙手する。
「俺に質問?...気にするな。俺は結構嫌いじゃないぜ...」
「へ、嫌いじゃないってどういう事?」
「質問の内容は...
『絶壁胸の女の子は好きですか?』...だろ?」
俺はモカが傷付かない様に、優しい微笑みで
そう答えてあげた。
「絶壁胸って...一体、誰の胸の事を言ってるのかな...?」
「そりゃ~おま...」
「あああぁぁぁ~んっ!!」
「イエ...ナンデモナイデス...」
俺の答えが間違えだったらしく、
可愛い顔が台無しLVのドスの効いた声で
モカが睨み付けてきたので、震えながら素直に謝った。
「たっく...どんな勘違いをしてるのよ!」
「スマン、スマン...で、俺に質問ってなんだ?」
「こほん...ライお兄さんって、ミルナお姉さんと
どんな感じで知り合いになったのかなって、思ってさ?」
「ミルナと...?」
「おお、それはウチも聞いてみたかったんだ。
どんな出会いをして...何故、あんな場所にいたのか?」
「うん。私達って、割愛程度の事しか聞いてなかったから、
詳しく知りたいなぁっと思ってさ」
「ミルナとの出会いか...」
俺はロザリーとモカに、ミルナとの出会いから、
あのダンジョンまで経緯を、詳しく(キス以外)話した。
「へえ...ミルナがそんな茶目っ気をねえ...!」
「それにあのミルナお姉さんが、男の子を起こす為に
耳に囁きなんて、そんな女の子らしい事をするとは...!」
二人は、ミルナの意外な行動に、喫驚した表情で
困惑の言葉を洩らす。
「ミルナって、普段はそんなに違うのか?」
「そうね...ほらさっき、盗賊の話が出てきたでしょう?」
「ああ、パンツ見たいの話か...!」
「違う!そっちじゃない!盗賊に襲われたって方よ!」
「なんだ、そっちの方か~!それで...その盗賊がどうしたんだ?」
「あの場面にさ、ミルナがいたとするでしょう...。
ライは、一体どうなると思う?」
ロザリーは、真面目な顔でジッと見つめ、
ライにそう問いかけてくる。
「あいつがいたらか......それは多分、
俺と一緒になって、あたふたと慌ててるんじゃないか?」
俺とミルナの二人で、パニックってる姿が
容易に想像できた。
「そっか...ライの中のミルナはそんな感じか...」
「...違うの?」
「もし、ミルナがあの場にいたら、あの盗賊全員...
胴体に風穴が空いているか、顔無し死体になっているか...
はたまた、体全部がこの世から消え去っているか...だよ!」
「え...リアリー?」
何、そのスプラッター地獄!?
あいつ、そんな魔法も使えるの!?
「本当だよ。ミルナお姉さんの怒髪天に火が着いたら、
女だろうが、子どもだろうが、人生終了って言われてるし...」
「ええ...リアリー??」
怒髪天!人生終了!何、この怖い単語っ!!
「激昂したミルナはまさに無敵で、この間もドラゴン相手に、
一撃の魔法を放ち、ど真ん中に大きな風穴を空け、
更にとどめと言わんばかりに、両腕...両足...そして、その存在全てを
この世界から消し飛ばしたわ...」
「えええ...リアリー???」
この世界から消し飛ばしたっ!?
「消し飛ばしたといえば...この間、討伐の為に行った
魔物が住み着いている洞窟っていうのがあったんだけど、
ミルナお姉さん...中に入るのが面倒だからって外から魔法を打ち込み、
一瞬でその魔物の住み家を消し飛ばしたんだから...!」
「ええええ...リアリー????」
何、その破壊王の残劇はっ!?
次々とミルナを語るロザリーとモカの表情から色が抜けていくのを見て、
俺はミルナ対し行った数々の扱いを、ふと思い出し...
「よく死ななかったな...」っと
身震いしながら、心の中でそっと呟く...。
「あ、でもそれだけ強いなら、
何でミルナの奴はLV上げをしようとしているんだ?」
「ミルナって、あれだけ強いのにLVは...5なのよ!」
ロザリーは、ライの質問に乾いたニガ笑いを浮かべながら
そう答える。
「LV5!ドラゴンを一撃で倒すのに、そんなに低いのかっ!?
でも、ドラゴンを倒しているなら、何故LVが5どまりなんだ?
あのクラスの経験値なら、少なくとも10はあっさりと越えるだろう?」
「ミルナお姉さん、LVの上がるスピードが平均の四分の一なの」
俺が不思議がっていると、モカがその答えを教えてくれた。
「だから、LV上げを必要としていたのか...。
イヤ、待てよ!それじゃ...あいつのLV上げって、もしかして...!?」
「うん。ライの考えている通り、恐らく...ドラゴン以上の魔物相手だと思うよ!」
「えええええ...リアリー?????」
モカの告げたあまりの衝撃事実に驚愕し、
俺の表情からもみるみると色が抜け、喉が潰れる程の高い声で叫喚する。




