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十四話・屋敷


「これは、ロザリー様!お帰りなさいませ!」


「どうやら、おケガは無さそうなので安心しました!」


門番達がロザリーの馬車を見ると、

ビシッと聞こえてきそうな敬礼で出迎える。


「お勤めご苦労様です!

あ、この子の入場の申請を、お願い出来ますか?」


「ハッ!了解です!

君...身分証明みたいな物は、持っているかい?」


「身分証明...これでいいですか?」


門番の一人に、俺はギルドカードを手渡した。


「ギルドカードか...どれどれ、名前は...ライ・シーカットで、

出身地は...カロン...!?」


「何...カロンだと!

カロンって言えば、ここから数百キロ離れてる町だぞ!

そんな遠くから、よくその身なりでこられたものだな...?」


門番達が軽装なライの格好を見て、呆れた口調でそう呟いた。


「はは...ちょっと、混みいた事情がありまして...」


「なんだ?盗賊にでも襲われたのか?」


門番達が、ライの身なりの怪しさから何か裏があるんじゃないかと

疑いの目でこちらを見始めてくる。


「兵士さん、この子にも色々事情があるんです...。

だから、それ以上の詮索は...」


「しかし、怪しい者をこの王都の中に入れる訳には...」


「そうですよ、王を狙った刺客の可能性もあるのですから!」


門番は、ロザリーの圧に負けつつも、

懸命に説得している。


「ハア...しょうがないな...。

ちょっと、耳を借りるわよ...ゴニョゴニョ」


ロザリーが、何を耳打ちしていると

その内、段々と門番の顔色が真っ青になっていき、

そして......


「「ハハァ――ッ!ささささ先程のぉぉぉ、

しっしし失礼なたったた態度、ほほほ本当にぃぃぃ

すすすスイマセンでしたああぁぁぁ――――――――ッ!!」」


門番達がロザリーと俺に向かって、

それはそれはとてもキレイで完璧な土下座をしてきました。


「それじゃ、通ってよろしいかしら門番さん♪」


「「ハッ!ど、どうぞ、お通り下さいませっ!!」」


「ありがとう。じゃ行くよライ!」


「お、おお...」


俺はギルドカードを門番から返してもらい、

馬車に乗り込んだ。


「しっかし...お前の権限って、どうなってるんだ?」


「どうなってるって、どういう事?」


「だって、お前が不機嫌になった途端、あの土下座だぜ...

王都の門番がだぞ?」


「いいえ、あれはウチに対してじゃないわよ」


「え?それって、どういう意味?」


「まあ...その辺も、追々わかるわよ」


「また内緒なのか?うう...めっちゃ気になるな~!」


俺の質問に、ロザリーが答えてくれない事に、

頭の中がモヤモヤとしてくる。


「そんな事より、さあ!着いたわよ!」


「着いたって...確かに門はあるが、

肝心の家の方が見えないのだが...?」


「家っていうか屋敷は、この門から

もうちょっと、離れた場所にあるのよ」


「離れた...じゃあ、何?

今、見えている景色が...全部お前の家の庭って事なの?」


「正確にはウチらのだけど...まあ、そういう事になるかな?」


「な、なんだと...!?」


俺は目の前に広がる景色を再び見つめ、

開いた口が塞がらないくらい、喫驚している。


「ほら、いつまでもそんな顔をしてないで中に入るよ!」


「わ、わかったから、そんな強引に...うわわっ!」


家を見て驚いてる俺を、ロザリーが強引に馬車へと放り乗せる。


ギギイィィィィ――ッ!


門が開く音が響き、

その開いた門を、馬車がくぐり抜けて前進して行く。


「この場所全部が、庭なのか...スゲエな...。

ん、何か見えてきたが、あれが家...イヤ、屋敷か?」


目の前に広がる広々とした庭...その遠くの奥に

小さく屋敷らしき物が見えた。

その屋敷らしき物が、馬車が進む度に俺の瞳の中で、

どんどんと大きくなって映ってくる。


「見てライ!これが我が屋敷...ウチらのパーティの拠点だよ!」


「これが、人の住む家だと......」


目の前に映る、とてつもなくデカ広い屋敷を、

俺は茫然自失な表情で、ボーッと眺めていた。


「ボーッと眺めるのはそこまでにしてこっちに来て、

屋敷の中に案内するからさ!」


「のわあっ!?」


俺が屋敷を、ボケッと眺めているとロザリーが俺の手を

無理矢理に引っ張り、屋敷の中に連れて行く。



「「「「お帰りなさいませ、ロザリー様!」」」」



中に入るとロザリーの出迎えに、

何十人ものメイドや執事が挨拶をしてくる。


「うん、ただいま~!」


「あのロザリーさん...失礼ですが、

そちらの御仁は、誰なのでしょうか?」


メイド達の中心にいた人物...メイド長が代表として、

ロザリーに、ライの事を質問してきた。


「ちょっと、ある事情で知り合いになってね...

行く所がないって言うから連れて来たのよ」


「連れて来たのよって、簡単に言われましても...

その御仁、信用できるのですか?」


連れてきた経緯を答えるロザリーに対し、

メイド長は、ライの事を疑いの視線でチラチラと見ている。


「もしかして、私の目利きを信用できないの?」


メイド長のその視線にロザリーは、ジト顔で睨み、

呆れた口調でそう話す。


「イエ...そういう訳では...しかし...

私も、素性を知っておかなければ...なので」


「もう...わかったわよ...こっちに来て」


「はい...では、失礼して...」


「実はね...ゴニョゴニョ...」


しどろもどろに話すメイド長に、痺れを切らせた

ロザリーがこちらに来る様に手招きし、

そっと耳打ちをする。


「な、ミルナ様の...!?」


「そう、多分...あの子を探す為、ここに来る可能性があるから、

あの子...ライには粗相のない様に気を付けてね。

もし、何かしようものなら...」


「わ、わかっております!

私もまだ、あの世には行きたくなりませんから!」


「うわ...!話しているウチもなんか震えてきた~!」


二人は、何を想像したのか、

お互いにブルブルと身震いをしている。


「なあ...俺疲れたから、少し休憩したいんだけど...

ここで休んでもいいかな?」


「客人をそんな所で、休憩なんてさせられません!

こちらでお部屋を今直ぐに御用意致しますので、

どうぞ!そちらの部屋の方で、御休憩になさって下さいませっ!」


俺は近くにあるソファーを指差して休憩していいかと聞くが、

メイド長らしき人物にあっさり断られる。


その会話後、メイド長が数名のメイドに指示出し、

自分も早急な足取りでその後を追って行った。



そんなやり取りから数分後......。



「どうぞ、こちらでごゆっくりと御休憩なさって下さい!」


メイド長の満面の笑みで案内された部屋に

俺はゆっくりと入って行く。


「なんだ...この広い部屋は...!

ここだけで、俺の家の広さじゃんか!」


「それでは...失礼いたします。

後、一時間程で夕方のお食事時間ですので、

それまでには、起きていて下さいませ...では」


ライが部屋を見渡している最中、

冷静にメイド長が食事の時間を告げると、

一例して、部屋のドアを閉めて去って行った。


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