十三話・ロザリーのLV
「おお!久しぶりに感じる、外の空気だぁ―――っ!」
俺は無事にダンジョンを出られ、外の空気を吸い、
外の光をその身に感じると、
我慢出来ず、つい歓喜の声を荒らげる。
「ふう...何とか無事に、外に出られたみたいだね!」
「ありがとうロザリー!君のおかげで助かったよ!」
微笑みを浮かべそう言ってきたロザリーに対して、
俺は相好を崩した表情で、お礼を述べる。
「と・こ・ろで......ロザリーさん?」
「ん...何かな?」
「その...いつまで、抱き付かれておられるのでしょうかね?」
さっきから、ムニュムニュと背中に当たる二つの柔らかい山の感触に、
俺は顔を真っ赤にして、ロザリーにそう言葉を洩らす。
「なはは...ゴメンゴメン!
ウチなんかに抱き付かれて、嫌だったよね!」
ライの照れている言葉を、
苦悶と勘違いしたロザリーは苦笑しながら飛び退ける。
「それはない!むしろ、オッパイありが――ゲフン、ゲフン!
ま、まったく...嫌じゃないから、そんな顔するなって!」
俺は思わずオッパイ感謝の言葉を口にしそうなり、
慌てて咳払いを数回し、言葉を言い直した。
「本当に嫌じゃないんだね、はぁ~それなら良かったよ~!」
ライに嫌いじゃないと言われたロザリーは、
さっきまで雲っていた表情がみるみると変り、
満面の笑みで喜んでいる。
「それよりロザリーに、
ちょっと聞きたい事があるんだけどさ...いいか?」
「私に聞きたい事...?」
「ここって...一体どこなんだ?」
少し落ち着いてきた俺は、ダンジョン内で聞きそびれていた事を
改めて、ロザリーに聞いてみた。
「あれ?言ってなかった?ここはウイッグ森林と言って、
このダンジョン...【試練のダンジョン】がある場所だよ」
「ウイッグ森林に、試練のダンジョン...」
「ちなみにこの試練のダンジョンは大陸一を誇っている
ダンジョンなんだから!」
「大陸で一番...!」
「ええ、そうだよ!この試練のダンジョンの階層は80以上あると言われ、
一説には、最下層には、神界への門があると噂されているわ!」
「た、大陸一でもビックリなのに、神界とは
スケールデカ過ぎだろう...」
今までいた所が、そんな凄い場所だったとは露知らず、
さっきまでそんな所で戦闘を行っていたのかと、
俺は思わず、ブルッと身震いしてしまう。
「そ、それで、このダンジョンは地図上では、
どの辺にあるんだ?」
試練のダンジョンの事は、後で考える事にした俺は、
まず確認として、この場所が
一体、大陸のどこにあるのかを聞いてみる。
「地図か...そうだね、この場所を地図でいうなら、
ここは中心部【王都ダーロット】から数キロ南西に離れた場所だよ」
「ちゅ、中心部!王都ダーロット!?」
「どうしたの?そんなに驚いて!」
「そりゃ、驚くだろう!だって、カロンから
どれだけ離れてるんだよ!」
俺は町中の噂や、ギルマスの言葉からしか
聞いた事のない王都近くにいると知り、
驚きの言葉を隠せないでいた。
「カロン?はて、どこかで聞いた様な...?
どこだったかな...思い出せない??」
ロザリーはその町の名をどこかで聞いた事があると
首を傾げるが、どうにも思い出せなかった。
「しかし、参ったな...。こんな所から、
どうやってカロンに帰ればいいんだろう...?」
「じゃあ、取り敢えずウチらの拠点に来て
その方法を考えてみれば?」
「ロザリー達の?」
「うん。もしかしたら、ウチらの所に
ミルナが来るかも知れないし...だからそうしなさいって!」
「そっか、その可能は高いな...よし!
度々お世話になるけど、お願いしてもいいかな?」
俺はロザリーの好意を受け、
申し訳ない表情で返事を返した。
「勿論、オッケーだよ~!遠慮しないで!
そうと決まったら早速、馬車のとまっている場所に
移動しちゃうおうか!」
そう言って、ロザリーはダンジョンの前にある、
森の道へと足を向け歩き出す。
ウイッグ森林の中にある道を歩き始めてから、
数分後......。
「ほら見える?あれが、ウチが乗ってきた馬車だよ♪」
俺の目の前に、こぢんまりとしてはいるが、
中々立派そうな感じの馬車が見える。
「へえ~中々にいい感じの馬車じゃないか!」
「まあ~王国専用の馬車を改造したやつだしね!」
「お、王国専用の馬車!?」
俺はロザリーの発した『王族』の単語に、
目が丸くなり喫驚してしまう。
「何、驚いているの?ミルナから聞いてないの?」
「ミルナから?イヤ...別にそんな話は
聞いた事はないかな?」
「そっか...あいつ、隠してたって事か...」
「何か言ったか?」
「ううん...何でもない!そんなどうでもいい事より、
ささ!馬車に乗った、乗った!」
「ちょ!王族の馬車を、そんなどうでもいい事って...!」
「あはは...その辺の説明は、後々するからさ!
だから、今は...ね!」
「あ、ああ...わかったよ...」
ロザリーが何か、誤魔化している姿は、
とても気になる所ではあったのだが、俺は空気を読み
今は取り敢えず、素直に馬車に乗る事にした。
馬車に揺られる事、数時間......。
俺は今、馬車移動でお馴染みのイベント、
盗賊軍団に襲われている。
はずだったのだが......
「い、命だけは......グハアアアァッ!」
「い、一体...何なんだぁ......ゲバジャァァッ!」
「は、速い!
いくら逃げても追い......ゴギャアアッ!」
盗賊達が現れたと同時に馬車の中から
ロザリーが一人で飛び出し、
刹那の如き速さで、次々と盗賊達を薙ぎ倒していく。
「ふう、これで終わり...とっ!
ライ~これで安心だ...って、何て顔してるの!」
「イヤ···俺が驚こうとしている間に、
盗賊達の全滅に驚いている最中だよ...」
「え...何、どういう事?ライが何を言っているのか、
さっぱりわからないんだけど...??」
俺が目を丸くして、
訳のわからない言葉を吐いていると
ロザリーは呆れた表情で苦笑している。
「あはは...早い話、ロザリー強すぎ!...って意味さ!」
「エヘヘ...そうかな♪
まあ、LV上げを一生懸命頑張った結果かな!」
ライの賛辞に、ロザリーは手を頭に当て、
頬を紅に染めた表情で照れている。
「でも、それだけ強いならロザリーのLVって、
結構スゴいんだろうなあ...」
「何々、ウチのLVが気になる?
ふふふ...聞いて驚け!何と...LV50なのですよっ!」
「はあ!LV50だと~その若さでっ!?」
ドヤ顔でふんぞり返り、LV自慢するロザリー。
それを聞いた俺は、ロザリーと自分との
あまりのLVの差に喫驚し過ぎて、開いた口が塞がらなかった。
「でもまあ...さっきの動きを見れば
納得のLVか...」
そんな出来事の後、数回ほどまた盗賊襲来イベントがあったのだが、
その度、盗賊襲う...ロザリーに瞬殺される...を、
繰り返すのであった。
そして数時間後......。
「あれが、ウチらの拠点がある王都...ダーロットだよ!」
数十メートルに拡がり、そびえ立っている壁。
その壁に囲まれている王都が、俺の目の前に見えてきた。




