ある晴れた日。
窓からそっと手を伸すと、降り続ける白い雪はそっと私の手のひらへ舞い降りてくる。
「冷た……。」
思わず声をもらした。
今年もこの季節がやってきたのだ。
私の一番苦手な冬、そして大嫌いな雪。
この国の冬は雪の積もらぬ日はなく、どんなに快晴でも雪は残ったままだ。他国との交流はぐっと減り、民にとっても過ごしにくい日々が続く。そして今年もそれは変わらなかった。
お父様は相変わらず頭を抱えているし体の弱いお母様は冬場は体調を崩しやすい。
私がしっかりせねば。
「姫様、これをお飲み下さい」
そういってホットチョコレートを運んでくれたのは侍女のマーシャだった。
「ありがとう。……なぁマーシャ、この冬はいつ終わるのだろう?」
「まぁ、姫様ったら。まだ始まったばかりですよ。」
マーシャはくすくすと笑った。私もつられて笑みを浮かべた。
「そうだな。だが、私は知っての通りこの季節が嫌いだ。お父様やお母様、それに民をも苦しませるこの季節が。
しかし、この季節が終わり、春になれば私はセイヤ王子のもとへ嫁ぐことになっている。そう思うと、この季節が長く続いてほしいと願ってしまうのだ。」
「姫様……。セイヤ王子がお嫌いですの?」
「好き嫌いの問題ではないだろう。私はお父様が決めた場所へ嫁ぐだけだ。」
私ため息をもらして窓を閉めた。途端に中は温かくなり、窓辺に少しだけ積もった雪は溶け始めた。
テーブルへ行き、まだ温かいホットチョコレートに口をつけると、そこでようやくマーシャが口を開く。
「春になれば、花々が息吹きはじめます。私は今からどんな花が咲くか楽しみで楽しみで。姫様も、希望を持ってみてはいかがですか?セイヤ王子の国はどんな国なんだろう、どんな花が咲くのだろう。そうすれば、また春が待ち遠しくなるはずです。それに、マーシャは姫様にずっとお仕えします。」
振り向いてみたマーシャの顔は微笑んでいた。まるで妹を見る姉のように。
「ありがとう、マーシャ。」
「とんでもございません。」
「おかあさまー!」
ひだまりの中、少女がかけていく。その先には王妃となったレイナ姫とマーシャがいた。
「あらあら。はしたないわよイレマ。マーシャ、お茶をお願い。」
「はい、ただいま。イレマ様はお砂糖たっぷりですね?」
「うん!」
イレマは屈託なく笑う。それをみて二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「こんなところにいたのか。」
「あらあなた。」
よく晴れた日。
丘の上には幸せそうな親子の姿があった。
私は基本後書きをかかないのですが、この作品については少しだけ補足、というより蛇足ですが。
イレマと言う名前は
セイヤのイ
レイナのレ
マーシャのマ
をとってレイナが名付けました。
1ページ目はレイナ視点。
2ページ目は作者視点で数年後のお話。
セイヤは好い人だったようでレイナは幸せになりました。
マーシャは現地の人と結婚して2児の母に。
いやぁ、よかったよかった。