表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

そのおばあちゃん、剣聖につき

作者: 笹 塔五郎
掲載日:2018/05/22

「うふふ、すまないねぇ」

「なぁに、いいってことよ」


 カタンカタンと揺れる馬車の中、一人の老婆が馬車を操る男に礼を言う。

 杖をつきながらではないとよたよた歩きになってしまうような老婆の名はカルラ。

 齢は八十を越える。


「しっかし驚いたぜ。この街道には魔物も出るっていうのに、婆さん一人で歩いているんだからよ」

「うっふふ、物見遊山というやつだよ」

「いやいや、魔物に出会ったらどうするつもりだったんだよ」

「そうだねぇ。走ってでも逃げようかね」

「はははっ、そんな事ができるならたいした婆さんだぜ」


 男はカルラの話を聞いて大声で笑う。

 カルラも、走って逃げるというのは冗談でいったつもりだった。


「それにしても、婆さん一人でどこに行くんだい?」

「当てなんてないさ。やる事やったから、残りの人生は好きなように生きようと思ってね」

「そりゃあいいな。俺も早くそうしたいぜ」

「うっふふ、あたしからすりゃああんたはまだ若すぎるよ」

「言葉の重みがちげえな!」


 そんな風に和気あいあいとした話を続ける二人だったが、男が突然馬車を止めた。

 ぐらりと中も大きく揺れる。


「おっとと、どうしたんだい?」

「悪い、婆さん……絡まれちまった」


 男の言葉を聞いて、カルラもすぐに理解する。

 馬車は、十人程度の男達に囲われていた。


「がははっ、積み荷を全部置いていってもらおうか。そうしたら、ここは通してやるぜ」

「こ、この積み荷は村の子供達にやる食料がはいってんだ。金目のものなんてねえ」

「別に金目のものがほしいなわていってねえ。食料なら、今日のオレたちの宴に使わせてもらうだけさぁ」


 そう答えるのはいかつい風貌の男。

 ならず者たちによって、馬車は襲撃されてしまったのだ。

 《イイロス》街道では、こういった事件が起こる事があると言われていた。

 だが、男もまさか自分が襲われるとは思わなかっただろう。


「……」

「おっと、動くんじゃねえ」

「っ!?」


 男が馬車を無理やり走らせようとすると、二人の男が馬車を操る男に向かって弓矢を向ける。

 すでに逃げ場などなかった。


「ちょいと失礼するよ……」

「婆さん!?」


 そんな中、カルラは馬車の中から降り立つ。

 突然の行動に、馬車を操る男が驚きの声をあげる。


「あん、なんだ。婆さんか……若い女なら、連れ帰って楽しませてやったんだがなぁ」

「うっふふ、そうかい。あたしの方はいつでもウェルカムだよ」

「ば、婆さん。危ないから下がれって!」

「なぁに、乗っけてもらったお礼さ。あんたはいい人だから、助けてあげるよ」

「がはははっ、ババアが助けるってよ。こりゃ見物――」


 瞬間、男の周囲にいた四人の男が倒れる。

 キィンという金属音だけが響いた。

 その場にいた誰もが、状況を理解できていなかった。

 それをやった本人を除いて。


「な、なんだ!?」

「おやまあ……見えなかったのかい?」

「バ、ババア……!? お前魔導師か!?」

「うふふ、残念……あたしゃ魔導師なんかじゃないよ」


 後方に構えていた男二人が、カルラに向かって弓を引く。

 だが、視界に映っていたはずのカルラはすでにそこにはいなかった。


「!?」

「あたしゃここだよ」


 キィン、という音と共に弓を持った男二つが倒れる。

 すでに、カルラは男の背後に回っていた。


「な、何者だてめえ……!?」

「き、聞いた事がある……剣撃が速すぎて見えない老人の騎士が、王都にいるって……」


 リーダーの男の仲間の一人がそう呟く。


「ああ!? あのババアは得物も何も……」


 ならず者達のリーダーの男がいいかけたところで、それに気付いた。

 杖の形をしているが、よくよく見れば持ち手付近に切れ目が見える。

 その切れ目を見たのが、リーダーの男が意識を保っていられる瞬間だった。

 バタリと、残りの男達も倒れる。

 ――そう、始めから街道を歩くカルラが魔物を警戒する必要なんてない。

 彼女に近づく事すら、魔物でも容易ではないのだから。


「は、婆さん……あんた一体……」

「うっふふ、あたしはただの旅人さ。ここまで運んでくれてありがとうね。そいつらはしばらく起きないだろうから、悪いけど王国の騎士にでも引き渡してくれるかい」

「あ、おい! そっちは山だぞ!?」

「言ったじゃないか。物見遊山さ……山の方も楽しみたいんだよ」


 そう言ってカルラは山の方へと姿を消す。

 そこはいくつも崖のある険しい道のり。

 とても老婆一人が突破できるような場所ではなかったが、一週間後には、カルラは新天地でお茶を飲んでいた。


「うっふふ、次はどこへ行こうかねえ」


 かつて《剣聖》と呼ばれた老婆は、残りの人生を謳歌していく。

活動報告にさらりと書いたネタを昼時にさらりと書きました。

ちょっと短いかもですが、こういうのも好きなんですよと。

実際書くなら少女拾って一緒に旅してって感じかなあと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルだけでブクマ確定w
2020/01/17 14:47 退会済み
管理
[良い点] 面白いですね、今、ねりおもち/笹 塔五郎さんの作品を読破中です。 全部面白いです。 [気になる点] えっと、誤字、になると思うんですが········· そう言ってカルラは山をした。の方へ…
2018/08/17 20:36 退会済み
管理
[一言] 強いジジババってのもいいですねえ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ