第二話「お人好し」
見てくれてる人いるのかな?
誰も何も言わないのでちょっと寂しいですw
ま、まあ取り敢えず第二話、是非読んでください....!
部屋でただ呆然と天井を見つめる。春香が目覚めてから一週間経った。相変わらず彼女の記憶は戻らない。俺の事を覚えていない彼女と居ると心が苦しくて、折れてしまいそうになる。だから、もう彼女の見舞いには行っていない。もうあんな春香は見たくない。
あの日から俺は不眠症になってしまった。そのせいで学校の授業に全く集中出来ない。頑張って起きようとするが抗えない程の強い睡魔がやがて俺を襲い、俺は何も出来ずそのまま眠りについた。
ーーー
体を揺さぶられ目を覚ます。重い体を起こして顔を上げると、すぐ傍に誰かがいた。
「何してるの。移動よ。もうすぐチャイムが鳴るわ」
彼女はクラスメイトであり委員長でもある、長い黒髪が特徴の東響子。何故かよく俺に突っかかってくる。迷惑なのだが、まあ彼女のお陰で俺の成績が落ちることもない。こうして移動教室の時にわざわざ起こしてくれるのだから。でも、やっぱり迷惑だ。俺は何も言わず立ち上がり教室を出る。
「何で一緒に来んだよ」
そう何故か隣で歩く彼女に言った。
「当然でしょ。私はクラスの委員長なんだから不真面目な貴方を見張るのは当然でしょ」
「不真面目?俺が授業サボるとか思ってんのか」
「そうよ。居眠りする貴方ならやり兼ねない話じゃないかしら」
何も知らないくせに、思わずそう言いそうになったが寸前で堪えた。彼女に八つ当たりしたところでどうにもならない。少し早く歩いてさっさと彼女から離れた。ちょっと待ってよ、という彼女に構わず早歩きした。教室に着くと自由席だったので一番後ろの目立たない席に座った。どうせまた睡魔に勝てないのだから、先生に目につかないところにいよう。そう思っていると隣に東が座った。
「....何だよ」
「別に、自由席なんだからいいでしょ」
何故こんなにも俺に関わろうとするのか至極疑問に思ったが、この際どうでもいい。溜め息をつくと同時にチャイムが鳴り授業が始まった。しばらくすれば案の定睡魔に襲われ、俺はもうそれに抗わず素直に眠りについた。
ーーー
目を覚まして顔を上げると教室には誰もいなかった。窓から橙色の夕陽が差し込んでいる。教室に戻って荷物を持って帰ろうと思い立ち上がると東が教室に入って来た。俺を見つめるとそのまま真っ直ぐ向かって来た。また何か言いに来たのかと内心呆れながら彼女を無視しようと持った瞬間、俺の鞄を持っていることに気付いた。
「はいどうぞ」
彼女はそう言って俺に鞄を差し出した。何をされたのか理解出来ず固まる。そんな俺に彼女は溜め息をついた。
「寝てる貴方にわざわざ荷物を纏めて持ってきてあげたのよ。私のこと嫌いかもしれないけれど、お礼の一つくらいは言ってもいいんじゃないかしら」
「あ、あぁ....ありがとう」
覚束ない調子でそう言うと彼女は少し笑った。
「じゃあ行きましょう。連れて行きたいところがあるの」
呆気に取られている俺に彼女は俺の顔の前で手を振った。
「ちょっと聞いてるの?」
「な、なんだよ....」
「だから、連れて行きたい場所があるのって言ってるの」
「なんでお前について行かなきゃならねえんだよ」
反抗的にそう言い返すと彼女は溜め息をついて俺の頭を軽く叩いた。不意打ちを食らったように俺は固まった。
「意地張らないの。ほら、行こ」
腕を掴まれて強引に連れ回される。振り解こうと思えば振り解けたが女の子相手にそんなことをするのは何だか情けないと思い、俺は諦めて彼女について行った。
「....抵抗しないのね」
すると思っていたのか彼女は少し意外そうな表情をした。俺は呆れた調子で
「ああ....好きにしろ」
と言うとそっと腕を離した。しばらく歩いて着いたのは喫茶店だった。中に入って適当にテーブルに座ると店員さんが水を差し出してくれた。彼女は俺の分まで勝手に注文し水を一口飲むと俺を見つめた。
「単刀直入に聞くわ」
一体何を言われるのだろうか。まあ何を言われてもそれっぽく返せばそれでいいか。そんなことを考えながら彼女の質問を待った。だが、それは少し意外な質問だった。
「貴方、不眠症でしょ」
俺はその質問にすぐに答えられなかった。そんな俺を見て彼女は確信したようだ。
「やっぱりね」
「それを知ってどうすんだよ....」
そう問いかけると彼女は呆れた表情を浮かべた。
「どれだけ私のこと嫌いなのよ。貴方は私のことを悪いように見てるようだけど、貴方が考えてることは一切あり得ないわよ。私は貴方の助けになりたいの」
「....なんだ、委員長の責務ってやつか」
「いいえ、私個人としてよ」
俺が鈍感だったら話は別だが嘘をついているようには見えなかった。いや、俺がただ素直じゃなかっただけだ。彼女はずっと俺の為に動いていたんだ。俺が春香の記憶喪失のショックで心を閉ざしていた所為でそれに気付けなかった。全く何て自分勝手な奴なんだ、俺は。何だか居心地が悪くなって椅子に座り直した。
「ありがとう、東」
素直にそう礼を言うと彼女は首を傾げた。
「何よ、急に改まって」
「素直に礼を言っただけだよ。だからその、何だ....反抗的な態度を取って悪かった」
急に素直になった俺を彼女は気味悪く見つめる。そして一口水を飲んだ。
「まあ、分かってくれたようで良かったわ」
少し目を逸らし髪を弄りながらそう言う彼女に俺は微笑んだ。それを見て何故か彼女は顔を赤くした。
「と、とりあえず、何か困ったことがあったら私に相談して。いつでも聞いてあげるから....!」
「ああ、お願いするよ」
そう言ったと同時に注文した料理が届いた。半分の食パン二枚にトマトやレタスなどの野菜を挟んだサンドイッチだ。俺と彼女の分がテーブルに置かれた。
「ここのサンドイッチ、すっごく美味しいの」
そう言いながら彼女はそれを頬張った。俺も彼女に続いてサンドイッチを食べる。
「本当だ、美味い」
「でしょ?これを食べる為によくここに来るのよね」
「お前、ここの常連なのか?」
「んー、まあそんなとこね」
他愛無いやり取りだが今の俺にはそれがとても有り難く感じた。きっと彼女は気を病んでいた俺を気遣ってくれてるんだ。とても優しいが悪い言い方をすれば、ただのお人好し。気付けば最後の一口分しか残っていなかった。それくらい美味しかったということだ。俺は少し惜しく感じながらも最後の一口を食べて完食した。東はもう食べ終わったのかと見てみたら、まだ半分程しか食べていない。味を堪能しながら食べているのだろうか。俺はただそれをじっと眺めて待った。ふと窓の外を見ると辺りはすっかり暗くなっていた。携帯を取り出し、母さんに遅くなるというメールを送り携帯を直した。
「はあ〜、ご馳走さま」
「長かったな」
「一口を大事にするタイプなの」
「そうかい」
立ち上がり鞄を手に取ると彼女は
「もう帰るの?」
と問いかけてきた。
「ああ、遅くなると母さんに悪いから」
「....そっか」
そう言うと彼女も立ち上がった。
「先に外に出といて、私が会計済ませるから」
「は?それは流石に遠慮するぞ」
「いいのいいの、私の奢り」
俺の言うことを聞かず少し強引に彼女は会計を済ませた。女の子に奢られるとは、情けない。とそんなことを思いながら外で待っていると彼女はすぐに出て来た。
「お待たせ、じゃあ帰ろっか」
街灯に照らされた夜道を彼女は歩き出す。一歩進むごとに、彼女の長い黒髪がつらゆらと揺れる。それをただ呆然と見つめていると彼女はついて来ない俺を不思議に思ったのかその場で立ち止まり振り返った。
「....貴方はこっちじゃないの?」
「あぁ、いや....俺もそっちだよ」
「そう、じゃあ折角だし行けるところまで一緒に帰ろうよ」
「....別にいいけど」
彼女は少し嬉しそうに笑った。そんな風に見えた気がした。横目で彼女を見つめる。何の恩もない俺に何故こんなに優しくしてくれるのだろうか。何のメリットもないのに。何の得もないのに。それがただただ不思議でならなかった。視線を感じたのか彼女は俺の方を見た。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
首を振ってそう言うと彼女はそれ以上追求してこなかった。澄んだ風が俺と彼女の間を通り抜ける。道路を走る車のヘッドライトの眩しさ。何気ない日常の断片がとても不思議に感じた。突然ポケットの中の携帯が鳴った。早苗さんからだ。俺は電話に出た。
どうでしたでしょうか。
新しいヒロインの、東響子ちゃんです。
Twitterで載せたあの子です。
因みに作者の僕としては春香よりも響子の方が好きですw
次回を楽しみにしてくださると嬉しいです。感想や指摘などTwitterのDMやここなどで言ってくださると嬉しいです。
お待ちしております(*´꒳`*)




