第一話「儚く散る」
お久しぶりです。初めましての方は初めまして。
つよちーです。
気ままにお絵かきや小説を書いている者です。
今回リメイクということで、記念すべき第1作目の「この恋を叶えるために」を再び書いていきたいと思います。
と言っても趣味程度で書いていたので一部の人しか知らないですけどね。
最近Twitterのフォロワーが300人超えたので是非新しいフォロワーの方に見て欲しいと思ってます。
「ずっと一緒だよ」
幼い頃から、女の子と交わした約束を時折思い出す。小さな頃に結んで約束でも忘れてはいけない、守り続けなきゃならない約束。眠る彼女の頭を俺はそっと撫でた。
ーーー
満開の桜が咲き誇る春。卒業式が開かれた。中学生最後の日。想い出に涙を流す者もいれば、幸せな笑みを浮かべる者もいる。俺はそのどれにも当てはまらない。ただ呆然と時間が過ぎるのを待った。やがて教室に担任が入って来て、少し涙声で最後のホームルームを始めた。一年生の頃は、卒業式で泣く上級生を見て俺も泣くのだろうかと思っていたものだが、案外そんなことはなかった。窓の外で風に煽られて散っていく桜を眺めていると、起立という言葉が聞こえた。つい反射的に立ち上がったが場の空気から何をするかは大方想像がついた。頭を深く下げて、先生に礼をする。あまり関わりがなかったから何の感情も抱かないけど、取り敢えずありがとう。そう心の中で言って俺は席に座って再び外を眺めた。
「おい、加藤」
いつの間にか友人が俺の傍にいた。
「なんだ?」
「わかってるだろ、早く行きな」
「....もうちょい覚悟したい」
「ガキの頃からの付き合いだろ?フラれる訳ねえって」
「....そういうもんなのか」
「ああ、もうみみっちい奴だな!さっさと行ってこい!」
無理矢理立ち上がらされて教室の外に放り出された。まあいいさ、もともとこいつは強引な奴だ。しかしそれも今日で最後だと考えると少し名残惜しく感じる。俺は礼を言って二つ隣の教室に向かった。扉を開けるとそこは自分のクラス以上に賑わっていた。その中にいる女の子の名前を呼ぶ。
「春香」
一人の女の子が振り返る。そして俺の顔を見ると微笑んだ。周りから冷やかされながら挨拶をして俺のとこに来た。彼女は琴原春香。俺の幼馴染で、俺の好きな人だ。
「もう、結構恥ずかしいんだからね」
「....ちょっと一緒に来てくれ」
そう言うと彼女は首を傾げたが俺の表情を見た途端、察したのか頷いた。学校を出てある場所へ向かう。そこに向かう途中に並木道がある。きっと今なら綺麗な桜が満開になっているはずだ。その道を彼女と一緒に歩きたい。そんなことを考えながら歩いているとその並木道が見えてきた。予想通り、満開の桜が咲いていた。花びらが雪のようにふわふわと降り注ぐ。
「綺麗だね」
言おうと思ったことを先に言われて何だか腑に落ちないが俺は頷いた。
「そうだな、綺麗だ」
「うん....」
互いにそれ以上の言葉は交わさず再び歩き出した。いつの間にか、彼女は俺の前を歩いている。場所は分かっているのだろう。場所はだいたい予想が並木道に風が通る。それがとても心地良くて、彼女の髪を柔く靡かせた。階段を登り丘の頂上に着くと綺麗な青空が広がっていた。眼下には街が広がっている。ここは俺と春香の思い出の場所。
「懐かしいね。昔ここでよく蓮くんに慰めてもらったね」
「そうだな」
「ここに来れば必ず良いことがあるんだよね。今回もあるのかな?」
俺の気持ちに気付いているのだろうか。少し疑問に思ったけど今は考えても仕方がない。想いを伝えるだけだ。
「春香」
彼女の前に立ち目を逸らさずじっと彼女と目を合わせる。顔が段々と熱くなっていく。らしくないな。でも、今はそんな羞恥心も関係ない。俺は深く息を吸って、短くて大事な言葉を発した。
「お前のことが好きだ」
彼女は案の定驚かず嬉しそうに笑った。
「私も蓮くんのこと、好きだよ」
俺も分かっていたことなので驚かなかったが、猛烈な安堵が全身を覆い被さった。深く息を吐いて心を落ち着かせる。だがしかしまあ、分かっていてもいざ言われると恥ずかしいな。照れ隠しに頭を掻いていると春香はクスクスと笑い出した。
「な、なんだよ....」
「なんか蓮くんらしくないなあって思って」
「悪いかよ....俺だって恥ずかしいことぐらいあんだよ」
「うん、嬉しい」
彼女は優しく微笑むと突然涙を流した。
「ずっと待ってたんだよ....ばか」
頬を伝う涙を指で拭い彼女の頭を撫でた。
「待たせてごめん。あの時の約束、これで守れそうだ」
そう言うと彼女は一瞬驚いた表情を見せたがすぐに笑顔になり俺に抱きついてきた。
「うん、約束したもんね」
少し躊躇ったけど、俺はそっと彼女を抱き返した。春香は少し小さくて何だか頼りなく感じたがとても心地の良い暖かさを感じた。彼女が離れようとすると俺は無理矢理抱き締めてそれを引き止めた。もう少しだけこの温もりを感じていたい。
「蓮くん....」
「ん?」
「大好き....」
「俺も大好きだ」
互いに見つめ合い恥ずかしそうに照れ笑いをした。もう絶対に離さない。春香は俺が幸せにする。そう強く決意し俺は彼女とそっとキスをした。夕方に告白したかったのだが仕方がない。夕陽を見ながら二人で綺麗だねとか、お前の方が綺麗だぜとか臭い台詞を言うつもりはないけど、ただ、彼女とここから夕陽を見たかった。まあ、それももう手遅れな話だ。俺は考えるのをやめて彼女の柔らかい唇に身を委ねた。
ーーー
雨が降る中、傘もささずに俺は走る。足が縺れて倒れそうになっても走り続けた。心は焦りに包まれ正常な思考ができない。だから、こんな大雨の中傘もささずに走っているのだ。病院に着くと春香の母、早苗さんが俺の元へ駆けつけた。
「早苗さん、春香は....!?」
暗い表情で彼女は俺にタオルを渡し案内してくれた。体を拭きながら彼女の後に着いて行く。病室に入ると、ベットの上で春香が眠っていた。包帯を巻いた痛々しい姿。見るだけでも辛い光景だ。
「命に別状はないって言ってたわ。でも、いつ目が覚めるかは分からないって....」
「そう....ですか」
それを聞いて安心した。それでも胸の苦しさは残ったままだ。
「春香に、一体何があったんですか....」
「....信号無視したトラックに跳ねられたらしいの」
その光景が容易に想像できて、これ以上ない怒りが込み上げてきた。でも、起きてしまったことをやり直すことなど出来ない。俺は舌打ちをして壁を強く殴った。八つ当たりなんて滅多にしないが、それくらい怒っているということだ。心を落ち着かせて春香の傍に座る。何度見ても痛々しい姿だ。俺はそっと彼女の頭を撫でた。心拍計の音が嫌に耳に響く。
「蓮くん、私先生に聞かなきゃいけないことがあるから」
早苗さんはそう言って病室を出て行った。俺はただじっと彼女が目覚めるのを待った。窓に伝う雫の影が彼女に映る。それをただ呆然と眺める。時計の秒針と心拍計の音しか聞こえてこない。一体どれだけ時間が過ぎたか分からない。気付けば外は暗くなっていた。彼女の手をそっと握る。俺の手より少し小さくて冷たい。ただそれを握っているとそっとその手に力が入った。
「....春香?」
彼女の顔を見つけて顔を見つめる。まだ目覚めていなかった。俺は溜め息をついて俯いた。あとどれくらい待てばいいのだろうか。彼女が目を覚ますまで、俺はずっとこの苦しい思いのまま待たなければいけないのか。そんなことを考えると気が滅入る。再び溜め息をつき顔を上げると、春香がゆっくりと目を覚ました。突然の事で一瞬分からなかったが、俺は即座に彼女の名前を呼んだ。
「春香....!」
虚ろな表情で俺を見つめる。俺は嬉しさのあまり彼女に抱きついてしまった。
「ぁ....いたい....」
「ご、ごめん」
すぐに彼女から離れて椅子に座り直す。そしてもう一度彼女の手を握った。
「春香、本当に良かった....」
これでやっと今迄の日々を過ごせる。彼女と手を繋いで歩き、互いに笑い幸福を感じる日々が。心の中は嬉しさと喜びの感情で満たされ俺は彼女に笑いかけた。
「お兄ちゃん....だれ?」
「....え」
一瞬聞き間違いかと思った。だが、そうでないということは分かっていたが、それを認めてしまうのは絶対駄目だとそう感じていた。
「何言ってんだよ春香。冗談はやめろよ」
「わたし....知らない。お兄ちゃんのこと知らないよ」
そんな訳がない。何年も一緒にいた俺の事を忘れる訳がない。俺は何度も彼女に問いかけたが、その度に彼女は首を傾げる。やがて俺の疑問は確信になり、その場で膝をついた。春香が目覚めて嬉しい筈なのに、それを打ち消す程の事実が無慈悲にも降りかかる。彼女は俺を忘れてしまった。無性に涙が流れて、堪えていた声も漏れてしまう。どうしてこんなことになってしまうんだ。ただ幸せに暮らしていただけなのに。あまりにも酷いじゃないか。俺は逃げるように病室を飛び出した。外はまだ雨が降っていた。その中を我武者羅に走って俺は泣き叫んだ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。何ヶ月か振りの後書きです。
リメイクは楽しいですね。原作と少し展開や描写が違うところとかありますが、それは意図しているものなので決して手抜きや間違いではないです、はい。
今までは全話を書き終わるまで投稿しないスタイルでしたがそれだと何だか楽しみがないと思いまして、書けたら投稿という不定期になってますが、まあそういうことで。
次回も楽しみにしてくださるととても嬉しいです。
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