謎
久し振りでございます。
大変遅れて申し訳ございません。
……
「ううっ」
思わず呻き声を上げてしまう。
いつの間にか寝ていたようで目を覚ますと知らない天井がそこにはあった。
「あ、やっと起きたね」
目の前には…確かアルという人の顔が目に映る。
そこで俺は寝る前に何をしていたか思い出した。
「あ、すいません呼有先輩。
俺、実験中に…」
「そのことに関してはいいよ。
君が例え寝ていると思っていても…それも実験のいい結果の一つさ」
俺の言葉を遮り呼有先輩はそう言うと俺の中での呼有先輩の印象が少し変わった。
未だに少し変わった趣味の先輩だと少し引けてしまうが根はとても優しそうだ。
「まぁ、一応実験だし参考までに夢でも見ていたら教えてくれないかな?」
呼有先輩はそう言うとメモを用意して俺に聞いてくる。
俺自身、訳の分からない夢でもあったので軽く話し始めた。
「いや、不思議な夢でしてね。
空が金色と灰色で作られてたんですよ。
そして、俺が立っていると黒い翼を持つ男が俺の前に現れて人探しをしてみたいだったなぁ。
まぁ、第3王子ってやつで見覚えもないし知らないと答えたら変なことを言って去っていったんですよ」
俺がそう言うと先輩達は真剣な顔で何か考えているようだった。
「えっと、どうかしたんですか?」
「いや、なんでもない。
それで人探しをしていた人は何を言っていたのかい?」
呼有先輩の質問に一瞬疑問に思うがおそらく実験の際に見た夢だから気になるのだろう。
「確か…や、闇の国?の第三王子、クロ…ダーク?と言う人が反逆を企てたとか…王が表の侵略をしようとしてるとかなんとか、だった気がする」
「なるほど、ありがとう。
お陰で助かった」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
俺はそう言うと呼有先輩は小さく「そうか、それならよかった」と言っていた。
一体何がよかった…いや、まさか。
まさか、俺は気が付けば狙われてるのか?
このホモっ気のある先輩に…。
「失礼な!
僕は修平君一筋だ!
そんな尻軽じゃないよ!」
あ、そうですか。
というか、ナチュラルに心を読まないでほしい。
本当、心臓に悪いから…。
「イヤ、ホントシリガルデアッテホシカッタナァ…アハハハハハ」
さ、佐々木の目が死んでるというか怖い。
人間ってあそこまで絶望できるものなんだな。
あれ、そういえば他の人達は…
「チェック」
「ちょっ、タンマってもう手遅れ!?」
あ、あの二人はチェスをしてる。
というか、本当にあの二人のチェスはどういう状況なのか気になる。
「ちょっと、お姉ちゃんそれはダメだよ」
「大丈夫、由美は周りに気を配って…」
何というかあそこで麗美さんが殺気を出して何かをしてるが気のせいだろう。
というか、あの二人って姉が暴走して妹が泣く泣く止めるような関係なのかな?
「体調には本当に影響ない?」
羅刹先輩が俺の横に気が付けば来ていてじっと俺を見てくる。
俺は思わず狼狽えるが羅刹先輩は本気で心配してるようで俺は何とか落ち着ける。
「今のところは大丈夫ですよ」
「そっか、ならよかった。
何かあったら言って、私はこう見ても治癒系が得意」
羅刹先輩は自信ありげにそう言って微笑む。
俺は思わずその姿に見惚れてしまう。
しかし、そんな時間も長くは続かなかった。
「あ、そういえば灰君は仮入部だったよね?」
「え、はいそうですけど…」
「ごめん、そういえば仮入部の下校時刻が過ぎてる」
俺はその言葉を聞いた時、時計を見る。
もう既に時計は5時を過ぎており、仮入部がいられる時間が過ぎていた。
俺はそのことに気がつくとすぐに鞄などを手に取る。
「今日はありがとうございました!」
俺はそう挨拶をして部室を出て行くのであった。
そうして、帰り歩いてる時に俺は考えていた。
ーあの部活でならひょっとしたら俺の体質についてわかるかもしれない
そんな期待とともに俺は寮へ戻るのだった。
**
灰が帰った後の部室ではこの部では珍しく全員が同じ机を囲んで座っていた。
チェスをやっていた二人も何かをしていた姉妹も途中でやめて座っていた。
「それでどう思う?」
「聞いた感じですとこれといった現実味のない場所ということでしょうか?」
アルの言葉に一番早く反応を示したのが綾愛だった。
それは灰の実験の結果について話していたのだ。
「そうだねぇ。
でも、あのクロ君が反逆者だとはね…」
「いや、でも理由があると思う」
アルはため息を吐きながらそう呟くが羅刹はキッパリとそう言う。
しかし、アルはそれを聞いても首を横に振る。
「そんなものは前提条件だよ。
でも、私達はそれ知るほど彼を知ってるわけではない」
アルは真剣な表情でそう言うと羅刹も分かったのか何も言わなかった。
それを見た佐々木がそっと手を挙げる。
「勝手に発言していいよ」
「ありがとうございます。
俺としてはそのことより表の侵略の方が危険に思えるんですが…」
アルに許可をもらった佐々木がそう言うと各々が納得したように頷く。
そこでより顔を沈めたのが麗美だった。
彼女は自慢の魔術で負けたのが悔しかったのだ。
「まぁ、何にしても一学生が決められることでもないのが厄介だよね」
アルがため息をついてそう呟くが誰一人として返事をするものはいなかった。
全員が全員、ことが嫌な方に進んでいる気がしてならなかったのだ。
「でも、何かをするなら佐々木君には灰君を絶対にこの部に入れてもらわないといけないんだよ。
そうでもしないと先なんてないし」
「そ、そうですね。
でも、俺たちに何か…」
「そこは任せて呼有君、この実験って時間を開けて数度にわたり行うんだよね?」
「あぁ、そうだね。
期間を空けて行うことによって結果が変わるケースもあるわけだし…」
アルはそれを聞いて頷く。
アルの中ではもう方針が決まったようで全員が静かにアルの話を聞いていた。
「それなら、明日も佐々木君は灰君を誘って。
明日すぐに行うから」
「わかりました!」
「理由を聞いても大丈夫?」
それを聞いていた羅刹はアルの意見に対して疑問を持ち、聞く。
それは、反逆者であるクロを呼び出す危険性を心配してのことだった。
「まぁ、たしかに私達に危害が加えられる可能性があるけど…。
もし、ここが表だとするのなら基本的に干渉は禁止なんじゃないかな?」
「でも、話によると…」
「そう、でも彼は私達に表だからと言っていた。
それでいて彼はあまり干渉を良しとしない。
要するに反逆の理由がそこのあるのか別にあるのかわからないけど下手なことはできないと思うんだ」
その言葉に全員が考える。
筋は通っているのだが、情報が少なくていまいち納得しきれていなかったのだ。
そんな時だった。
「おやおや、新しい干渉者を見つけたと思えばこんなにも若いとは…」
突如として窓からそんな声が聞こえたのだ。
全員が窓の方を向くとそこにはひとりの男がいた。
年はそんなに若くなく、薄い青みがかった髪にボロくてあまり日本では見られないような衣服を着ていた。
そして、この場にいた全員が何よりも目を引いたのが…
『犬耳⁉︎』
「いかにも私は犬人の情報屋でございます」
そして、男は綺麗な礼をするのだった。
少し悩みました。
結果はこんな感じですね。
さて、突如として現れた犬人の情報屋、それは一体何者なのか?
随分久し振りになってしまい申し訳ありませんでした。
面白いと思って頂けたならこれからも読んでくれると嬉しいです