一年
俺が無能者と分かって一年が経過した。
俺の身体は順調に成長しており、今では歩行も可能になっていた。
そろそろセレンにお披露目する頃合かもしれないな。
「レイオル様、今日も本を読んでさし上げますからね」
セレンが子供用の本を持って部屋に入ってきた。
よし、今こそ例の作戦を実行しよう。セレンの驚いた顔が目に浮かぶな。
「今日はどの本にしよかしら……」
「せれ……」
「――えっ?」
セレンの手から本が落ちる。
「レイオル様、今、何と……?」
「せれんー」
「ああ……レイオル様……!」
感極まって泣き出すセレン!
しかし、まだ終わらないぞ! 俺は足に力を込めて立ち上がった。
「レイオル様……! まさか、もう……!」
俺は涙を拭っているセレンに向かってゆっくりと歩く。
その光景にセレンは目を見開き、両手で口を覆う。
いきなりスタスタと歩いたら不自然なので、よろける演技を入れつつ、俺はセレンの元に前進する。
たった数歩程度だが、無事にセレンの元に辿り着くと、セレンが俺を強く抱きしめる。
「素晴らしいですレイオル様! 貴方は私の誇りです!」
狂喜乱舞するセレンに抱きしめられて少し痛いな。ちょっとやり過ぎたかな?
その日の夕食、セレンは上機嫌にワインを飲んで酔っ払った。ワインの飲みすぎで机に突っ伏て眠ってしまうセレン。
俺が赤ん坊じゃなきゃ、毛布でも掛けてあげたのだが、それも出来ない。
「レイオル様……私が……貴方を守りますから……」
安らかな笑みを浮かべて寝言を呟くセレンだった。




