キャバ嬢
三ツ矢はナナコに抹茶で金を稼ぐ提案を持ちかけた。
「うーん…… まあ、普通には売れないでしょ」
ナナコが言うには、そこまで大金を払わなくとも、市場に抹茶の在庫は余ってるだろうから、買わないんじゃない? とのことだ。
「でも、お前が売るとなると、客は断れないんじゃないか?」
理由は、狙っている相手の機嫌をそこねるわけにはいかないのと、買わなければ買った客にナナコを取られてしまうのでは? という心理からだ。
「まあね。 この人は買ってくれそうって目星はついてるけどね~」
「じゃあ頼むよ!」
「50パーセントかな」
何っ、と思わず三ツ矢は声をあげた。
「半分だって!?」
「そりゃそうでしょ! 私がいなきゃお金稼げないんだから」
確かにそうだが…… と三ツ矢は口ごもる。
売り上げの半分をナナコに渡すとなると、100グラムを10万で売らなければならない。
「あ、それと、いくら稼げるかは保障しないからね? 相手によって値段変えるから」
しかし、ナナコに任せる以外に手はなく、三ツ矢は仕方なくその提案に乗った。
それから2週間が経過した。
ヨモギはコンビニでバイト、三ツ矢も引っ越しなどのバイトをして稼いでいたが、中々金は貯まらない。
昼間、三ツ矢の休憩中、携帯が鳴った。
「あっ、ナナちゃん?」
「在庫の抹茶全部売ったよ~。 500万稼げたから、250万は約束通り貰うね」
500万、元々それだけ稼ぐ予定だったとは言え、三ツ矢は驚いた。
「そんなにすごいかなぁ? 半年働いたら稼げるでしょ?」
ということは、ナナコは月々100万近く稼いでいることになる。
時給1000円の現状、三ツ矢とはまるで住む世界が違った。
しかし、ナナコのことはとっくに諦めてる、と気を取り直し、250万を受け取る約束をした。
後日、店のテーブルに250万とバイトで稼いだ1064円が置かれた。
「250万はすごいわよ、でも…… たったこれだけ?」
「悪い…… 飲みに行った。 って、そうそうお前こそ、何で1円も出さねぇんだよ?」
「私は私のために稼いでるんだもん」
残り250万が果てしなく遠い。
そんな時、松野が現れた。
「あっ、じいちゃん」
「ヨモギ、良く聞きなさい。 三ツ矢君も。 この店を売ったお金で、ニューヨークに行きなさい」
突然、松野はそう切り出した。