取引
ヤフー知恵袋から得られた回答は2つあった。
どちらも待ち合わせを指示するものであり、片方は新宿駅、片方は池袋駅を指定してきた。
しかも日時、時刻まで一緒だ。
三ツ矢は、どちらかが警察の罠か? と勘ぐった。
「だが、時間を揃えてきた理由が分からないな。 俺なら前の回答より早い時間に待ち合わせを指定する」
捕まえるにせよ、取引するにせよ、先にしてしまったもの勝ちだ。
その時、横からヨモギが口を挟んできた。
「単なるイタズラじゃない?」
「俺もそう思いかけてた。 遊び半分で前の回答に乗っかっただけじゃねぇかなって」
そうなると、後者がイタズラで、前者が大使館の人間の可能性が高い。
「一応、俺とお前で手分けして両方の駅に行くか」
「えっ、もし片方が警察だったらどうする気?」
「……見破る手はある。 耳にイヤホンを差してたら警察だ」
ヨモギが納得しかねるという表情で見てくる。
「俺を信じろって! 警察だったら仲間と連絡とるのにイヤホンいるだろ!?」
「……捕まったら一生恨むからね」
交渉当日。
俺は池袋の駅に向かい、ヨモギは新宿の駅に向かった。
「さて、どっちに現れるかな?」
一応、大使館の人間が来る可能性が高いと踏んだ前者の方にヨモギを向かわせた。
こちらには誰も来ないか、警察が来ると思われる。
「ちょうど時間だ」
待ち合わせの12時を回ったと同時に、ラインの着信が入った。
ヨモギからである。
スーツを着たサラリーマン風の男が名刺を自分の目の前に落とし、拾い上げると裏に電話番号が書かれていたとのことだ。
即座に三ツ矢はその場を離れ、ヨモギと合流するため新宿に向かった。
「これよ」
ヨモギが渡してきた名刺の裏には電話番号が記されていた。
そこにかけると、男が出た。
「知恵袋の質問者だな? 永住権の偽造に必要な金は500万だ。 用意でき次第、もう一度かけてこい」
こちらが一言も発することなく携帯は切れた。
「どうだった?」
「……永住権を作るのに500万かかるらしい」
「はぁーっ!?」