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条件と方法

 三ツ矢が見ているのは、世界で活躍する日本人、という番組である。


「ラーメンや寿司だって流行ったんだ、いけるって!」


「口で言うのは簡単だと思うけど、実際どうやって店を出すのよ?」


 ヨモギの質問はもっともである。

男は夢を語るが、女は常に冷静なのだ。


「ニューヨークに店を出すなら永住権みたいなのがいるんじゃない? よく知らないけど」


「……」


「あと、英語しゃべれんの? 商売するならカタコトじゃ絶対ダメでしょ。 まさか出○みたいにボディランゲージと中途半端な英語だけで乗り切れると思った?」


 じゃあどうすりゃいいんだよ! と三ツ矢は叫びたくなったが、ニューヨークで店を出すと言い出したのは自分であり、言葉を押しとどめるしかなかった。


「ぐ…… 確かに永住権も語学も俺にはないな……」


 しかし、今の指摘で必要なものが見えてきた。


「まず、永住権ってのから調べてみるか」






 三ツ矢がネットで調べた結果、永住権を得るには、向こう側にとっても利益になることがなければならないということが分かる。

例えば優秀な科学者や職人などは永住権を得ることができる。


「あんみつ職人ってのはどうなんだ?」

 

 寿司職人ならば認知されている。

しかし、あんみつ職人というのは認められるのか?

白玉やあんこを作る技術は向こうでは珍しい、が、それらで商売が成立しなければ意味が無い。


「永住権を取らせてでも、やらせてみたいって向こうに思わせないとダメだな」


 当たるか分からない商売ではなく、当たる可能性の高い商売でなければならない。


「実績のある人間のお墨付きがあれば、説得力があるな。 あとは、商売のプロのバックアップがあるとか……」


 そこであることを閃いた。


「……いけるかも知れねぇぞ!」


 三ツ矢はすぐにみつ豆に関する資料の作成に取りかかった。




 後日、三ツ矢はスーツに身を包み、以前自分の勤めていた飲料メーカー本社の前にいた。


「商売のプロっていや、会社だ」


 しかも、三ツ矢の勤めていた伊東園は日本でも有数の飲料メーカーである。

今回、伊東園に持ちかけた提案。

それは、あんみつと抹茶をニューヨークに定着させ、伊東園のお茶が売れる基盤を作ろう、というものだ。

日本でお茶の販売に制約がかかってしまった企業側も、その提案に乗ってきたのだった。


「うまく行けば永住権だけじゃなくて、必要な資金や場所も用意してくれるかも知れない」


 そのためには今日、相手の納得するプレゼンをしなければならない。

三ツ矢は気合いを入れ、話を聞いてくれるという昔の同僚に電話した。


「よう、今会社の前にいるんだけど」


「あ、三ツ矢…… わりぃ、お前と同じ話を持ちかけてきた相手がいてさ…… 今日の話、無かったことにしてくれないか?」


「待てよ! 先にアポを取り付けたのは俺じゃねーか!」 


「相手がかなりの老舗なんだよ、悪いな」


 まさかの裏切りに三ツ矢は携帯を地面に投げつけた。


「ふざけんじゃねぇっ!」


 企業のサポートを得るプランは水の泡と化した。



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