パブロフの犬作戦 4
待つこと2時間、ようやく空調設備の作業員らしき人物がやって来た。
「ついてねーな。 日曜に空調が効かなくなるとか」
「コンプレッサーの異常とは思えないけどな。 まあ、念のためだ」
作業員2人が機械室の中に入る。
それに乗じて三ツ矢も中に入ると、ダクトを探した。
「この縦のダクトから各階に枝分かれしてるわけか」
ダクトを発見し、更にダクトの付け根に巨大なダンパーがついてるのを確認。
点検口の横の蝶ネジを外して、香水入りの箱を取り出すと、ダクトの内側に両面テープで貼り付けた。
すでにタイマーはセットされており、香水の蓋も開いてるため、時間が来ればダクトを伝ってオフィス内に匂いが充満するはずだ。
「よし、外れねぇな」
手で固定されているのを確認すると、すぐに機械室から離れた。
次の日、三ツ矢は何食わぬ顔でオフィスビルの外で邪魔にならないよう、お茶とあんみつを準備していた。
ちなみに、以前注意されたエリアとは別なエリアのため、警察に見つかってすぐ注意されることはないハズである。
「まあ、初日はうまくいかないかもしれねぇけどな」
何日も繰り返せば、オフィスで嗅いだことのある匂いに反応して、興味本位でお茶を買っていく。
あんみつもセットのため、匂いを嗅いだらあんみつが食べたくなる、という構図が完成する。
効果はすぐに現れた。
昼時、あんみつを買っていく者がやって来たのだ。
「この香り、どこかで嗅いだことあるんだよなぁ…… お兄さん、一個頂戴」
「5ドルになります」
その日、あんみつセットは200個には到底届かないものの、10個を売上げた。
次の日、その次の日と、売れる数は増えていった。
「なんかこれが食べたくなるんだよなぁ」
一度買った人間は、必ず次の日も買いに来た。
そして1週間後、とうとう目標の200個を完売した。
「よっしゃあああっ!」
これでようやくジミーのマンションの世話にならなくて済む、そう思った矢先であった。
眼前に目を疑う光景が広がった。
オフィスビルの丁度向かいにある空きテナントの改修が完了し、看板が掲げられたのだが、その看板にはこう書かれていたのだ。
「グリーンティ・ショップだと……」




