パブロフの犬作戦 2
廃ビルで知りたい情報は手に入れた。
「次はどのビルでそれをやるか、か」
しかし、それなりに大きいオフィスビルとなるとセキュリティも厳重である。
機械室に入るためのカギ、そこにアクセスするためのカードキーも必要である。
「業者を装うか? でもアポを取ってないとどこの業者か聞かれる恐れがあるな……」
検討した結果、そのビルに勤めている人間の協力を得るのが一番良いという結論に達した。
三ツ矢は夜中、ジミーと相談するため、部屋をノックした。
「ジミー、ちょっといいか?」
ジミーを連れ出し、外で話をする。
「……正気かい!? それって犯罪なんじゃないの?」
「……別に毒ガスを流す訳じゃねぇ」
「でも! もし僕のカードキーを渡したことがバレたらクビじゃ済まなくなる。 最悪刑務所行きだよ……」
ジミーを巻き込むことになってしまう。
そのことに抵抗はあった。
しかし……
「俺はこのまま終われないんだ。 ニューヨークで有名になって、いつかクリスティーヌに俺のあんみつを食べて貰いたいんだ」
「なんだよそれ……」
さすがのジミーもあきれ顔だったが、三ツ矢は諦めず食い下がった。
「……考えさせてくれないか」
一日考えた結果、ジミーはカードキーを貸してもいい、と言ってきた。
「そのかわり、絶対にばれないようにしてくれ」
「分かった、恩に着るぜ」
これでカードキーを得ることはできる。
後は機械室のカギだ。
「空調屋が入ってるタイミングで入れたらベストだけど、そんなの分からないよな……」
ピッキングの技術など無いし、ジミーの件があるため、絶対に捕まるわけにはいかない。
「……荒技を使うしかないな」
三ツ矢の考えた荒技。
それは、機械室に繋がっているダクトを無理矢理塞いで、空調の機械に異常の信号を出させる、というものだった。
「機械に異常が出れば、様子を見るために機械室を開けるはずだ」
そのためにはダクトの空調が回ってる状態で部屋を区画するためのダンパーを手動起動させればいい。
「天井にアクセスするための脚立は外から持ち出せばいいな。 決行当日は今週の日曜だ」