ブロードウェイ
三ツ矢は道具をまとめ、公園の広場に寝転がっていた。
「ニューヨークは甘くなかったか……」
1ラウンドKO負けをした時のような、これなら諦めがつく、そんな心境だった。
夕方になり、借りた道具を返すためジミーに連絡を入れた。
「……仕事を片付けてすぐに向かうよ」
夕方の8時頃、ジミーがやって来た。
三ツ矢のやつれた顔を見て、今日は家に泊まればいいと話をした。
ジミーのマンションに到着。
マリアも状況を察したのか、文句を言うことはなかった。
リビングのソファで横になっていると、ジミーがあるものを持ってきた。
「マリアに頼んで作ってもらったんだ。 オチャの香水だよ」
小さいボトルの中に、半透明の液体が入っていて、蓋を開けるとお茶の香りが立ちこめた。
「マジでこの香りが気に入ったんだな。 てか、マリアのやつも中々器用じゃねぇか」
「マリアは香水を扱うショップに勤めてるからね。 それで、ミツヤに提案があるんだけど…… せっかくニューヨークに来たんだから明日ブロードウェイに行かないかい?」
ブロードウェイ、それはニューヨークにある劇場のメッカである。
「ミュージカルとか、オペラとかか?」
「そうそう! オペラ座の怪人を一緒に見に行こうよ。 チケットはまあまあ高いんだけどね」
「オペラ座の怪人か。 かわいい子は出るか?」
「もちろん!」
じゃあ行く! と三ツ矢は答えた。
内心、かなり滅入っていたが、いつまでも人前でそんな姿はさらせなかった。
翌日は日曜日で仕事は休み。
ジミー、マリア、三ツ矢の3人はブロードウェイ付近の駐車場に車を止めて、劇場に向かっていた。
通りには日本でもよく見かけるタイトルの看板が大々的に掲げられている。
「あそこだよ!」
劇場のチケット売り場で大人3枚を購入。
その内の一枚をジミーから受け取り、中に入る。
「座席はE列の12番か」
劇はもう後5分で始まる。
急いで着席して待っていると、照明が落ちて幕が上がった。
オペラ座の怪人のストーリーはこうである。
とある劇団に務めるクリスティーヌと呼ばれる女性がいた。
彼女に恋をしたオペラ座の地下に潜む怪人は、自身の特技である天使の歌声を使って、彼女を一躍スターに仕立て上げる。
しかし、クリスティーヌは別な男に恋をしていた。
怪人はそれに腹を立て、クリスティーヌを地下に幽閉し、無理矢理に結婚を迫ろうとする。
怪人の素顔を見たクリスティーヌは、怪人の悲しい生い立ちに同情し、怪人と口づけを交わす。
その思いやりの気持ちに胸をうたれ、最後は彼女を地下から釈放したのだった。
劇は無事に終わったが、三ツ矢にある異変が起きていた。
「クリスティーヌ……」
三ツ矢はクリスティーヌ役の女性に恋をしていた。




