47話
マリアナはリナリアとしばらく話していた。
シグルが「もうそろそろ戻ろうか」と言ってきたのでリナリアに退出の旨を伝える。
「……あの。リナリア様。申し訳ありませんが。私達は戻らなくてはならないので。失礼致します」
「いえ。お気になさらずとも良いですよ。ではご機嫌よう」
「ありがとうございます。それでは」
丁寧に挨拶を述べてリナリアとは別れた。シグルがマリアナの手を取って歩き出す。そのまま、王宮に戻ったのだった。
「……マリアナ。今日はお疲れ様。もう夕食を済ませてゆっくり休んだらいいよ」
「はい。シグル様もお疲れ様です。私は大丈夫ですから休憩をお取りになってください」
「わかった。じゃあ、また明日だね」
マリアナが頷くとシグルは彼女の頭を撫でた。そうして王宮の自室に戻って行った。マリアナはそれを見送り奥の宮に戻る。
すぐに柱の陰からカリンとフィル、ジェシカが出て来て付き従う。
「マリアナ様。今日は無事に終わったようですね。良かったです」
「……でもちょっと。変な方に会ったわ」
「変な方ですか?」
「その。カリンはルーデンス様って知っているかしら」
「……えっ。ルーデンス様と言ったら確か男色家で有名な方ですよね。かのシンフォード公爵家の」
カリンが言うとマリアナはやっぱり知っていたかとため息をつく。
「今日、そのルーデンス様と出くわして。とりあえずは挨拶をしたのだけれど。まずまずだなとか言われて。驚いてしまったわ」
「へえ。お嬢様にまずまずですか。いい度胸してますね」
「……カリン?」
「いえ。何でもありません。ちょっと面白い方だなと思って」
「そう。でもシグル様が好みだと公言して憚らないそうでね。私が婚約者だと知ると敵意を剥き出しにされたわ。どうしたものやら」
はあとカリンは言った。マリアナはどこか疲れたような表情になる。よほど、ルーデンスの相手に気を使ったようだ。
「……マリアナ様。もう奥の宮に戻りましょう。お疲れのようですから」
「そうね。シグル様にも言われたわ」
マリアナは頷くと歩く足を速めた。カリンやフィル、ジェシカも続いた。
奥の宮に着くと衛兵が扉を開けてどうぞと言う。カリンが礼を言って中に入る。急いでマリアナ用の部屋に向かった。
ドアを開けてマリアナが先に入りカリンやフィル達が続く。閉めてからカリンはマリアナに鏡台の椅子に座るように促した。髪留めやアクセサリー類を外してからお化粧を落とした。軽くお化粧水や乳液などを塗り込んでから再び立つように言った。
ドレスを脱がせてコルセットも外す。そうした上でジェシカが選んだ薄い若草色の足首丈のワンピースを着せる。
着替えなどが終わるとマリアナに急いでハーブティーを淹れた。リラックスしてほうと息をつく主人を見てカリンはやっと胸を撫で下ろしたのだった。