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31話

マリアナはエルリックやカリンと地下牢獄の入り口から出た後、無言で歩き続けていた。カリンはマリアナを見てため息をそっとつく。毒薬を彼女に渡しはしたが。

さてどうしたものやらと密かに頭を抱えてしまう。エルリックが信用できないわけではない。が、彼の目的が今一つわからないのが難点だった。尋ねてみたいところだが脱獄した身ではそれもできなかった。今はマリアナを連れて逃げる方が先だ。そう思いながらカリンもエルリックの後を追った。



「とりあえず、公都の東側まで来たな。後少しで離宮に着く」

エルリックが淡々と告げる。マリアナはほうと胸を撫で下ろした。エルリックがすたすたと歩く中でカリンは黙ってついていく。マリアナは妙に静かな彼女に違和感を抱いた。

(どうして、カリンはさっきから喋らないのかしら。何かあったのかな?)

そう思いはするが口には出さないでおいた。しばらく歩く内に鬱蒼と茂っていた森から開けた場所に出る。エルリックはそこで立ち止まった。

「ここが公都の東側、シャルドネ離宮の敷地内だ。先代の大公陛下と公妃殿下のお住まいでもある。行くぞ」

「あっ。待ってください」

エルリックはさっさと行こうとするのをマリアナとカリンは追いかけた。

三人でまた無言の中で歩き続けると白を基調としたこじんまりと佇む大理石で造られた宮殿が見えてきた。王宮よりは造りは小さいが優美さを持つ美しい建物だった。柱や梁といえる部分には繊細な彫刻が施してありほうと見とれてしまう。エルリックは何も言わずに宮殿に向かった。

すると、宮殿の入り口付近にある扉が開かれた。ゆっくりと中から出てきたのは髪に白いものが混じった一人の老女だった。が、白金といえる髪と翡翠色の瞳、すらりとした長身の姿から誰なのかはマリアナとカリンにもわかる。

二人はすぐに頭を下げて膝を落として着ているドレスやワンピースのスカートの裾を摘まんだ。エルリックも胸に手を当てて跪き、騎士の礼を取った。老女は穏やかに笑いながらエルリックやマリアナに声をかける。

「あらあら。皆さん、丁寧だわね。けどわたしはもう隠居した身よ。堅苦しい挨拶はなくてもかまわないわ」

「失礼しました。殿下、こちらは皇太子殿下の婚約者のマリアナ嬢です。地下牢獄からお連れしました」

「ああ。それはアンさんやリナリアから聞いたわ。エルリック、ご苦労様」

公妃殿下ことレイシェルはエルリックに労いの言葉をかけた。そして、マリアナやカリンに視線を向けるとにっこりと笑いかける。

「あなたがマリアナさんね?」

「はい。そうですけど」

「ふふ。やっぱり、綺麗な瞳と髪の色ね。公都では黒紫の公子と白銀の姫といったら有名よ。それより、早く中へどうぞ」

レイシェルに促されてエルリックに続いて離宮の中に入ったのだった。

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