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29話

カリンはマリアナに毒の入った小瓶を手渡してからこう言った。

「お嬢様。これはわたしの部下が入手した毒薬です。シグル様に使われた物と同じです。父と協力してシェイド様の配下と密かに手を組んだ上で手に入れる事ができました」

その言葉にマリアナは固まる。シェイド殿下の部下からだと言わなかったか?

「あの、お嬢様?」

カリンの呼びかけにマリアナはやっと我に返った。急いで答える。

「あ、ええ。ごめんなさい。カリン、毒薬は受け取ったけど。これをどうしろというの?」

「…これをシグル様と大公陛下に見せていただきたいんです。わたしの主であるラインフェルデン公爵もそれをお望みです」

「そう。父様も大公陛下やシグル様に見せる事を望んでいるわけね」

マリアナが尋ねるとカリンは穴から腕を抜き取ったらしい。毒薬をドレスにあるポケットにしまうように言ってくる。急いでマリアナは毒薬の入った小瓶をポケットに入れた。

その時、カツンカツンと石床を踏みしめる足音が辺りに響いた。カリンがいち早く気づいてマリアナに知らせてくる。

「お嬢様。どなたかが来たようです」

「そうみたいね。けど、どうしてカリンが疑われてしまったの。最後にそれを聞かせて」

カリンに問いかけみたが。彼女は少しの間、黙り込んでしまう。がすぐに答えてくれた。

「お嬢様。普段であれば、こんなヘマはしないのですけど。シェイド様付きの者に嵌められたんです。毒薬を見つけた時に部下がその者に捕まってしまって。わたしと父が助けに向かったんです。部下を助け出す事には成功しましたが。その者と戦い、父が苦戦しながらも部下とわたしを逃げさせてくれました」

「父君はどうなったの?」

「…父は大怪我を負いながらもその場を何とか逃げ延びました。わたしと部下が助けを呼んだから事なきを得ましたが。本来であれば、部下が捕まっていたところでしたが。わたしが疑われるように仕向けました」

カリンはそう言うと穴から手を突っ込んでマリアナに同じようにするように言った。手だけを穴に入れるとカリンがそっと指を握りこんできた。

「カリン…」

「わたしが疑われるようにするのは簡単でしたよ。まず、シグル様の宮をうろついたり同僚の侍女に毒を盛ったのは皇太子の婚約者付きの侍女らしいと噂を流したり。シェイド様の配下の者に毒薬を渡したのはわたしだと告げてみたり。嵌められたのを逆に利用してやりましたよ」

「とすると。私まで疑われたのって…」

「すいません。わたしのせいです」

カリンがぺろっと謝ってくる。マリアナはあまりの軽さに脱力してしまう。

ふと、カツンカツンと鳴る足音がやんだ。マリアナの牢獄の前辺りだ。牢獄の鉄柵の前でゆらりと蝋燭らしき灯りが揺らめく。

「マリアナ・ラインフェルデン殿だな。迎えに来た」

蝋燭の灯りはぴたりと揺らめくのを止めると同時に低い声が地下に響いたのだった。

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