表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/50

28話

マリアナは牢獄に入れられたが。隣から聞き覚えのある声がして手枷と足枷で動きにくい中でそれでも必死で石床を這いずった。

「…お嬢様!」

よく反響する地下牢獄の中だがすぐ近くまで行くと誰の声か辛うじてわかった。

「カリンなの?」

「そうです。お嬢様まで地下牢獄に連れてこられたんですね」

「そうみたいね。シェイド殿下がいらしてシグル様の事でどうとかおっしゃって。私に暗殺未遂の容疑がかかっているとは聞かされたけど」

マリアナが言うとカリンは黙りこんだ。小さく舌打ちする音が聞こえる。彼女のいる場所は存外に近いらしい。

「…シェイド殿下が。でしたら、わたしの知っている事をマリアナ様にお教えしましょう。シグル様は国内の貴族のシンフォード公爵家やラインフェルデン公爵家と敵対している派閥から命を狙われています。シェイド様は確かにシンフォード公爵家の出身であるメアリアン公妃のお子様ですが。文武両道で聡明なシグル様と幼い時から比べられてお育ちになられたとか。シェイド様は頭は良くていらっしゃるのですが武術や体を動かす事が苦手でおられる。それが悔しくて仕方なかったのでしょうね」

カリンは一旦言葉を切ると息を吸う。マリアナは黙って続きを促した。

「そんなシェイド様にある時に近づく者がいました。それがスノーヴァ侯爵です。彼はシェイド様に甘い言葉で近づき、徐々に兄君と敵対するように仕向けていきました。シェイド様はスノーヴァ侯爵の娘と婚約なさってから余計に遊び呆けて公子としての執務や公務などをおろそかにするようになります。侯爵や配下の者はシェイド様と結託してシグル様に毒を盛りました。それが今回の事件です」

そこまでの話を聞いてマリアナはカリンが何故シェイド殿下の事を詳しく知っているのかを疑問に思った。カリンもマリアナが聞きたそうにしているのが顔が見えなくてもわかったのだろう。すぐ答える。

「わたしは元々ラインフェルデン公爵家に仕えてはいますが。マリアナ様の侍女の他に諜報活動も仕事としてやっていました。これでも影と呼ばれる部下が何人かいます。その者たちや王宮に仕える侍女たちから得た情報ですね」

「なるほど。だからカリンは詳しかったのね。私もシェイド様は国内の貴族たちと繋がっていると思っていたの」

「その通りです。マリアナ様、この後でシンフォード公爵家の方がこちらにいらっしゃるはずです。お名前は明かせませんが現当主の縁の方ですから信用できますよ」

わかったと頷くとカリンは壁にあるらしい穴がないか言ってくる。マリアナは手枷が填められた両手で必死に穴を探した。するとわかりやすいようにカリンのものらしき手と腕が少し出てくる。

「お嬢様。ここになります。手だけでも入れてください」

マリアナはカリンに言われた通りに手を穴に入れた。

そして、カリンはマリアナの手のひらの上にある物を乗せた。不思議に思うとそれは布の包みだった。

穴から手を抜くと布の包みを広げてみた。中から現れたのは硝子で作られた小瓶だった。小瓶の中には少し青みがかった液体が揺れている。マリアナはそれを見てシグルが飲まされた毒だと気づいたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ